iBooks

仕事人生のリセットボタン

為末大、中原淳
『仕事人生のリセットボタン 転機のレッスン』
筑摩書房
2017年7月28日
20240101 飛行機で読みました。25歳以降は、リセットボタンを押しながら過ごしているので、興味を持ってポチりました。為末さんは一つ上の同世代で、陸上で100,200mから400m、そして400mHに競技種目を変えていったという共通点があります。読んでみて考え方にも共通点が多いと感じました。そこそこの幸せで安定ならOKとは思わないタイプで、とにかく飽きてしまう。過去を売る(自分の成功をもとに何かを提供する)のは、時間がもったいないと思うし、せっかくやるなら、自分の経験になること、新しいことをやりたいと思ってしまいます。そして、1番の強みは、失うものがないということ(そう思っているところ)。ゼロから出発するのが、ワクワクするんですよね。ただ、人への指導となると、自由と裁量を与えることが最良だと信じているところがあって、そこの合う合わないがかなり難しいなと悩んでるし、徒弟制が向いてないとつくづく思います。贅沢な話、自分で問題設定して、自分で回答するといった、自分で動いていく人間をサポートするのが向いていると思いました。自分の話ばかりになってしまいましたが、中原先生のピボットターンの例えはいいなと思いました。

物語思考

けんすう(古川健介)
『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』
幻冬者
2023年5月8日
20230926 久々に自己啓発っぽい本です。著者の言っている通り、精神論ではなく「やり方(ハウツー)」を提供している本だと思いました。なりふり構わず頑張れを、きちんと体系化してやることを具体化したものと言えます。そういう具体的な部分は、失敗していいから自分のやりたいようにやりたい気持ちが強い私にとっては刺さりませんでしたが、それ大事!だと思ったのは「自分の設定した夢や目標を変えるのに躊躇がない」「アイデアを温めてはいけない」「学習初期に無駄なルートを大量に試すのが成功に近い」といったところでした。いろいろ書きたいことは山ほどあるのですが、書き始めると止まらなそうなのでやめておきます。誰もわからない将来に対してキャリアプランを立てるより、キャラを作って、その場その場で演じていくのがよいと思います。あと、人生はエイヤっていうのが大事。

目的への抵抗

國分功一郎
『目的への抵抗 シリーズ哲学講話』
新潮新書
2023年4月17日(電子版)
20230907 やっぱ哲学ですよ。哲学しなきゃ。本心では全くそうは思わないけど、こうするのが最も得な結果に繋がるからやってる、っていう合理的選択ばかりでやるせない世界をどうにかしたいと思う今日この頃。難しい話は置いておいて、おもしろかったと思います。遊びは真剣に行われるもので、真剣に行われるから楽しく、充実感がある。ゆとりとしての遊びは、活動がうまく行われるために不可欠である。ということがこの本で得られた最大の内容だと思います。あまりにも合理的で冷めた世の中には、情熱が必要ですよ。合目的的な活動から逃れること=不真面目ということではないというのも大事な観点です。人間の自由は、必要を越え出たり、目的からはみ出たりするのです。贅沢と不可分。人間らしく生きる喜びと楽しみのある生活をしたいですね。

「戦前」の正体

辻田真佐憲
『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』
講談社
2023年6月1日(電子版)
20230719 流行りの本をば。神話は好きです。宗教もそうですが、嘘だと知りつつ、気持ちのよい言葉に、人間の感性は揺さぶられ高揚するものです。人間は自分のことを特別だと思いたいものなのです。戦時の当局(プロパガンダ目的)、企業(儲け目的)、消費者(熱狂目的)の3者のウィンウィンウィンで成立した構図は、そうだよなと思いました。本書では、「原点回帰という罠」「特別な国という罠」「祖先より代々という罠」「世界最古という罠」「ネタがベタになるという罠」という5つの観点で、戦前を考察しています。互いに矛盾している「宿命論」と「努力論」が循環するというのはおもしろいと思いました。情報過多のこの時代、情報を体系的に整理して真偽をしっかり判断する力が大事だと常々思います。おわりににある、この能力を最も培えるのが読書や執筆というのは、その通りだと思います。スマホをスクロールしていても、身につくとは思えない。

日本人の承認欲求

太田肇
『日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層』
新潮社
2022年4月18日
20230430 太田先生積読シリーズです。大分⇔山口にて。コロナのテレワークネタを切り口にした、十八番の承認欲求の考察です。コロナ禍では、授業はオンデマンドやオンラインだったものの、田舎にいたこともあり、毎日出勤して研究室で作業していたので、特にテレワークらしいことはしていませんでした。学会がすべてオンラインだったことが、もっともテレワーク的な体験でした。承認欲求のないドライな仕事であれば、テレワークは目的遂行に特化した利便性のかたまりだと思います。ただ、仕事に付随した様々な刺激を求めるのであれば、それらを削ぎ落とした形が利便性の正体なのでトレードオフの関係にあります。それはそうと、組織における承認を得るために、なにかと滅私奉公する日本社会においては、慣習からの解放であり、その慣習で承認を得ていた人にとっては切ない働き方なのだと思います。GW明けからコロナも5類移行で、いよいよ日常が戻りつつありますが、コロナで本格化したテレワークも、組織文化によっては元に戻りそうな感じです。組織文化によっては。個人的には、裁量労働の世界に戻ってまいりまして、場所や時間にとらわれず仕事ができる環境になったのが、テレワーク云々より大きな変化です。本書にもあるのですが、週5のうち、2日出社、2日在宅、1日はサードプレイスで仕事するくらいが、最も良いのではないかと思いました。「コスモポリタン」と「ローカル」という分類は興味深かったです。日本はもっと「コスモポリタン」が増えるとよいと思います。いろんな選択肢がある世の中がいいですね。

何もしないほうが得な日本

太田肇
『何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造』
PHP研究所
2022年11月4日
20230422 移動ばかりしてるくせに読んでない、、スマホ内で積読状態の太田先生の本を読み進めようと思い手に取りました。本書に書いてある日本人の特徴を絵に描いたような自分。私の場合、とにかく「目立ちたくない」というのがあります。あと、よくあるパターンは、空気を支配する力が強い人がいるやつ。こんなこと思う人はいないよね、という前提から入られると、もう何も言えません。あとは、目立たず、淡々とやり過ごすだけ。どんどん状況が悪化しているのを理解しつつ。本書では、全体の利益と個の利益が調和することを暗黙の前提にしていると説明されていました。そして、世の中の改革と呼ばれる類のものの本末転倒感もすごく気になっています。この空気感でみんなが合理的な選択をするので、本来の目的から外れたところに行き着くやつ。入試対策としての「主体的」活動という、主体的活動の対極にあるような活動や、本気でやろうとしている人はごく一部で圧倒的多数の「総論賛成、各論反対」派に足を引っ張られ、骨抜きに終わるパターンが多過ぎます。世界最低水準のワークエンゲージメントと帰属意識が物語ってるし、「何もしないほうが得」という意識は本当に根深いものがあります。本当に、みんな見せかけ過ぎて何を考えているのか、わからないし、大きな欠点がない平凡なものが評価されがちです。「新人のころは輝いていた目が、1年も経つと曇っていく」し、「能ある鷹は爪を隠す」という処世術を身につけるのは仕方がないことです。それが合理的なのですから。とは言え、「するほうが得」な社会にするためには、意識が変わるちょっとした仕掛けでよいはずなので、そんな前向きな社会になる日がくることを祈念して、今回は終了です。

自由と成長の経済学

柿埜真吾
『自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠』
PHP研究所
2021年7月28日
20220619 ここのところ、ちょっとした移動が多かったので読めました。『人新世の「資本論」』の批判本です。『人新世〜』が競争と成長の社会に人類の幸福があるのかという批判とすれば、本書は『一九八四年』のような社会に人類の幸福はあるのかと批判している感じでした。ノスタルジーに浸るのはよいのだけど、明らかに世界は進歩していることを忘れてはならないと思わされました。圧倒的に豊かになり便利になっている暮らしを以前の水準に戻すのは嫌ですね。目的を共有することもなく、お互いに知り合うことさえなく全人類の協力を実現できる方法としての資本主義は、やはりすごいシステムだと感心しました。資本主義を支えている会計システム(複式簿記)も然り。全体主義が苦手な私は、基本的人権が保障された自由な社会で過ごしたいです。多様性こそ社会成長の源泉だと思います。一方的な力による現状変更が許されない社会になりますように。

まなさじの地獄

見田宗介
『まなざしの地獄 尽きなく生きることの社会学』
河出書房新社
2017年5月10日(電子版)
20220507 久々に普通の読書をしたような気がします。本書で扱っている内容を一言で表現している言い得て妙なタイトルです。また、非常に巧妙な文章で、唸らせられました。永山則夫という連続殺人犯を媒介にして日本社会を浮き彫りにしていく様は、社会学ってすごいなと思わされるものでした。まなざしの地獄に対比されている「透明な存在」としての少年Aについての解説も興味深かったです。平均値と極限値の間の相互媒介的な関係という分析の視点で、例外においてこそ、かえって一般性が見出しうるというのは勉強になりました。金の卵と呼ばれ、集団就職で東京に降り立った地方青少年たちのことをあまりネガティブに捉えたことがなかったのですが、本書を読むと現実はなかなかに厳しいものだと認識させられました。最近は軽い読み物しかしなくなったので(本書も分量が少ないために選択した)、重厚感のある(精神的に)読書をして世界に対する認識を深めたいですね。

同調圧力の正体

太田肇
『同調圧力の正体』
PHP研究所
2021年6月29日
20220329 同調圧力の正体とされる「閉鎖性」「同質性」「個人の未分化」は、まさに田舎だな、日本社会だな、いじめの構造に似ているな、と思いました。建前と本音のダブルスタンダードの中で、外面と内面を使い分け、空気を読んで和を乱さないよう周囲に同調する。私自身もそうやって社会生活を過ごしていますし、もっとしっかり自己主張をと言われても、そう簡単なものではありません。ここは日本なのです。コロナ禍で日本社会の特異性が炙り出されたように思います。同質性を崩すためには「異端者」を入れることが有効であり、異端者の力が同調圧力を跳ね返すための「閾値」を超えると空気が一変すると述べられていました。若者を中心に多様性への理解は進んでいるので、多くの集団で同調圧力(違和感)を吹き飛ばせるだけの異端者が増えるといいなぁと思います。ただ、その新しい風でさえ、新たな同調圧力となるのが日本だったりするんですよね。

「承認欲求」の呪縛

太田肇
『「承認欲求」の呪縛』
新潮社
2019年2月22日
20220327 この後に続く『同調圧力の正体』とともに読んでいて自分はつくづく日本人だなぁと思い知らされる内容でした。日本人がおかしなことをするときは、閉鎖的な組織と濃厚な人間関係(固定した上下関係)の中で共同体に対して忠実に振る舞おうとするときだと思います。そういう香りのする組織には近づかないことです。再発防止に向けて形式を強化するような過度の確認やアカウンタビリティは、逆に上下関係の強化や当事者意識の希薄化を招き、逆効果になるのは実感します。目標やキャリアは周囲からずらして、競合するライバルが少ない職場を選んで就職、転職する方が成功するケースが多いと書いてありましたが、経験的に私もそうだと感じます。レッドオーシャンで勝ち続けるのは本当に大変です。プレッシャー=(認知された期待ー自己効力感)×問題の重要性という式があったのですが、幸い“問題の重要性”部分に鈍感力が発揮されているようで、鬱にならずに生きているように思いました。何にせよ、ほどほどにすることが肝要です。

ミライの武器

吉藤オリィ
『ミライの武器 「夢中になれる」を見つける授業』
サンクチュアリ出版
2021年5月15日
20220321 約1年ぶりです。解析待ちに読みました。購入したきっかけは忘れました。郷に入れば郷に従ってしまう私には、真似できない生き方をされていると思う次第ですが、書かれている内容には同意します。私も世の中は何も完成していないと思うし、違和感を大事にしたいです。どの経験がどんなふうに活きてくるかなんて誰にもわからないと心底思うし、だからこそ周囲の意見に振り回されないことは大事で、大きな意思決定は自分の考えに従うべきでしょう。「こうあるべき」「〜すべき」という考えは、何かと自分らしい人生を遠ざけてしまいがちだと思います。そうは言っても、自分らしさや得意なもの、好きなものがよくわからないと言われそうです。それはいろいろやってみるしかありません。なんでもやってみなければ、わからないことばかりと、今解析を繰り返しながら感じています。食べてみないと好きかどうかわからないものです。

論語と算盤

渋沢栄一、守屋淳(訳)
『現代語訳 論語と算盤』
筑摩書房
2014年1月10日(電子版)
20210508 前々から読もうとは思っていたけど、手が出ていなかった1冊。大河ドラマを観ながら、経済や商業を扱っている身でありながら読んでないのは、よろしくないなということで読みました。まさに納得の言葉をいくつか紹介します。「何事も誠実さを基準とする」「人が調子に乗るのはよくない」「極端に走らず、中庸を失わず、常に穏やかな志を持って進んでいくこと」「信用こそすべてのもと。わずか一つの信用も、その力は全てに匹敵する」加えて、家康の遺訓もよかったです。孔子を信頼できる点として、奇跡がひとつもない、迷信が何もない、というのは本当にその通りです。唐突ですが「自分がして欲しいことを、人にもしなさい」より「自分がして欲しくないことは、他人にもしない」派です。あと、権利よりも義務が先にくる派です。渋沢栄一のことをあまり知らないのであれば、青天を衝けの予習・復習になると思います。ネタバレも含め。

やりなおし高校日本史

野澤道生
『やりなおし高校日本史』
筑摩書房
2018年2月23日(電子版)
20180505 歴史の本質を見失っているような受験日本史に嫌気がさして、勉強を放棄したという若気の至りから、早20数年。日本史は大好きなんです。本書を読んで、改めて歴史から学ぶことは多いと感じました。日本史とは別の話になりますが、本書で国語の読解力とは、相手が伝えたいことを正確に理解できているかどうかを問うものであって、きちんと読んで、正しく理解しなければならない、というのは、なるほどなぁと思いました。若いときに、学ぶことの本質をしっかり理解するって大事ですよね。最後にいいなぁと思った言葉を一つ。「政治は国民道徳の最高水準たるべし」by浜口雄幸

大学大倒産時代

木村誠
『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』
朝日新聞出版
2017年8月31日(電子版)
0914 業界人ですから。

ビジネスエリートの新論語

司馬遼太郎
『ビジネスエリートの新論語』
文春新書
2016年12月20日(電子版)
20170206 社会人になって早12年、うちサラリーマン生活も10年と立派にサラリーマンになったような気がします。本書は、昭和30年に司馬遼太郎が福田定一(本名)で刊行した『名言随筆サラリーマン ユーモア新論語』という本が元となった復刊本です。60年以上前の内容ですが、今でも読めます。大江広元から始まり、義務感から精一杯の努力を生涯続けようとするサラリーマンの姿勢を「義務を果たすことに楽しみを見出すという形」と述べています。風刺も効いたなかなか含蓄のあるサラリーマン道となっています。最後の方は、司馬遼太郎の話がメインになっています。サラリーマンの息抜き、暇つぶしにはいいかもしれません。

違和感の正体

先崎彰容
『違和感の正体』
新潮社
2016年6月17日(電子版)
59 世の中に違和感を感じませんでしょうか。私は感じます。ということで、ダウンロードしたのが本書。ものさし不在の世の中で、ルサンチマンが渦巻く今日この頃。人の数だけ正義があるのはわかるけど、自分自身を絶対正義と捉え、反する意見は悪だと言うのは如何なものか。そういう言動は、手段が目的となっていることもしばしばです。他人同士が折り合いをつけながら、新しい秩序を作り上げることは大事です。さて、何が善で何が悪か、世間で行われている言論を論理的に捉えるとどうなるのか、これらをしっかり見つめ直している内容なんだと思います(筆者の視点で)。結論として、「違和感の正体」を社会全体からの「微笑」が奪われつつあることだと締められています。今の社会は、窮屈だということでしょうか。

イライラしない本

齋藤孝
『イライラしない本』
幻冬舎
2016年1月(電子版)
20160728 副題は『ネガティブ感情の整理方法』。ストレスフルな日々を過ごす方々には、よい指南書なのではないでしょうか。インターネットやSNSによる感情の揺れやザワつき、心の不安定さは、現代人なら皆が持っているネガティブ感情だと思います。不満や羨み、後ろめたさは、ストレスを生みます。本書を通して、「来るものは拒まず、去るものは追わず」を勧められていますが、「君子の交わりは淡きこと水のごとし」が大事ですね。あと、未来への不安と過去への後悔を断ち切って、今この瞬間、「今やるべきこと」に集中することです。その他、カタルシスとして、愚痴る、歌う、芸術に触れることを勧められていました。そして個人的には大の苦手な「ムダ話」、雑談力には心の中のちょっとしたガス抜きができる、「意味のないおしゃべり」には大きな意味があるとのことでした(耳が痛い)。

自由のジレンマを解く

松尾匠
『自由のジレンマを解く』
PHP研究所
2016年3月10日(電子版)
20160625 「グローバル時代に守るべき価値観とは何か」という副題の本を、英国がEU離脱の国民投票を決めた昨日に読み終えました。読み応えがあって、なかなか面白かったです。前半は、固定的人間関係におけるシステムと流動的人間関係におけるシステムとの比較で、考え方や必要となるもの、振る舞い等が全く異なるという話で、後半からは、リベラル派とコミュニタリアンの矛盾を題材にした話を皮切りに「自由」について考える内容(特にマルクスを引き合いに出されています)になっています。自分自身の思想・信念の再確認という意味で、大変意味のある読書でした。ブックマークも多く、書きたいことは多くあるのですが多過ぎるので省略するとして、この時代に生きる我々にとって示唆に富む内容だと思います。話は少し変わりますが、不寛容社会と言われている昨今、多数派の思想や感情による抑圧がいかに恐ろしいかというのは、時代に学ぶべきでしょうね。

なぜ疑似科学が社会を動かすのか

石川幹人
『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』
PHP研究所
2016年3月3日(電子版)
20160520 同じ流れでiBooksからの1冊。世の中、実しやかに囁かれていることが全く真実とかけ離れているということが多過ぎます。本書に「根も葉もないことはふつう誰も信じない」の前提の方が間違っていて、根も葉もなくとも信じたいことがよくあるというのは言い得て妙です。論理的な説明よりも、感情に訴える物語のほうが人々を操作しやすいのは、まさにその通り。科学は反証可能性がないと成り立たないのは言うまでもないのですが、なぜ疑似科学がここまで世の中に影響を与えているのでしょう。論理的思考が鍛えられていると、疑似科学の類に騙されずに済むかもしれないのですが、なかなか人間というのはそこが苦手なようです。本書では、疑似科学の例を交えて、科学とは何か、疑似科学を信じてしまうのはなぜかについて書かれてあります。「それも神の思し召し」と万能理論様々では、騙されてしまいます。

自分を責めずにはいられない人

片田珠美
『自分を責めずにはいられない人』
PHP研究所
2015年11月25日(電子版)
20160422 電子書籍でオススメから選択しているため、同じ著者が続く傾向にあるようです。さて、人間生きていれば、落ち込むこともありますが、日々「自分はダメだ」と思っていては人生楽しめません。また、そんな罪悪感を掻き立てることで人を支配しようとする人も多くいます。そんな罪悪感は、抑え込もうとしてもどこかで表面化するので、受け入れることが大事で、無視したり排除したりするのではなく、さらに罪悪感に限らず、すべての感情を自身についての重要な情報を与えてくれるものとして捉えて、対応しようというのが本書の内容だったように思います。こうでなければならないといった気持ちのある人は、要注意です。割り切りは大事です。

みずうみ

川端康成
『みずうみ』
新潮社
1960年12月25日
IMG_1337 『文豪はみんな、うつ』を読んで、川端康成が気になって購入。iBooksで購入後も改めて文庫本を購入(やっぱり本は紙が好き)。大昔に読んだ『伊豆の踊子』の記憶は全くないものの、川端文学の理解者たちが、困惑し嫌悪したのも大変頷けるものでした。この偏愛傾向は、本人の体験なくしては表現できないものだと思います。それはさて置き、「意識の流れ」を表現した作品として、とても興味深い内容です。まるで夢の中のように、次から次へと唐突かつ無作為に流れていく主人公の意識の変化がおもしろく、まとまりのない断片の塊が、自然と全体を構成していく感じがなんとも言えません。

男尊女卑という病

片田珠美
『男尊女卑という病』
幻冬舎
2015年8月(電子版)
48 iBooksでの幻冬舎新書が続きます。本書の最後に「男性に女心がわからないのはなぜか。それは男性に生まれたからにほかならない。逆もまたしかり。」とあるのですが、この性差のある男女が同じ存在になりえないという基本認識を持った上でのバランス感覚が肝要だと思います。心理学的に見て、男女の精神構造を分析している部分は面白かったです。日本社会は、家制度の名残で今でも男性優位の風習が非常に強く残っていますが、少しずつ社会は変わり始めているという感覚を日々覚えます(男女問題に限らずですが)。おそらく世代が変われば文化は変わるでしょう。あとは、過度なバッシングや男女に限らず「自慢賞賛型」「特権意識型」「操作支配型」みたいに性格を拗らせてしまうといったことをどう克服するかですね。「過去と他人は変えられない」とは言い得て妙です。

文豪はみんな、うつ

岩波明
『文豪はみんな、うつ』
幻冬舎
2015年2月(電子版)
11 読み始めて気付いたのですが、『他人を非難してばかりいる人たち』と同じ著者のようです。夏目漱石、有島武郎、芥川龍之介、島田清次郎、宮沢賢治、中原中也、島崎藤村、太宰治、谷崎潤一郎、川端康成といった文豪たちを精神疾患という視点で批評されています。誰しもが性格的にどこかが歪んでいるものですが、並外れた能力を発揮する人物というのは、大抵この歪み具合が激しいと思っています。ここで紹介されている文豪たちも何かしらの執着性格が起因で精神疾患に罹患していたということになるでしょうか。また、その本人の精神状態やその経験が、作品に強く投影されているのも頷けました。感受性が豊かなことは、なかなか生きづらいものだと感じさせられます。立派な鈍感力を持った私には、縁遠い話なのかもしれません。あと、不倫や心中といった、世間的なタブーがこれほど自由に繰り広げられる文壇というか、時代に結構驚かされます。

人生を面白くする 本物の教養

出口治明
『人生を面白くする 本物の教養』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
20160123 ↓と同時に購入。共感するところが多かったので、電子書籍でなかったらドックイヤーだらけになっていたかもしれません。出口さんの合理主義、実質主義は、基本的に私の思考回路と重なります。自分が腑に落ちている「数字、ファクト、ロジック」と照らし合わせながら考えて判断しますし、相手がどういう数字を用い、どういうファクトを重視し、どういうロジックを積み上げているかを重視します。まさに「文は人なり」で「てにをは」ができていない人は、筋の通った思考ができていないので、信用しません。話は変わりますが、「あっ、そうか!」という原体験って大事ですよね。

他人を非難してばかりいる人たち

岩波明
『他人を非難してばかりいる人たち』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
01 久々にiBooksを開いて購入。日々、SNSやTVでは不寛容な非難(バッシング)が繰り返されています。世知辛いものです。なぜ、このように排他的で不寛容なのか、日本独自の空気があるように思います。あと、日々感じるのは、妬みです。「人の不幸は蜜の味」とは言ったもので、人間とはつくづく厄介なものです。本書では、いくつかの事例をもとに、その構造を解説しています。個人的に関心が高かったのは、「規範」のない日本社会の独特な文化構造です。良くも悪くも、右へ倣えな風土は国民性なのでしょうか。

35歳のチェックリスト

齋藤孝
『35歳のチェックリスト』
光文社
2014年7月11日(電子版)
20140816 気付けば光文社新書が続いていますね。帰省する直前に、iBooksで見つけて購入。MBA上でも読めるのがいいです(Kindle早く対応して)。現在34歳、来年の3月で35歳になります。ここのところ日々に追われて自分を失いかけているので、ちょうど良さそうと手に取りました。本書では35歳での棚卸しを勧めています。本書の受売りですが、私が普段気を付けていることはストレス管理ですね。忙しくなる=ストレスが増えるではないことがポイントです。仕事は、受動的か能動的かでストレスはかなり違います。車酔い、船酔いのように揺れに翻弄されて無駄にエネルギーを使って疲労するより、主体的に仕事することで、忙しくなってもストレスは格段に減ります。私はビジネス体力がないので、とにかくコントロールしないとすぐにダウンしてしまうので。あと、自分のためより誰かのためのほうが、本質的な生き方ができると思います。そして、人はオファーで成長するということ。自分がどんなにやってみたいと思っても、場を与えられないことにはできないのが仕事です。人格が安定している、システム思考ができる、これらは信頼の基準です。齋藤先生の言う通り「ミッション・パッション・ハイテンション」は大事ですね。

ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>

長沼博之
『ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>』
阪急コミュニケーションズ
2013年10月7日(電子版)
20140129 何か読もうかとiPhone上に積読されているiBookとKindleの中からチョイス。結構おもしろかったです。著者は私よりも若いみたい。これから世の中はドラスティックに変わるでしょう。クラウドファンディングやクラウドソーシングが普及すれば、本当にあっという間に常識が覆りそうです。Google Glassのようなウェアラブルコンピュータがスマホのように普及するのもそう遠くないはずです。「地図を捨ててコンパスを頼りに進め」というのはその通りだと思いますね。価値観においても豊かさの指標や働く目的は、経済的な富ではなく貢献欲求や自己実現欲求を満たすことに重きが置かれるようになっていくと思います。知識や知恵といった外部化できる「知性」ではなく、「倫理の外部化」を解決するような人格を持つ「Good natured person」が求められることになるでしょう。生きる力は、やはり哲学にあります。問題解決や過去分析ではなく、機会発見や柔軟適応といった問題を定義することが重要です。学生さんには昭和的な常識ではなく、これからの社会を見据えた能力を身につけてもらいたいと強く思いますね。

大学のウソ―偏差値60以上の大学はいらない

山内太地
『大学のウソ―偏差値60以上の大学はいらない』
角川書店
2013年11月10日(電子版)

20131221 大学教育に関しては、考えることが多過ぎて錯乱なうです。本書は、主に海外大学の紹介で、日本の大学では勝負にならないという話。山内さんの現地取材レポは、少し割り引いて読まないといけないな、といつも思うのですが、大まかにはその通りだと思います。こういう話を聞くと、自分の留学熱が刺激されます。海外でもう1回、好きな勉強をしてみたいと(自分の能力の低さに辟易している日々)。日本の大学のカリキュラムは非常に硬直的で非効率であることは確かです。当事者である私もそう思います(現場で先生方は少ない時間の中でとても努力されているにも関わらず)。遅々として進まない大学改革には、小手先ではなく制度を根本から変えてしまうくらいの思い切った改変が必要でしょうね。そのとき自分が生き残れるのかはわかりませんが、変わらなくては変わりません。日本の型に嵌めようとする変な風習(いつからなんでしょう)が根っこにあるように思います。大局観をもたないといけませんね。高齢化がますます進み、20年、30年後の日本はどうなっているのか。

自分のアタマで考えよう―「知識」にだまされない「思考」の技術

ちきりん
『自分のアタマで考えよう―「知識」にだまされない「思考」の技術』
ダイヤモンド社
2012年7月1日(電子版)
20131212 引き続きiBooksで購読。ちきりんさんの本は2冊目。読みやすそうなのでチョイス。思考の整理術が紹介されています。最近、忙しいと思い込んでいるせいか、まったく頭の整理がつかなくて、ヒドく効率の悪い生活を送っています(整理がついていないから忙しいと感じているだけ)。効率よく成果に結びつけるには分析は不可欠。分析する際の要素分解と組合せの検討は、不可避な作業ですよね。ここが甘いとあとでしっぺ返しを食らうことになる。まさに、今の私がそういう状態。検討するほどの心の余裕がないのが失敗の元凶です。自他、時系列の縦横の比較を忘れて、わからないと唸っている自分を省みてしまいます。急がば回れ、きちんと現況把握には努めないと。階段グラフは参考になりました。使いこなしたい願望はあれど、やはり心の余裕度が邪魔しそう…。あと、本書の最初の方にあるのですが、確かに知識は思考の邪魔をします。なまじ知識があることから、思考停止に陥ることは多いです。

採用基準−地頭より論理的思考力より大切なもの

伊賀泰代
『採用基準−地頭より論理的思考力より大切なもの』
ダイヤモンド社
2013年1月28日(電子版)
20131125 相変わらず余裕がない日々が続いています。前回触れたのですが、早速iBooksで購入。基本的にKindleと変わらないですね(起動が遅いとか)。ただ、iBooksだとMBAなどと同期してくれているのでよいかも。読み捨てる本は電子版で十分そうです。さて、仕事にあっぷあっぷな日々を過ごすと同時に、自分の足らなさを痛感する今日この頃、本書はかなりヒントとなり得る内容が多かったように思います。書名こそ『採用基準』ですが、中身はリーダーシップ論で、典型的な日本人思考(極度に衝突を避ける性格)な私には極めて重要な示唆を与えてくれたように思います。日々の生活、仕事などでいつもどこかに感じている違和感は、ここにあるような気がします。「どうすればいいのか、みんなわかっているが、誰も何もやろうとしないために、解決できないまま放置されている問題」。コレです。「それを責務として割り当てられた役目の人の仕事」という思考。ひとつ壁を乗り越える必要がありそうです。
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