国際会計基準(IFRS)はどこへ行くのか −足踏みする米国・不協和音の欧州・先走る日本

田中弘
『国際会計基準(IFRS)はどこへ行くのか −足踏みする米国・不協和音の欧州・先走る日本』
時事通信出版局
2010年9月1日
DSC06646 2004年の『不思議の国の会計学』以来、久々に田中先生の本。いつもと同様、大変面白く読めました(多分に穿った見方という点でも)。時価主義反対論者の先鋒とも言える田中先生のIFRS批判です。内容は、副題が非常に簡潔に示しています。磯山さんの『会計基準戦争』とあわせて読んで頂くと会計に関する興味が沸いてくるのではないでしょうか(ただし、ワイドショー的な感覚で)。巷で騒がれているIFRSを丸飲みしない観点を得るという意味では有用だと思います。大変読みやすいので読んでいない方は、既刊の『時価主義を考える』『時価会計不況』『不思議の国の会計学』もお勧めです。

拝金

堀江貴文
『拝金』
徳間書店
2010年6月30日
IMG_1121 堀江君のRT攻撃に負け購入。自伝的小説なんでしょう。面白く読めますけど、良い子は読んじゃダメってな感もあります。あまり真に受けて拝金主義者になってもらっても困りますからね。良くも悪くもカネを中心に世の中回っていますが、カネや権力を中心に物事考えてしまうと歪んでしまいます。人の心は弱いものです。溢れる欲をどうコントロールするかは、なかなか難しいものです。相変わらず日本社会は混沌としていますが、世の中がいい方向に向かうように欲を発散して頂けるといいですね。欲望の世界を「突き抜ける」って、一体どんな感じなのでしょう。

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

西林克彦
『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』
光文社
2005年9月20日
IMG_1095 サラーっと読んで、わかったつもりになるというのは日常茶飯事です。深く読むことをあまりしない自分にとってはかなり自戒的な内容でした。ただ、論文のような超論理的な文章については、わかったつもりで読み進めてはいけませんね。そこは書く方も読むほうもキッチリしていかないと解釈は人によって異なるでは済まされません。昔からあった国語の読解問題に対する答えが一つしかないという違和感について、筆者が述べている見解にはとても共感しました。最後の国語教育に対する提言は、その通りだと思います。世の中には、速読というものがありますが、これはわかったつもりの典型になるのかと少し思いました。何でもかんでも熟読は難しいですし、ポイントをしっかり掴んでいればいいのでケースバイケースですが。

BARレモン・ハート 会計と監査 PART2

日本公認会計士協会(監修)
『BARレモン・ハート 会計と監査 PART2』
日本公認会計士協会出版局
2010年7月6日
IMG_1055 学生の頃からその存在は知っていましたが、絵がビミョーなので読む気になれなかった会計士協会が作成している『BARレモン・ハート』。お勧めというコメントをチラホラ目にしたので、手に取ってみました。評判通り、思っていた以上によくできていました。読みやすいし、わかりやすいです。公認会計士の宣伝として、大変結構な内容です。公認会計士を目指そうと考えている学生さんは一読をお勧めします。マンガですし、すぐ読めます。私も“監査さん”くらいわかりやすく説明してあげられるといいなぁ。

ゆるい生き方 ストレスフリーな人生を手に入れる60の習慣

本田直之
『ゆるい生き方 ストレスフリーな人生を手に入れる60の習慣』
大和書房
2010年6月5日
IMG_1046 気付けば、『レバリッジ・リーディング』や『なまけもののあなたが〜』と本田さんの本、かなり読んでいるみたいです。日々追われてストレスを抱えている方は、こんな考え方もあるんだと気軽に読んで頂くといいかもしれません。ただ、行き過ぎな部分もあります。筆者は1年の半分をハワイで過ごされるそうですが、確かにそういうゆっくりした世界に身を置くのは悪くないです。みんながピリピリしている空気が伝染する環境に四六時中さらされているとおかしくなりますからね。効率化すればするほどストレスになるというのもわかります。プライベートでは白黒をつけない、トレンドに翻弄されない、というのは大事ですね。ただ、本書にあるお土産を買わない、年賀状を書かないというのは、なんか極端な気がしましたね。まあ、私自身、お土産は買わない人ですけど。

一流たちの修業時代

野地秩嘉
『一流たちの修業時代』
光文社
2010年7月20日
IMG_1007 同日付発行の光文社新書が続きます。修業時代と言うと『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』を連想させますが、よくある敏腕経営者のインタビュー集です。この類の本は、好きでよく読みますが、エリートコースまっしぐらな方がいないのが魅力です。それぞれの方がそれぞれに苦難な道程を経て、今があるというのはとても勇気付けられます。共通点を見出すとすれば、諦めずに続けてきたことである気がします。継続は力なり。日々、芯をもって、事に当たりたいですね。

一億総ガキ社会 「成熟拒否」という病

片田珠美
『一億総ガキ社会 「成熟拒否」という病』
光文社
2010年7月20日
IMG_1007 久々に精神・心理系の本を読みました。面白かったです。「成熟拒否」を象徴する「打たれ弱さ」「他責的傾向」「依存症」という3つの問題を分析されています。端的に言えば、大人になれない人が多くなったとの分析です。「もっとできる」はずのイメージ上の自分と、「これだけでしかない」現実の自分の落差を受け入れられない、万能感の喪失、「断念」を受け入れられない人が増えているということです。「挫折に挫折を繰り返し、親の期待とも折り合いをつけながら、自らの卑小さを自覚していく過程」、「自己愛の傷つきを積み重ね、万能感を喪失していくことによって、初めて等身大の自分と向き合えるようになる」、つまりは、自らの立ち位置を認識する、“身の程を知る”ということができていないと。そのなかで依存症を取り上げ、典型的な例として「アメリカ人は朝、目覚めると興奮剤を飲んで気合を入れて出勤し、悲しみは抗うつ剤、怒りは精神安定剤で鎮め、バイアグラでセックスし、睡眠薬を飲んで寝る。今の精神状態が自然なのか、薬物で作られたものなのか分からなくなっていく」という話が挙げられていました。著者の「人があまり死なず、規範から解放された自由な社会、おカネさえあれば欲しいものが手に入る消費社会の副作用」との分析は同感です。

学者のウソ

掛谷英紀
『学者のウソ』
ソフトバンク クリエイティブ
2007年2月26日
IMG_0963 初ソフトバンク新書です。なかなか読み応えがありました。改めて、世の中詭弁だらけだなと感じました。マスコミの常套手段として、誰もが納得する理念を前面に出し、反対する者に悪人のレッテルを貼るという封じ込め論法には注意しないといけません。世の中には、そうしたものから生まれた変な制度が多いですし、既得権益を守るために仕組まれていることが少なくないです。その点については、確かに可逆性テストが判断材料として優れていると思いました。エリートの堕落についても、かなり批判されていましたが、同感です。現在の科学が科学性を取り戻すためには、非線形性をどう捉え、処理するかが重要ですね。あとがきにあるとおり、真の主題は倫理問題であったように感じました。ただ、著者の主張する言論責任保障や先見力検定が成功するかは、謎です。

ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦
『ペンギン・ハイウェイ』
角川書店
2010年5月30日
IMG_0937 久々のモリミー。森見さんの小説は、読みやすいし、自分にフィットするので好んで読んでいます。今回は、大学生ではなく小学生が主人公というところがいつもと違いますが、研究熱心な主人公と、好意を寄せる不思議な女性という登場人物は不変。小説を読むあたり、少し心に余裕が戻ってきているかなという今日この頃。楽しませてもらいました。

これからを生き抜くために大学時代にすべきこと

許光俊
『これからを生き抜くために大学時代にすべきこと』
ポプラ社
2010年3月18日
IMG_0796 大学1年生に、大学生活をどう過ごしてもらうか、どんなことを伝えればいいか、と考えていた春に購入していた本です。パラッと見ていたのですが、今回サラッと完読してみました。大学教員が言いたいことがすべて語られているような内容です。「そうだそうだ」と思いながら目を通しました。日々の指導にちょっとお疲れなこの時期に、少し勇気をもらったような気もします。本書で書かれていることくらいのことを意識して、大学生活を送ってもらいたいと願わずにはいられません。

会計HACKS!

小山龍介、山田真哉
『会計HACKS!』
東洋経済新報社
2010年4月29日
IMG_0784 〜HACKS!という本は、いっぱいありますが、その会計バージョン。多くのHACKS本を書かれている小山さんとさおだけ屋〜の山田さんの共著になっています。発想としては面白い内容が多いのですが、実用的かどうかと言われれば謎です。無理やりHACKS!な感がありました。知らぬ間に使っているラテマネーなんかの意識付けとしては、よい内容だと思います。副題の「楽しんで資産を増やすお金のコツと習慣」のとおり、本書のハックを実践すれば、お金も貯まりそうですが、現実は厳しそうですね。こういうのはその人の性格によります。

国際会計基準戦争【完結編】

磯山友幸
『国際会計基準戦争【完結編】』
日経BP社
2010年4月26日
IMG_0738 またもや1ヶ月ぶりの更新。こんなに本を読まないのは残業続きのサラリーマン生活以来。結構、余裕なっしんな日々です。さて、本書は2002年の『国際会計基準戦争』の続編です。学術書や新聞にはないドキュメンタリーなタッチがたまりません。会計基準にまつわる方々の人物像にも迫れて、読み応えがあると思います。特に簿記会計の細かい内容に立ち入るものではないので、誰にでも面白く読めると思います。特にIFRSに興味のある方には。おすすめです。

変わる会計、変わる日本経済

石川純治
『変わる会計、変わる日本経済』
日本評論社
2010年4月20日
IMG_0610 実に1カ月ぶりの更新。通勤読書がほとんど皆無状態です。石川先生の本は、会計学を知らないと少々難しいかもしれませんが、実に充実した内容です。新聞記事などのトピックをここまで会計学的に説明してくれる人は、石川先生以外にいないと思います。そして、自分の見識のなさを痛感します。現代経済に翻弄され、問題が山積している会計学。理論と政策の狭間で苦悩する会計学。いろいろと考えさせることが多いです。こんな本が書ける学者になりたいですね。会計学徒には、是非読んでもらいたい1冊です。

学びのティップス

近田政博
『学びのティップス』
玉川大学出版部
2009年11月30日
IMG_0431 玉川大学出版部の高等教育シリーズの1冊。3月に読んだティップス先生同様、大学での学びに関する本です。本書は、1年生向けに大学ではどのように学ぶのかを解説したものです。まあ、大学生がこれを読むとはあまり思えないのですが、一応心構え的な感じで読めば少しは意味があるかもしれません。個人的には、大学で勉強する前に『学問のすすめ』を読んでもらいたいと切に思います。齋藤先生の現代語訳がお勧め。

現役大学生による学問以外のススメ 実在学生21人による「学外活動」ドキュメント

「学外活動」出版プロジェクト
『現役大学生による学問以外のススメ 実在学生21人による「学外活動」ドキュメント』
辰巳出版
2007年3月10日
IMG_0363 1回生に読んでもらおうと思っている本。指定したくせに、今読了。面白かったです。何事にも本気で全力で取り組むことが大切。そして、挫折も大切です。環境や過去のせいにして動かなかったら何も変わりません。自分と違う道を歩む人を理解しない人もいますが、やらずに否定するのはよくない。環境が変われば人は変わるし、人が変われば環境も変わるものです。第一、やりたいことなんて、そう簡単に見つかるものではありません。結果を追い求めるのではなく、原因を作り続ける、これが重要。学内での勉強も学外活動も本質的には一緒です。学外で学んだことは、必ず大学に同じものがあるもんです。実践してから戻ってくると、そこには理論がある。一度社会に出て、学びなおす時の吸収力の違いはここにあると思います。これからの方には、頑張ってもらいたいです。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』
ダイヤモンド社
2009年12月3日
IMG_0298 萌え系の表紙なので、かなり躊躇いましたが購入。山田先生の『女子大生会計士事件簿』や『会計探偵クラブ』、林先生の『餃子屋とフレンチでは〜』と同じ感じで、面白く読み進められると思います。サラッと読めてしまうはずです。ドラッカーは、正直読んだことないんですけど、経営者や一般のビジネスマン、経営系の学生に限らず、誰でも何かしらの組織に属して社会生活を送っているはずなので、一読しておいて損はないと思います。内容としては、「いかに愛想がよく、助けになり、人付き合いがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である」という部分に考えさせられました。真摯さが大切。著者が日野出身で、舞台となる高校が程久保高校というのは、親近感がわきました(昔、9年ほど日野市程久保に住んでいたので)。

決算書はここだけ読め!

前川修満
『決算書はここだけ読め!』
講談社
2010年1月20日
IMG_0237 試算表から構造を理解するというのが、本書の特徴だと思います。内容は、極めてシンプル。誰でもサラッと読めると思います。最近は、随分と減ってきましたが、巷の会計本は、やはり作り手の内容が多いです。決算書を読むだけなら簿記の知識は特にいりません。読み手に必要な知識は、基本的な構造を押さえることでしょう。細目は見ず、まずは全体をパッと見で把握することが大切です。本書で興味深かったのは、「減点思考の弊害」という部分。一字一句間違いのない解答をする癖のついた日本人は、減点されないように、細心の注意を払うのが習性になっているという指摘です。英語教育がまさにそれを物語っています。ちょっとしたことでも、真っ先に自分の知識が乏しいことに意識が移り、細かい部分も気にして、懸命に知識不足を克服しよう、減点されないようにしようと意識してしまう。この習性だと、なかなか前に進めませんよね。

ご冗談でしょう、ファインマンさん(下)

R.P.ファインマン 著/大貫昌子 訳
『ご冗談でしょう、ファインマンさん(下)』
岩波書店
2000年1月14日
IMG_0225 ここのところ読書が滞っていました。1か月ぶりに読み終えたファインマンさん下巻、上巻と同様に面白く読めました。特に、カリフォルニア工科大学の卒業式式辞のカーゴ・カルト・サイエンスの話は、貴重な内容でした。“徹底的な誠実さ、己をごまかすことのない潔癖さ”、“研究をするうえで、細心の注意を払う努力を怠るなら、一時的な名声や興奮は得られても、科学者としては決して尊敬されない”。肝に銘じておく必要がありそうです。あと、専門家の報告を鵜呑みにせず、自分でちゃんと確かめるというのは、大量の情報にさらされた現代社会において、すべての人が注意すべき事柄だと思います。

民法大改正 ビジネス・生活はどう変わる?

浜辺陽一郎
『民法大改正 ビジネス・生活はどう変わる?』
日本経済新聞出版社
2010年2月16日
DSC05701 読みやすそうな本から内容を探ろうと思い購入。最初のほうの理念や方向性は面白く読めましたが、具体的な部分は興味のある部分以外、集中力が切れて、きちんと読めませんでした。これだけ平易な形で書いてあるのに、法律は読むのに一苦労。1896年制定以来、基本的な骨格を引き継いだままの民法の現代化は、確かに必要不可欠です。一般的な人が読んで、誤解しない内容にしてもらいたいものです。それにしても、商法は会社法制定、民法改正で、かなり量や重要度が低下していますね(あくまで相対的にです。重要でないわけではありません)。それにしても本を読む余裕がない。

成長するティップス先生 −授業デザインのための秘訣集

池田輝政、戸田山和久、近田政博、中井俊樹
『成長するティップス先生 −授業デザインのための秘訣集』
玉川大学出版部
2001年4月15日
DSC05700 余裕がないせいか、BookDiaryの更新が止まっている今日この頃。読んでおきましょうと送付されてきた本を早速読んでみました。表紙、タイトルともに微妙ですが(ティップス先生は、もぐらでしょうか?)、中身はとても良かったです。大学教員向けに、こんなにわかりやすくて良質の本があるなんて正直思いもしませんでした。堅苦しくなく、簡易でわかりやすい上、構成もよく、非常に洗練された内容だと思います。まるで自分の心のつぶやきを見ているようでした。授業を受ける学生も大変ですが、講義する教員もなかなか苦労が絶えません。新年度から心を新たにして臨もうと思います。

ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)

R.P.ファインマン 著/大貫昌子 訳
『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)』
岩波書店
2000年1月14日
DSC05678 ↓にお勧めとあった1冊。1965年にノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマンの自叙伝です。かなり面白く読めました。興味のあることにトコトンな姿勢は、科学者に必要不可欠の素養だとつくづく思いました。知識をきちんと理解して、実際にあてはめて使うことの少なさ。「知っていること」を知らないということが、どれだけ多いことか、考えさせられました。あと、「教える」ことは、少しでも世の中に役に立っているという心の支えというのは、共感です。ただ、社会に役立つ発明を、と言われても途方に暮れますし、進まないときには罪悪感にかられるものです。

大人げない大人になれ!

成毛眞
『大人げない大人になれ!』
ダイヤモンド社
2009年11月19日
DSC05653 MSの元社長さんです。結構、独りよがりな持論だと思いますが、これも“大人げない”の一例なのでしょうか。あまりに自由奔放過ぎるのも困りものですが、人が子供っぽさに魅力を感じるのは確かにそうだと思います。得てして、オトナはつまらない。とか言っている自分は、かなり保守的な人間です。でも、生来大人げない人です。そんな自分を抑え続けて生きています(みんなそうか)。何かを起こすためには、偶然の力を引き寄せるざっくばらんさが必要です。良いも悪いも含めて個性であり、いいとこだけの人間なんて胡散臭過ぎる。もっと自由に生きたほうがいいのかなって思いました。最後に、昔からの強く憤っているんですけど(世の中の仕組みとしてはしょうがないのですが)、他人と同じ尺度で評価されるのは、我慢なりません。

幕末維新を「本当に」動かした10人

松平定知
『幕末維新を「本当に」動かした10人』
小学館
2010年2月6日
DSC05646 「その時歴史は動いた」を模したタイトルだと、松平さん。坂本龍馬、高杉晋作、小栗上野介、近藤勇、土方歳三、大村益次郎、榎本武揚、篤姫、和宮、岡倉天心の10人のエピソードです。岡倉天心は?ですが、まさに幕末維新の魅力ある人物が並んでいます。長州人でもある私は、もちろん幕末維新に熱いです。非常に楽しく読ませて頂きました。30を目前にして、30前後の短い生涯のなかで、維新を成し遂げた志士の姿をみると勇気と共に焦りさえ感じてしまいます。いい大人が言うことではありませんが、自分は何がしたいのか、自分は何をするべきなのか、自分は何ができるのか、考えさせられます。

会計探偵クラブ

山田真哉
『会計探偵クラブ』
東洋経済新報社
2010年2月11日
DSC05628 2年ぶり?「女子大生会計士の事件簿」が「会計探偵クラブ」になって帰ってきました。今回のシリーズのテーマは税金。財務会計や管理会計のような、企業が主たる対象となるものではなく、誰もが関わっている会計領域です。私自身、税金について考えるのは確定申告のときくらいです。でも、重要過ぎるほど重要。しかし、体系的に学ぶには、あまりに膨大な領域でもあります。ちょっと税金について知りたい方には、とてもいいと思います。いつも通り、サクッと楽しく読める内容となっています(相変わらず多分にベタですが)。続編を気長に待ちます。

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」

原田曜平
『近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」』
光文社
2010年1月20日
DSC05608 若ぶるつもりはありませんが、少なからず自らの感覚にかなり近いと思いました。“新村社会”とは、よく言ったもので、確かに一昔前と違って、今の若者はものすごく日本的です。空気がすべてと言っても過言ではありません。しかも、情報通信の発達によって、巨大なネットワークに組み込まれ、コミュニケーション能力も明らかに上がっています。しかし、調べものは検索で済ませ、図書館などでの魅力的な本との出会いを失っているというのは、先日読んだ『偶然ベタな若者たち』そのものです。体験もせず、情報を鵜呑みにして、わかった気になって行動しないといった、本書で言うところの既視感は、かなり危うい気がします。あと、下流化する上流も。それにしても、PCよりも携帯で打つ方が、速いしラクというのは、かなりカルチャーショックでした。

『論語』でまともな親になる 世渡りよりも人の道

長山靖生
『『論語』でまともな親になる 世渡りよりも人の道』
光文社
2009年12月20日
DSC05583 最近、『論語』の本が多い気がします。昨今の強欲資本主義に対して、道徳を大事にしようというアンチテーゼなのでしょうか。自らを省みるのには、最適の教材です。ちょっと長いですけど、戒めにメモしておきます。「君子固より窮す。(大志を抱いて、自分のことよりも天下万民のことを思い、真実のために尽くそうとしているのだから、君子が物質的に困窮するのは、むしろ当然。)」、「子曰はく、古の学者は己の為にし、今の学者は人の為にす。(同じく道理を探求しようとしているとしても、昔の学者は、自分を高めたいという内発的な志でそれをしていたのに対して、今の学者は他人から称賛されたいという気持ちから、行っている。)」、「子曰はく、君子は言に訥にして行ひに敏ならんことを欲す。(立派な人間は、言葉は朴訥であってもよく(むしろ口数は控えめを心掛けるべき)、行動は敏捷であろうと努めるもの)」、「子曰はく、古者言をこれ出ださざるは躬の逮ばざるを恥づればなり。(古人が言葉を軽々しく用いなかったのは、自身の行動がそれに及ばないことを恥じる気持ちが強かったため)」、「子曰はく、其の之を言ふや怍ぢざれば、則ち之を為すや難し。(大言することを恥じる気持ちのない人間は(そもそも、それがいかに難しいかを慎重に検討していないので)実行するのは難しい)」、「子曰はく、君子は其の言を恥ぢて、其の行ひを過ごす。(立派な人間は、口先ばかりになりはしないかと恥じて、大言壮語や美辞麗句を控え、実際の行動のほうが少しでも言葉を上回るように努めるもの)」、「子貢君子を問ふ。子曰はく、先づ其の言を行うて而して後之に従ふ。(子貢が君子とはどんな人かを尋ねた。先生は言った。「まずその言わんとすることを実行して見せてから、後でものを言う人である」と。)」

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉

河本敏浩
『名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉』
光文社
2009年12月20日
DSC05562 下世話な本だと思っていたのですが、読んでみると結構“なるほど”でした。「ゆとり教育」とはよく言いますが、東大入試は、30年前から比較すると量も圧倒的に増え、質も圧倒的に上がっていて、ゆとり教育どころではないようです。つまりは、学力低下ではなく学力格差が問題なんだと。中学受験で地方国立大の入試より難易度の高い問題を解くという昨今、昔は浪人1年で逆転できた学力が、今や小学・中学の段階で絶望的な学力格差が広がっているようです。そこには構造的な問題があると思います。勉強=競争であり、競争のないところからは勉強が消え、競争を離脱した瞬間に勉強から離脱するという考え方。受験能力(一定の問題を効率よく解くこと)と偏差値のみにしか意識がいかず、自分で探求する学習なんてそっちのけです。受験能力の高い学生が、大学入学後に凄まじい勢いで勉強をやめていくとか。ちなみに、大学の専門教育の成績は、高校成績や入試成績に相関関係はなく、初年次教育との相関関係が強いそうです(学問は探究心、知的好奇心の賜物ですね)。受験に使わないから、この科目は勉強しないという論理に、違和感をもって高校生活を送った覚えがあります。

偶然ベタの若者たち

関沢英彦
『偶然ベタの若者たち』
亜紀書房
2010年1月10日
DSC05546 なかなか面白いタイトルだと思い購入。上手く言ったもんです。確かに、育った時代背景もあり、若い人たちは不確定なことは避け、リスクは最小限に減らす傾向があると思います。あと、医学等の発達した今日では、親は選べませんが、自分が望めば、大抵のことは実現可能で、「どうしようもない偶然」を甘受することが、なかなか難しいと思います。つまり、偶然に遇わないような生活をするとともに、偶然を受け入れづらい状態にあると。ちなみに、本書に偶然ベタの3タイプ(ぼんやりタイプ(気がつかない人)、かたくなタイプ(拒んでしまう人)、うじうじタイプ(迷い続ける人))を診断する偶然ベタ度チェックがあるのですが、私は“かたくなタイプ”でした。頑固な性格がモロに出ました。

仕事で使える!Twitter超入門

小川浩
『仕事で使える!Twitter超入門』
青春出版社
2009年10月5日
DSC05521 登録こそしているものの、全く使用していないTwitter。140文字のつぶやきにどんな可能性があるのか、興味あって読んでみました。Twitterの長所は、やはりリアルタイムとシンプルに尽きるのだと思います。まだ、儲ける仕組みは確立されていないようですが。それにしても、Facebookもまだ赤字状態なんですね。個人的に、コミュニケーションツールの選択には、気軽さ、他のコンテンツとの連携、公開性を重視したいです。基本的に、積極的に人と関わろうとしない性格なので、一方的な記述の自己満足が多いですが、提供するに値する情報を発信できるよう努力したいものです。

35歳までに身につけておくべきプロの経理力

児玉尚彦
『35歳までに身につけておくべきプロの経理力』
日本実業出版社
2009年7月1日
DSC05506 経理を仕事にしているわけではありませんが、どんなことが書いてあるのか、ちょっと興味あって読んでみました。オーソドックスな啓発や数字の見方が主な内容だと思います。経理は、IT化によって仕事内容がガラリと変わった職種の一つだと思います。日々の取引を仕訳し、試算表を作成するのは、人がやる仕事ではありません。会計仕訳の入力もアウトソーシングの的です。ルーチンワークに拘泥せず、いかに「帳簿をつけて集計する人」から「業績を確認してわかりやすく伝える人」になるか、誰にでもできる仕事ではなく、緊急でないが重要な仕事をやっていけるか、ということでしょう。何事も一朝一夕にはいきませんから、日々経験を積み重ね、実力をつけていくことが大切ですね。

脳に悪い7つの習慣

林成之
『脳に悪い7つの習慣』
幻冬舎
2009年9月30日
DSC05464 最近よく売れている本のひとつです。面白そうなので読んでみました。私、常日頃から何かを行うときには気分を大事にするのですが、いい意味でも悪い意味でも、その効用を垣間見たような気がします。損得勘定で動いてもいい方向に向かわないのは、脳科学的にもそうですが、やはり気持ちがない分だけ広がりに欠けます。「だいたいできた」で詰めが甘いという自身の欠点も「まだできていない部分」「完成するまでに残された工程」へのこだわりを突き詰める習慣をしっかりつけていきたいものです。“忙しい”の一言で片付けるには、あまりにももったいない。ひとつ、とてもいいなぁと思ったのが、「一人ひとりをえこひいき」という著者の小学校の時の先生のお話。平等に接しないといけないと思い、あまり個人的に優遇するような対応をしない私ですが、それぞれに違った形でみんなにえこひいきというのは、アリだなと思いました。

戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか

菊澤研宗
『戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか』
光文社
2009年10月20日
DSC05447 非常に面白い本でドックイヤー満載でした。お薦めです。“戦略の不条理”とは、特定の世界では極めて適合的で合理的な行動していても、別の世界では全く不適合となり淘汰されてしまう合理的不適合といった不条理な現象のことを指し、本書では、ポパーの言う、物理的世界、心理的世界、知性的世界の三次元的な世界観に基づいて、戦略論が展開されています。3つの世界の多元的損益計算には、自らの行動特性や日頃の人間観察でも非常に納得のいく内容でした。それにしても、『孫子』の完成度はやっぱ高いなぁと思わされます。

悩む力

姜尚中
『悩む力』
集英社
2008年5月11日
DSC05384 売れてるらしいし、面白そうなので読んでみました。かなり共感するところが多かったです。科学的な合理化は、人間の行為の持っていた大切な意味をどんどん奪っていくというのは、確かにそうとも言えます。あと、知ってる、知らないで頭の良し悪しを決めるのも、違う気がしますね。つまりは、「物知り」「情報通」と「知性」は違うし、「know」と「think」も「information」と「intelligence」も違います。学識、教養も大事ですが、協調性や道徳観も含めた総合的なものが知性と呼べるものでしょう。余計なことを考えている暇があったらスキルを身につけ、専門知識を身につけ、なんて言ってると、何か足りない人になりそうです。人間の知性は、「真」「善」「美」にかかわっているというのは、簿記学会のときの井尻先生の講演みたいでした。

「論語」に帰ろう

守屋淳
『「論語」に帰ろう』
平凡社
2009年10月15日
DSC05368 やっぱ古典はいいですね。そこら辺の自己啓発本とはわけが違います。偏りなくすべてが凝縮されています。儒教は宗教ではないという解説部分で、夢見物語ではない常に現実を見た『論語』の内容にグッときました。孔子の普通っぷりも面白く読めました。「人柄や品性を磨くのが学問」と考えた場合、今現在の研究者としての自分はどうだろうか。知のあり方を考えさせられます。専門を極めるのは、もちろんですが、教養を深めて人柄や品性を磨いていくことも共に重要です。

「文系・大卒・30歳以上」がクビになる 大失業時代を生き抜く発想法

深田和範
『「文系・大卒・30歳以上」がクビになる 大失業時代を生き抜く発想法』
新潮社
2009年10月20日
DSC05361 酷いタイトルですが、内容もかなりのものです。世のホワイトカラーは能無しと、コテンパンに扱き下ろされています。著者ご本人は、悪意はないとのことです。具体的なところでは、「監査部のためのコンプライアンス」、「システム部のためのシステム導入」などを例に挙げられています。まあ、確かにそうとも言えますが、やはり少々言い過ぎか、とも思います。ただ、必要以上に見栄え良く、半端ないページ数の書類は必要ないですね。コイン・ポリッシャーには、ならないように気を付けないといけません。一言でいうと、「意味のあるいい仕事をしましょう」ということですね。

就活って何だ 人事部長から学生へ

森健
『就活って何だ 人事部長から学生へ』
文藝春秋
2009年9月20日
DSC05312 いろいろな企業の人事担当者のインタビュー集です。私自身、長いこと就活中ですが、相手の視点というのは本当に大事です。そして、自分の心からの熱意も。付け焼刃的に美辞麗句を並べ立てても、相手に思いは届きません。ましてや、自分が話したいこと、自分が用意したことを延々と話すなんて、コミュニケーション無視もいいところでしょう。面接は、いかに素の自分を出せるかであり、いかに素の自分を伸ばしておくか(鍛えておくか)だと思います。と、言うは易し。私自身、面接は大の苦手です。読んでいて“金太郎飴”という単語が幾度となく出てきた気がします。マニュアル通りに淡々と面接をこなす人に魅力を感じないということの表れでしょう。何かを語れる人になることが肝要ですね。

幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る

山田昌弘、電通チームハピネス
『幸福の方程式 新しい消費のカタチを探る』
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2009年9月10日
DSC05303 久々に山田先生の本です。この不安定な世の中で、安定してそこそこの暮らしができればいいと願うのは私だけではないと思います。ロスジェネ世代の幸福の形って、そんなとこだったりするのかなぁと思います。あと、明らかに志向が細分化されていて、クルマにせよ服にせよ、「○○したい人」、「○○できさえすればいい人」の差が大きいのも若い人たちの特徴だと思います。“電車では座ることが大きな幸福だと思っている”のは、内発的な動機ではなく動かされているだけというのには、ハッとさせられました。空いた座席が希少資源だから座らないと損と奪い合うだけで、確かに座らなきゃならないわけでもないですね。立って景色を眺めたいときもあるかもしれないわけで。

図で考えるとすべてまとまる

村井瑞枝
『図で考えるとすべてまとまる』
クロスメディア・パブリッシング
2009年9月11日
DSC05291 私もタイトルの通りだと思います。頭で考えても始まりません。なんでも図にしましょう。解決の糸口が必ず見つかるはずです。本書は、図のパターンから、資料の作成のポイントまで、ビジネスパーソンが身につけておくべき基本が、わかりやすく説明されています。仕事でドキュメントのチェックをしてもらっていたときの話がそのまんま載っているような内容でした。デキる人は、ここに書いてあることは必ずできていると思います。

宵山万華鏡

森見登美彦
『宵山万華鏡』
集英社
2009年7月10日
DSC05258 多忙につき現実逃避。久々に小説です。しかも、森見さん。いつも通り、京都を舞台に繰り広げられるファンタジーな物語でした。鯉やらゲリラ演劇やら、相変わらずのヘンテコな登場人物とお馴染みの内容です。森見さんの描く世界は、私にとてもフィットしているのでよいです。

成功したければ前頭葉を鍛えなさい

篠原菊紀
『成功したければ前頭葉を鍛えなさい』
株式会社アスコム
2009年10月13日
DSC05145 本書内の“脳のクセチェック”というやつで、脳のクセAB型「理想の高い完璧主義」タイプという結果。実際の血液型であるO型度が一番低かったです。さて、本書は、脳の使い方、鍛え方が書かれてあります。PC、ネット、携帯などのメディア使用時には、脳活動は低下するそうで、美しくノートをとっている時、ただ写している時、PCを使用したノート書きの脳活動を見ると、一目瞭然で美しくノート→書き写し→PCの順となっているのには、「へぇー」でした。PCは、さも脳を活動させないのかと。プロローグが17ページというのは、なかなかの長さです。あと、誤字脱字が目立ったような…。

頭がいい人の「すごいひと言」

田村仁
『頭がいい人の「すごいひと言」』
秀和システム
2009年1月26日
DSC05137 秀和システムっていうとIT系書籍やビジネス系解説本を連想しますが、こういう本も出しているのですね。本書はコミュニケーションを円滑に行うための一言を紹介するという内容。“相手にマイナスな言葉をかけないように”が基本コンセプトだと思います。個人的には、ばつの悪い受け答えをするときってのは、緊張してるとか、テンションが低いときとか、自分の精神状態に左右されているように思います。単純に相性が悪いということも多々ありますが。。。癖でもある回りくどい言動は、なおしたいものです。本書は、挨拶や雑談の重要性にも触れています。雑談は良くも悪くもコミュニケーションの潤滑油であることは確かです。

山田商店街

山田マチ
『山田商店街』
幻冬舎
2009年3月30日
DSC05133 オビのコメントが賢太郎さんだったので買いました。アシスタントの方の本だそうですが、ラーメンズワールドと言えます。得られるものは何もないでしょうが、ラーメンズがお好きな方にはお薦めです。おもしろいよ

最高学府はバカだらけ 全入時代の大学「崖っぷち」事情

石渡嶺司
『最高学府はバカだらけ 全入時代の大学「崖っぷち」事情』
光文社
2007年9月20日
DSC05113 “とりあえず大学”という感覚で大学進学率が高まり、入学者が減少するなかで大学は増え続け、限界にきている大学行政。かなり下世話な本ですが、ついつい手に取ってしまいました。一部の例を一般化する批判合戦は、世の中の常ですが、的を射ていることもあるわけで。面倒見もよく素晴らしい教職員もいらっしゃいますが、やはり全体としては官僚的で腐った部分が目立つ世界です。大学パンフの数字のカラクリは、ホントに酷いと常日頃から感じます。就職率が全国平均を下回っている大学・短大を見たことがないですし…。それにしても、通常の講義やゼミ、学生の相談に自分の研究、学会の準備にカリキュラムやら入試やら各種委員会、休日はオープンキャンパスに高校営業、大学教員も大変なご時世です。

12日間速習プログラム決算書トレーニング

田中靖浩
『12日間速習プログラム決算書トレーニング』
日本経済新聞出版社
2009年8月25日
DSC05108 いくつか会計本を出版されているようですが、ちょうど3年前に著者の本を読んでいるようです。巷に会計本はホントに多くありますが、そのなかでは読みやすくてわかり易い本だと思います。数字の見方がわからない方には、特にお奨めです。B/SやP/L、C/Fのイメージがつくはずです。12日間となっていますが、1時間で読める量です。今度の経営分析の授業のヒントにもなりました。

人生が開ける禅の言葉

高田明和
『人生が開ける禅の言葉』
PHP研究所
2008年12月29日
DSC05104 本書は、身近な悩みをもとに、その対処を示されていて、とても読みやすい内容でした。苦渋に満ちた世の中で、自分を見失わないためにも悟りを得たいものです。「実力がつかないうちに人を救おうなどとすると、その争いに巻き込まれ、自分も一緒に沈んでしまう」、「体を動かしている最中に悩むことはできない」など、とても頷けました。“自分に一体何ができるか”なんて考えてしまうこともありますが、ものごとを客観的に見て判断したり、感情にとらわれずに善悪を判断できないうちは、人を救うことなどできず、かえってその人を不幸にするだけでなく、自分も不幸になるのは確かにその通りです。また、ちょっと時間があって一人で家にいると、いろいろ考えてぐるぐるしてしまうことはよくありますが、得てしていい方向にはいきません。体を動かすことで、そういう悪い流れを絶つのは良い方法だと思います。

会計心得

金児昭
『会計心得』
日本経済新聞社
2004年11月1日
DSC05019 こないだのSAP IFRS Conferenceで金児さんご本人から参加者全員に配られたものです。ご講演もとても面白かったので、早速読んでみました。もちろん実務の方ですから、実務(経理・財務)における会計のお話です。常にコスト意識を持つことが大切ということが語られています。基本的に、実務家は深い理論について知る必要はないというスタンスだと思うのですが、その逆は通じないよな・・・と実務系のものに接すると感じるとともに、どこまで実務を意識して研究しているかを考えさせられます。

論より詭弁 反論理的思考のすすめ

香西秀信
『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』
光文社
2007年2月20日
DSC04979 少々ひねくれていますが、なかなか面白い内容だと思いました。完全な論理的な議論というのは、存在しないのではないかというくらい、日常的な会話や議論のなかでは、相手との人間関係や肩書き、議論のすり替えのような、うまく言い包められているようなもの(信じさせられているようなもの)が少なくないです。詭弁の代表格として「人に訴える議論」について5つの型(「悪罵」型、「事情」型、「偏向」型、「お前も同じ」型、「源泉汚染」型)が紹介されていますが、なかなか興味深いものがあります。相手の議論にではなく、相手そのものに対して関係のない攻撃を仕掛けるなんてのは、メディアの常套手段ですよね。

キラークエスチョン 会話は「何を聞くか」で決まる

山田玲司
『キラークエスチョン 会話は「何を聞くか」で決まる』
光文社
2009年8月20日
DSC04930 人と話すのは元来大の苦手です。聞きたいことがあっても、正直に感じたことでも、いろいろと考えてしまって声を掛けられない、これが日常です。億劫な人間ですから。さて、本書は26のキラークエスチョンが紹介されています。何気ないものばかりですが、唐突過ぎる質問は違和感を覚えます。あと、会話って相手の心理が自然と伝わるものですよね。聞く気がなかったり、テキトーだったりってのは、恐ろしいほどバレるものです。本のなかで「話ができないのは、話ができないと思い込んでいるその「心」に問題があるだけ」とありますが、そうだと思います。自分から壁をつくりがちです。

会計学はこう考える

友岡賛
『会計学はこう考える』
筑摩書房
2009年8月10日
DSC04904 会計というのは、何かとよくわからない、難しいイメージがあり、会計学って何をしているの?という素朴な疑問が付き纏います。本書は、そこら辺の会計How to本ではなく、会計学とはどういう学問なのかというコンセプトの本です。一般の方向けということですが、少しハードルが高い気もします。会計学を学ぶ学生には、本書や石川先生の『変貌する現代会計』なんかを読んで、しっかり会計学について考えてみて欲しいなと思います。背表紙に「会計にもいろいろ「問題」がある」とあります。いろいろあるんです(笑)

今度こそ苦手な数字が克服できる ザックリ会計力

西山昌彦
『今度こそ苦手な数字が克服できる ザックリ会計力』
幻冬舎
2009年7月28日
DSC04871 背表紙に「だいたいで、ええやん。」なんて書いてあります。会計本というよりは、数字に関して全体を俯瞰する力を養う内容と言えそうです。決算書をつぶさに詳細まで見る人(または見れる人)なんて確かに存在しません。あの大量な情報をすべて読みこなすというのは、不可能に近いとさえ言えます。だからこそ、全体像をザックリ見る俯瞰力、そして詳細について仮説検証を繰り返すことが大切となります。そして、それは会計だけに言えることではなく一般的なセオリーです。会計本挫折者の方や会計入門として本書を読まれるのもよいですが、本書は会計数値に対する接し方、考え方を説明されているだけなので、本書を読み終わっても分析はできないと思います。詳細を必要に応じて、もうちょっと詳しい本で学んでいく必要がありますね。
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