司馬遼太郎
『花神(中)』
新潮社
1976年8月30日
東京往復で完読。おもしろいです。300年以上続いた幕藩体制を変えた市民革命として見ると、幕末の長州は、封建社会で抑えられていた才能が解放され暴れ回るという、身分制度では到底抑えられない人間のダイナミクスみたいなものが見て取れるようで大変興味深かったです(その熱量たるや)。情念としては強烈なほど長州人意識が強いので、読んでいると久々に小学校の頃の歴史好き少年に戻った気がします。中巻では、朝敵になったときの長州を幕府にも朝廷にも属さない独立公国とする高杉の理屈がおもしろかったのと、よくもまあ消滅せずに耐え抜いたもんだと思いました。そこにはやはり超合理主義の村田蔵六が必要だったのだと思います。とはいえ、人間社会は合理的なだけでは物事は進まず、形式がモノを言う場面も多いです。その辺りの不器用さや、周辺のサポートがまた物語を面白くしています。徳川300年の世は、超合理的に不穏分子を徹底的に排除するシステムを構築し、その人生経験から人間関係にも長けた家康という偉人が築いたものだと思いました。いつの時代も新しい事を成すというのは、実のないしきたりを壊すことに他ならないかもしれません。ただその実をとる冷静さは、ときに冷酷なもので、四境戦争での大島口のような采配はなかなかできないなと思います。下巻は読む時間あるかな(はて)
『花神(中)』
新潮社
1976年8月30日
東京往復で完読。おもしろいです。300年以上続いた幕藩体制を変えた市民革命として見ると、幕末の長州は、封建社会で抑えられていた才能が解放され暴れ回るという、身分制度では到底抑えられない人間のダイナミクスみたいなものが見て取れるようで大変興味深かったです(その熱量たるや)。情念としては強烈なほど長州人意識が強いので、読んでいると久々に小学校の頃の歴史好き少年に戻った気がします。中巻では、朝敵になったときの長州を幕府にも朝廷にも属さない独立公国とする高杉の理屈がおもしろかったのと、よくもまあ消滅せずに耐え抜いたもんだと思いました。そこにはやはり超合理主義の村田蔵六が必要だったのだと思います。とはいえ、人間社会は合理的なだけでは物事は進まず、形式がモノを言う場面も多いです。その辺りの不器用さや、周辺のサポートがまた物語を面白くしています。徳川300年の世は、超合理的に不穏分子を徹底的に排除するシステムを構築し、その人生経験から人間関係にも長けた家康という偉人が築いたものだと思いました。いつの時代も新しい事を成すというのは、実のないしきたりを壊すことに他ならないかもしれません。ただその実をとる冷静さは、ときに冷酷なもので、四境戦争での大島口のような采配はなかなかできないなと思います。下巻は読む時間あるかな(はて)