河本敏浩
『名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉』
光文社
2009年12月20日
DSC05562 下世話な本だと思っていたのですが、読んでみると結構“なるほど”でした。「ゆとり教育」とはよく言いますが、東大入試は、30年前から比較すると量も圧倒的に増え、質も圧倒的に上がっていて、ゆとり教育どころではないようです。つまりは、学力低下ではなく学力格差が問題なんだと。中学受験で地方国立大の入試より難易度の高い問題を解くという昨今、昔は浪人1年で逆転できた学力が、今や小学・中学の段階で絶望的な学力格差が広がっているようです。そこには構造的な問題があると思います。勉強=競争であり、競争のないところからは勉強が消え、競争を離脱した瞬間に勉強から離脱するという考え方。受験能力(一定の問題を効率よく解くこと)と偏差値のみにしか意識がいかず、自分で探求する学習なんてそっちのけです。受験能力の高い学生が、大学入学後に凄まじい勢いで勉強をやめていくとか。ちなみに、大学の専門教育の成績は、高校成績や入試成績に相関関係はなく、初年次教育との相関関係が強いそうです(学問は探究心、知的好奇心の賜物ですね)。受験に使わないから、この科目は勉強しないという論理に、違和感をもって高校生活を送った覚えがあります。