講談社現代新書

世界は経営でできている

岩尾俊平
『世界は経営でできている』
講談社
2024年1月20日
20240312 岩尾先生の新刊です。本当に一般向けなので、非常に読みやすかったです。平成生まれでいらっしゃいますが、大御所の大先生が定年後に徒然なるままに書いたエッセイを書籍にしたような雰囲気が漂っています。本書で伝えられている内容は、最後の一文の通りです。「人間とは、価値創造によって共同体全体の幸せを実現する、「経営人」なのである。」世の中の役に立ってなんぼ、というのを忘れて、おかしなことをするから、おかしなことになる。「歴史は登場人物の名前以外は似たような出来事の繰り返し」なんですよね。いつも本来の目的に立ち返って、社会生活を営んでいきたいものです。「部分に気を取られて全体を見失う、短期利益を重視して長期利益を逸する、手段にとらわれて目的を忘れる」私たちの生活場面のいたるところに経営はあります。何かうまくいかないことがあれば、それはうまく経営できていないのだと思います。ぜひ読んでみてください。

「戦前」の正体

辻田真佐憲
『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』
講談社
2023年6月1日(電子版)
20230719 流行りの本をば。神話は好きです。宗教もそうですが、嘘だと知りつつ、気持ちのよい言葉に、人間の感性は揺さぶられ高揚するものです。人間は自分のことを特別だと思いたいものなのです。戦時の当局(プロパガンダ目的)、企業(儲け目的)、消費者(熱狂目的)の3者のウィンウィンウィンで成立した構図は、そうだよなと思いました。本書では、「原点回帰という罠」「特別な国という罠」「祖先より代々という罠」「世界最古という罠」「ネタがベタになるという罠」という5つの観点で、戦前を考察しています。互いに矛盾している「宿命論」と「努力論」が循環するというのはおもしろいと思いました。情報過多のこの時代、情報を体系的に整理して真偽をしっかり判断する力が大事だと常々思います。おわりににある、この能力を最も培えるのが読書や執筆というのは、その通りだと思います。スマホをスクロールしていても、身につくとは思えない。

未来の年表

河合雅司
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』
講談社
2017年7月1日(電子版)
20180325 人口減少(出生数の減少、高齢者の増加、勤労世代の減少)で二進も三進もいかない日本の話です。

情報参謀

小口日出彦
『情報参謀』
講談社
2016年8月1日(電子版)
20160830 かなり面白かったです。確かなデータと確かな分析、これに勝るものはありません。ビックデータの時代とはよく言われますが、世の中の膨大な情報を的確に処理して、課題に取り組むことは必要なスキルだと思います。前例踏襲であるとか、勘で物事にあたるのは、あまり望ましいことではないでしょう。大学にも宣伝のうまい大学があります。まさに情報参謀による情勢分析や話題の作り方が、データに基づいた緻密な戦略に基づいている背景があるのでしょう。これから圧倒的な情報処理で、AIをはじめ、世の中のあり方が変化していくことになります。変える方の立場で、変化を楽しみたいものです。

決算書はここだけ読め!

前川修満
『決算書はここだけ読め!』
講談社
2010年1月20日
IMG_0237 試算表から構造を理解するというのが、本書の特徴だと思います。内容は、極めてシンプル。誰でもサラッと読めると思います。最近は、随分と減ってきましたが、巷の会計本は、やはり作り手の内容が多いです。決算書を読むだけなら簿記の知識は特にいりません。読み手に必要な知識は、基本的な構造を押さえることでしょう。細目は見ず、まずは全体をパッと見で把握することが大切です。本書で興味深かったのは、「減点思考の弊害」という部分。一字一句間違いのない解答をする癖のついた日本人は、減点されないように、細心の注意を払うのが習性になっているという指摘です。英語教育がまさにそれを物語っています。ちょっとしたことでも、真っ先に自分の知識が乏しいことに意識が移り、細かい部分も気にして、懸命に知識不足を克服しよう、減点されないようにしようと意識してしまう。この習性だと、なかなか前に進めませんよね。
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