見田宗介
『まなざしの地獄 尽きなく生きることの社会学』
河出書房新社
2017年5月10日(電子版)
20220507 久々に普通の読書をしたような気がします。本書で扱っている内容を一言で表現している言い得て妙なタイトルです。また、非常に巧妙な文章で、唸らせられました。永山則夫という連続殺人犯を媒介にして日本社会を浮き彫りにしていく様は、社会学ってすごいなと思わされるものでした。まなざしの地獄に対比されている「透明な存在」としての少年Aについての解説も興味深かったです。平均値と極限値の間の相互媒介的な関係という分析の視点で、例外においてこそ、かえって一般性が見出しうるというのは勉強になりました。金の卵と呼ばれ、集団就職で東京に降り立った地方青少年たちのことをあまりネガティブに捉えたことがなかったのですが、本書を読むと現実はなかなかに厳しいものだと認識させられました。最近は軽い読み物しかしなくなったので(本書も分量が少ないために選択した)、重厚感のある(精神的に)読書をして世界に対する認識を深めたいですね。