集英社新書

悩む力

姜尚中
『悩む力』
集英社
2008年5月11日
DSC05384 売れてるらしいし、面白そうなので読んでみました。かなり共感するところが多かったです。科学的な合理化は、人間の行為の持っていた大切な意味をどんどん奪っていくというのは、確かにそうとも言えます。あと、知ってる、知らないで頭の良し悪しを決めるのも、違う気がしますね。つまりは、「物知り」「情報通」と「知性」は違うし、「know」と「think」も「information」と「intelligence」も違います。学識、教養も大事ですが、協調性や道徳観も含めた総合的なものが知性と呼べるものでしょう。余計なことを考えている暇があったらスキルを身につけ、専門知識を身につけ、なんて言ってると、何か足りない人になりそうです。人間の知性は、「真」「善」「美」にかかわっているというのは、簿記学会のときの井尻先生の講演みたいでした。

資本主義崩壊の首謀者たち

広瀬隆
『資本主義崩壊の首謀者たち』
集英社
2099年4月22日
20090717 金融資本主義の実体を垣間見れる内容です。読めば読むほど憤ってしまいます。少し穿った見方という気もしますが、それなりに真実に近い内容だと思います。いたるところで紹介されている風刺漫画は、よくできています。封建的な不平等や闘争、または植民地主義などは、教科書のなかでの話で、現代において起こらないと考えがちですが、経済的支配、知的支配といった形で再現されているんだと思います。日々のジャーナリズムに流され、冷静かつ的確な判断ができない日本人の平和ボケも極まっているなぁとつくづく感じました。愚行が繰り返され、庶民が疲弊していく構造をどこかで断ち切らなければなりません。

偶然のチカラ

植島啓司
『偶然のチカラ』
集英社
2007年10月22日
20090714 偶然とか運とか物事の因果関係っていうのは、小さい頃から、悪いことをすれば自分の身に返ってくるし、逆も然りだと思っていましたし、歳をとるにつれて、経験則でもって、そういうもんだなって思います。本書では、いい流れには黙って従うべきで、何か流れを変えようとしたり、自分で選択したりしないよう心掛けるべきだとアドバイスされています。確かに、自分で選択するときっていうのは、何かとぐるぐる考えて、素直な答えとはちょっと曲がった選択をしてしまうのが常で、そのズレでおかしくなってしまうことが多い気がします。言い得て妙です。あと、南方熊楠の話は、なかなか含蓄がありました。そして、我らがルカ・パチオリが文中で出てきたのには、ちょっと驚きました。

化粧する脳

茂木健一郎、恩蔵絢子
『化粧する脳』
集英社
2009年3月22日
20090610 最近、電車で寝ているせいか読書量が減っています。ということで、サクっと読めそうな新書を買ってみました。私たちの意識を科学的に解明する脳科学は、やっぱおもしろいですね。改めて脳の処理能力の凄さに気付かされます。本書のキーワードは、自意識を象徴的にあらわしている“鏡”。平均顔(=美男美女)は、極めて感情がわかりやすく表現されるから、俳優には美男美女が多いというのには、なるほどなぁと思いました。俳優さんは、やはり感情表現がうまくできる人が、それぞれの個性で配役されていると考えると、さらに納得です。論文を寄稿している恩蔵さんは、ボクとタメなようです。頑張っている同年代の科学者さんを見ると勇気が沸くとともに正直焦りも感じます。

上司は思いつきでものを言う

橋本治
『上司は思いつきでものを言う』
集英社
2004年4月21日
4.14 電車には乗ってますが、ペースが落ちてます。さて、いかにもサラリーマン向けの本です。内容はイマイチ説得力不足といった感じです。確かになくはないんでしょうけど、こんな感じの会社だったらすでに潰れてそうです。今の世の中。しかも、社会人経験のない作家さんだそうですし。上に立つ人によって会社の将来は大きく左右されることは確かですね。人に物申すときは、プロセスが問題です。どう伝えるかがその成否を握っています。

メディア・コントロール

ノーム・チョムスキー/鈴木主税訳
『メディア・コントロール』
集英社
2003年4月22日
2.17 チョムスキーの本もいくらか読んできましたが、なかなか宜しいです。でも、本職である言語学の本は読んだことないですけど。かなり批判的に書かれてあるので、全てを鵜呑みにするわけにはいかないですけど、かなり真意を突いています。普段からメディアを無批判に受け入れがちな多くの日本人には、是非読んでもらいたいと思います。ものごとはまず疑ってみることです(世知辛いなぁ)。騙されないためには。客観性を出すために火星人のジャーナリストを登場させたのはいい方法でした。

文明の衝突と21世紀の日本

サミュエル・ハンチントン/鈴木主税訳
『文明の衝突と21世紀の日本』
集英社
2000年1月23日
2.14 『文明の衝突』は、読んでないですが新書コーナーで目に留まったので買いました。思いのほか面白かったです。ここでは文明と呼ばれますが、文化の違いというのはどこまでも深いものがあると思います。いろいろな観点から国際関係を見ることが出来ると思いますが、やはり文化を抜きには語れませんよね。アメリカと中国という大国の間で今後日本はどのような関係を築き上げ、世界はどうなっていくのか見物です。あと、日本が独自の文明として捉えられていることに今更ながら驚きました。

貧困の克服

アマルティア・セン/大石りら訳
『貧困の克服』
集英社
2002年1月22日
2.9 集英社新書には、結構いい訳本があるようです。3冊ほど買ってみました。さて、センはスティグリッツとともに私が好んで読む経済学者です。貧困や不平等といったものを対象に哲学や倫理、人権等を組み合わせた幅広くも一貫性のある研究は素晴らしいの一言です。スティグリッツと同様に世の中で何が間違っているのかをわかりやすく論理的に指摘してあると思います。日本では、インドに対する見識は一般的には低いと思いますが、歴史も思想も中国に匹敵するスゴイ国です。それを知るにもいい本かもしれません。
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