恒吉僚子
『子どもたちの三つの「危機」』
頸草書房
2008年8月10日
12.11 教育系の専門書の部類に入るのでしょうが、とても面白く読ませて頂きました。日本の教育が国際的に評価されている点(均質な高学力の育成力が高い、人格形成力に優れている、授業の研究力が高い、教育に貢献する文化が存在する)を学力、社会性、価値という3つの観点から論じられています。クレーム社会、訴訟社会、教育消費社会と言われる昨今、日本独自の全人教育が崩れつつあることは確かだと感じます。個人的には、絆を強調し、学校を集団への自発的同調を学ぶ場と位置付けることに、一定の理解を持っています。また、一般大衆の義務教育の一環としてのモーレツな部活動もそのなかでスポーツマンシップ、協調性、リーダーシップ等を学んだ私にとって、非常に重要かつ優れた点だと思っています。確かに、過度な活動日数、精神主義・根性主義、古い上下関係や逃れることのできない集団統制という側面もありますが、それに勝るものがあるはずです。それが、日本の秩序を守ってきたのだと思いますし。あと、初等教育での能力別指導は、確実に害のほうが大きいと思っています。絶対にいろんなレベルの生徒が一緒に学んだ方が良いに決まってると。最後に、本書のP194の図は非常に示唆に富んでいると思いました。