2024年11月

天下 家康伝 上

火坂雅志
『天下 家康伝 上』
日本経済新聞出版社
2015年4月24日
20241124 司馬遼太郎もしくは幕末モノとも思ったのですが、戦国モノになりました。2013年4月1日〜2014年10月11日に日経夕刊に連載されていたもので、当時読んでいたので2回目なのですが、ほとんど覚えていませんでした。連載当時、家康に興味をもったのですが、そのまま放置して、大河ドラマを観て、いつか家康はきちんと読みたいなと思っていました。「どうする家康」とは全く異なる家康観です。歴史は見る視点が異なると、全く様相が変わることが魅力ですね。いや、歴史に限らずか。あと、歴史は経営につながる、みたいなことが言われますが、偉人の話は生きていくうえで参考になりますし、人の愚かなところや素晴らしさは歴史から学べます。いわゆる教養ってやつです。これまで紙上で読んできた連載モノを読み直してみようかとも思っている今日この頃。とりあえず、下巻も読もうと思います。

世に棲む日日(四)

司馬遼太郎
『世に棲む日日(四)』
文藝春秋
2003年4月10日(新装版)
20241107 読書の秋。勢いあまって完読。功山寺挙兵から四境戦争、そして逝去の巻。革命を成し遂げたほどの人物ではあるものの、父母妻子のことになると、どうにも頭が上がらないところに人間味を感じました。また、「きょうは寅次郎の日だ」「追討という文字はいかぬ。鎮静にせい」「総大将はいかぬ、総奉行にせい」という藩主敬親に魅力を感じました。そして、身分社会における、それぞれの役割について考えさせられました。日本において貴族の本質はあくまでも権威の象徴であり、個人的能力ではない。大名はただそこに存在していることだけが大事で、あとのことはすべて家来がやってくれる、ということに始まる組織における煩瑣な秩序習慣というものについて。思想の段階では抗えなかったその世界が、実現の段階で脆くも崩れていく様は歴史のダイナミズムというものでしょうか。『花神』から続いた計7冊の幕末長州ものもこれで終わりです。「いまから長州男子の肝っ玉をお目にかけます」と言ってみたいもんです。次は何を読もう

世に棲む日日(三)

司馬遼太郎
『世に棲む日日(三)』
文藝春秋
2003年4月10日(新装版)
20241102 内容的に89年の年末時代劇スペシャル「奇兵隊」を思い出しました。個人的には、彦島を譲らなかったこと、四民平等の市民軍を作ったことが、晋作の偉業だと思っています。作中にある政治の喜劇性と悲劇性という表現は、事実は小説よりも奇なりで、実に興味深いです。数年で何回転もする幕末長州は、まさに政治の大舞台で、藩主をおきざりにした政略も戦略も戦術も度外視した暴走の上に、下関戦争があり、さらに2度の長州征伐、そのなかで獄中や追われながらも俗論派を打ち破り、幕軍を退ける回天を遂げた晋作の話は、やはりおもしろいです。現代でもここ数年の衆院選を見ると、鞍替え、暗殺、代替り、定員減、区割変更と政治は何が起こるかわからないと思わされます(山口の話)。それはそうと、「政治的緊張期の日本人集団の自然律」と表現されていた、責任不在にして無理だとわかっていることに空気で突き進む特性は、本当に危ういです。起こるかもしれない未来として、この国に暮らしている限り留意しておくべき事項です。とは言え、思想が命より上位にある生き方、イデオロギーへの殉教性という熱狂には、魅了されるところがあります。松陰のいう「狂」になることも転換期の人材育成としては大事かもしれないと思いました。
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