司馬遼太郎
『花神(上)』
新潮社
1976年8月30日
ようやく手にとった1冊。地元の外れ、長沢池という池の辺りに大村神社があります。この小説の主人公である、村田蔵六こと大村益次郎を祭神とする神社です。地元では吉田松陰や高杉晋作といった志士に人気があります。維新後に長州閥を形成するとともに新しい国家を築いた偉人たちも有名です。そういった歴史的人物と同列にあるはずなのに、ひっそり佇むさまがまた彼のよう。靖国神社の参道に堂々たる銅像がありますが、不思議と地味で目立ちません。司馬遼太郎の小説は、『梟の城』『竜馬がゆく』『燃えよ剣』『坂の上の雲』『翔ぶが如く』といった映画やドラマになったものは観て知っているのですが、読むのは初めてでした。ちなみに『花神』も大河ドラマを観ようとしたことはあるのですが、地味で単調なため、すぐにやめてしいました。さて、前置きが長くなりましたが、思っていたとおり、私にはとても魅力的な人物に映りました。身の処し方や、ナショナリストなところが特に引き込まれました。冷徹で合理的なのに、自分の故郷というものにどうしようもない情念を持っているところに共感したというか、身の処し方については粋を感じるとともに感銘を受けました。地元のことを愛しているけど、好きになれないという下手に絡み合った自分の感情が表現されているようでした。続きはいつ読むのやら。
『花神(上)』
新潮社
1976年8月30日
