ちくま新書

仕事人生のリセットボタン

為末大、中原淳
『仕事人生のリセットボタン 転機のレッスン』
筑摩書房
2017年7月28日
20240101 飛行機で読みました。25歳以降は、リセットボタンを押しながら過ごしているので、興味を持ってポチりました。為末さんは一つ上の同世代で、陸上で100,200mから400m、そして400mHに競技種目を変えていったという共通点があります。読んでみて考え方にも共通点が多いと感じました。そこそこの幸せで安定ならOKとは思わないタイプで、とにかく飽きてしまう。過去を売る(自分の成功をもとに何かを提供する)のは、時間がもったいないと思うし、せっかくやるなら、自分の経験になること、新しいことをやりたいと思ってしまいます。そして、1番の強みは、失うものがないということ(そう思っているところ)。ゼロから出発するのが、ワクワクするんですよね。ただ、人への指導となると、自由と裁量を与えることが最良だと信じているところがあって、そこの合う合わないがかなり難しいなと悩んでるし、徒弟制が向いてないとつくづく思います。贅沢な話、自分で問題設定して、自分で回答するといった、自分で動いていく人間をサポートするのが向いていると思いました。自分の話ばかりになってしまいましたが、中原先生のピボットターンの例えはいいなと思いました。

会計と経営の七〇〇年史

田中靖浩
『会計と経営の七〇〇年史――五つの発明による興奮と狂乱』
筑摩書房
2022年4月15日
20220501 会計の世界史は500年史でしたが、+200年されている最新刊です。イタリアの記録大好き文化から発展した複式簿記、カトリックから独立を果たしたプロテスタント国オランダで生まれた株式会社と証券取引所、情報公開やパブリックの意識が芽生えたフランス、イギリスでの蒸気機関の発明そして巨額初期投資と配当から生まれた減価償却、利益計算、経営分析、アメリカでの原価計算の発達と管理会計、投資家保護のためのディスクロージャーといった内容を講談調まじりで読みやすくまとめられた本です。会計が苦手な方は、こういう話から入るのも悪くないです。本書に会計は美術と同じで、実技から入るから挫折する(簿記のことです)とありました。見る方から入るのは確かにいいと思います。実際、会計教育は簿記から入るより財務諸表を見る方から入るほうがベターだと考えています。歴史から学ぶというのは現在の制度を理解するには無味乾燥な教科書の解説を読むより、面白くかつ説得力があるのでオススメですね。

論語と算盤

渋沢栄一、守屋淳(訳)
『現代語訳 論語と算盤』
筑摩書房
2014年1月10日(電子版)
20210508 前々から読もうとは思っていたけど、手が出ていなかった1冊。大河ドラマを観ながら、経済や商業を扱っている身でありながら読んでないのは、よろしくないなということで読みました。まさに納得の言葉をいくつか紹介します。「何事も誠実さを基準とする」「人が調子に乗るのはよくない」「極端に走らず、中庸を失わず、常に穏やかな志を持って進んでいくこと」「信用こそすべてのもと。わずか一つの信用も、その力は全てに匹敵する」加えて、家康の遺訓もよかったです。孔子を信頼できる点として、奇跡がひとつもない、迷信が何もない、というのは本当にその通りです。唐突ですが「自分がして欲しいことを、人にもしなさい」より「自分がして欲しくないことは、他人にもしない」派です。あと、権利よりも義務が先にくる派です。渋沢栄一のことをあまり知らないのであれば、青天を衝けの予習・復習になると思います。ネタバレも含め。

やりなおし高校日本史

野澤道生
『やりなおし高校日本史』
筑摩書房
2018年2月23日(電子版)
20180505 歴史の本質を見失っているような受験日本史に嫌気がさして、勉強を放棄したという若気の至りから、早20数年。日本史は大好きなんです。本書を読んで、改めて歴史から学ぶことは多いと感じました。日本史とは別の話になりますが、本書で国語の読解力とは、相手が伝えたいことを正確に理解できているかどうかを問うものであって、きちんと読んで、正しく理解しなければならない、というのは、なるほどなぁと思いました。若いときに、学ぶことの本質をしっかり理解するって大事ですよね。最後にいいなぁと思った言葉を一つ。「政治は国民道徳の最高水準たるべし」by浜口雄幸

学歴分断社会

吉川徹
『学歴分断社会』
筑摩書房
2011年2月25日(電子版)
20150731 多忙を理由に内なる怠け者の誘惑と戦いながら、7月最終日にて読了。本書はタイトル通り、中卒・高卒・大卒といった学歴によって分断されている社会を扱ったものです。年齢、職業、家族構成、趣味、年収といった分類、あとその分類に基づく傾向はいろいろとありますが、社会を真っ二つに分け、傾向がはっきりしているものとして学歴は確かに存在します。本書は、「格差社会」と呼ばれて久しい今日の状況を学歴という切り口で、感情論にならないよう気を配りながら客観的に考察しています(格差は広がっていないという主張です)。昭和の頃のように、差はあれ、みんながポジティブな時代と比べれば、相対的に不平等を認識しやすいようになったという見解でした。話は変わりますが、選挙時の自民・公明支持者の割合とその指示階層の補完性は、なるほどと思いました。学歴差で思考パターンが異なるというのも納得できます。重要なのは、2つの学歴集団の間に大きな格差が生じないようにすることであり、上下関係ではなく、水平関係で考えるということなのだと思います。本書で、首都圏と関西圏を例にしていたのは言い得て妙でした。

キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる

佐々木俊尚
『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』
筑摩書房
2011年2月10日
IMG_3194 ちょうどこの本が出た頃から佐々木さんをフォローし始めて、読みたいと思っていた本です。ご本人自身、キュレーターとして毎日Twitterで有用な視座を与えてくれています。1年半前にiPhoneに変えてから、TwitterとFacebookを本格的に使用するようになりましたが、情報の流れというか、質が確実に変化しているのを実感します。今はまだまだ過渡期であり、本書に書いてあることもその中での一つの解釈だと思います。個人的には、佐々木さんの書いていることは非常に共感を持って受け止められるものが多いです。是非、読んでもらいたい1冊です。しかし、ヘンリー・ダーガーのヴィヴィアンガールズに出くわすとは思いませんでした。

会計学はこう考える

友岡賛
『会計学はこう考える』
筑摩書房
2009年8月10日
DSC04904 会計というのは、何かとよくわからない、難しいイメージがあり、会計学って何をしているの?という素朴な疑問が付き纏います。本書は、そこら辺の会計How to本ではなく、会計学とはどういう学問なのかというコンセプトの本です。一般の方向けということですが、少しハードルが高い気もします。会計学を学ぶ学生には、本書や石川先生の『変貌する現代会計』なんかを読んで、しっかり会計学について考えてみて欲しいなと思います。背表紙に「会計にもいろいろ「問題」がある」とあります。いろいろあるんです(笑)

現代語訳 学問のすすめ

福澤諭吉、齋藤孝 訳
『現代語訳 学問のすすめ』
筑摩書房
2009年2月10日
20090701 言わずと知れた名著ですが、実際手に取ったのは初めてでした。book diary600冊中ベスト3に入る名著です。福澤諭吉が一万円札の顔になるわけです。偉大な啓蒙家ですね。齋藤先生がせっかく文語体から口語体に訳されたわけですし、日本人は改めて読んでおくべきだと思いました。現代社会は、複雑なので言行一致した啓蒙というのが、なかなか難しいところですが、こういった見識を持った人物が現代にいれば、腐った日本も良い国になっていけるかもしれません。それにしても、冒頭の「天は人の上に人を造らず〜」は知っていながら、意外と中身を知らない人が多いし(私もその一人でしたが・・・)、小中高と国語や道徳なんかで読む機会があってもいいものなのに、、、と思います。

ありえない日本語

秋月高太郎
『ありえない日本語』
筑摩書房
2005年3月10日
4.26 察しが付くと思いますが最近の若者の言葉についてです。ここに出てくるほど酷くもないですけど、私の言葉もかなり有り得ないものが多いです。コラムの言葉遣いも結構ラフです。最近、マナー研修をいっぱい受けたので言葉遣いに関しては考えるところが多いです。本の内容は、ありえない日本語がどのように作られたのかの説明や言葉が気になるかとかのアンケート結果とかです。あとがきに書いてある著者の先生のオタク談は結構引きましたね。どうりで少女漫画の例が多いわけだ。

失敗を恐れない人生術

古郡廷治
『失敗を恐れない人生術』
筑摩書房
2005年1月10日
3.24 実に211の名言が載せてあります。これほどの名言がありながら、人間は少しも進歩してないですよね。名言によって言い表されたことをもって、人間とはこんなもんだとも言えます。このような言葉は、よりよく生きていくためにはとても大事です。といっても、こんなことを一々言うヤツは確実に嫌われると思いますが。しかし、男女の恋愛というのは絶対に思うようにはいかないものです(本の最初は“恋愛”についてです)。男と女は違う生き物ですからねぇ。

パラサイト社会のゆくえ

山田昌弘
『パラサイト社会のゆくえ』
筑摩書房
2004年10月10日
1.25 4,5年前に『パラサイト・シングルの時代』を読んで面白かったので、その続編的な本みたいなので読んでみました。今の社会状況というのをとてもよく捉えている内容だと思います。全くもってそういう時代なんですよね。しかし、それをどう打開していくかというところが欠けていたのが残念です。社会学者さんの言うことは、とても説得力があって「いいこと言った!」「その通り!」というものが多いのですが、いくらか深読みし過ぎているものも少なくないようにも感じます。「それは考え過ぎだよ」みたいな。
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