一九八四年

ジョージ・オーウェル、高橋和久 訳
『一九八四年』
早川書房
2012年7月25日(電子版)
20170720 本に餓えていただけかもしれませんが、おもしろかったです。社会が変わりつつある今に、是非読んで欲しい1冊ですね。人間の社会・心理を小説として、よく表現されているように思いました。究極的には、この小説の世界で行われていることが、ゆる〜く行われているのが実社会なのでしょう。そうだよねぇという部分が多くて、マイノート(kindleの)が増えました。この小説、1949年に1984年の未来を描いた作品というのだから、びっくりです。書きたいことは色々あるのですが、当たり障りのないところでは「比較の基準を持たない限り、事実に気付き得ない」ということです。人の思考を操るというのは、罪だと思いますね。私はいつ何時も自由でありたい。「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」こわー

貞観政要

湯浅邦弘
『ビギナーズ・クラシック 中国の古典 貞観政要』
KADOKAWA
2017年1月25日(電子版)
20170208 マネジメント・リーダーシップは帝王学にあり?と思って、手に取ってみました。大変良かったです。中国の古典は、実に素晴らしい。『論語』もいいですけど、個人的には『菜根譚』『孫子』『中庸』が心に残っている古典。『貞観政要』はこれに加えたいと思いますね。内容は十思九徳、これに尽きるのではないかと。君主となる者には、十思が大事だと思いますが、私は九徳を重んじたいですね。「寛容であってしかも厳しい。柔和であってしかもしまりがある。慎ましやかでしかも物事の処理がてきぱきしている。物事に明敏でしかも敬いの心がある。従順でしかも果断。正直でしかも温和。おおまかでしかも清廉。剛毅でしかも思慮深い。実行力に富みしかも正義にはずれない。」それはそれで讒言には気を付けなければなりません。

ビジネスエリートの新論語

司馬遼太郎
『ビジネスエリートの新論語』
文春新書
2016年12月20日(電子版)
20170206 社会人になって早12年、うちサラリーマン生活も10年と立派にサラリーマンになったような気がします。本書は、昭和30年に司馬遼太郎が福田定一(本名)で刊行した『名言随筆サラリーマン ユーモア新論語』という本が元となった復刊本です。60年以上前の内容ですが、今でも読めます。大江広元から始まり、義務感から精一杯の努力を生涯続けようとするサラリーマンの姿勢を「義務を果たすことに楽しみを見出すという形」と述べています。風刺も効いたなかなか含蓄のあるサラリーマン道となっています。最後の方は、司馬遼太郎の話がメインになっています。サラリーマンの息抜き、暇つぶしにはいいかもしれません。

統計学が最強の学問である

西内啓
『統計学が最強の学問である』
ダイヤモンド社
2013年1月28日(電子版)
20170122 数年前に流行った本ですよね。Kindleに落として、ずーっと放置していました。最近は、統計も触るようになったので、出張の移動時間に読んでみました。データマイニング、機械学習、人工知能、自然言語処理、ビジネスインテリジェンス、競合分析、統計解析といった統計学を使用した分野は、今かなりアツいです。身につけておいた方がよい知識であることは確かです。難解なものではなく、端的に言ってしまえば、「十分なデータ」をもとに「適切な比較」をするだけで、経験と勘を超える真実を掴むことができる手法です。本書では、前半の方にその有用性、後半は実際の分析の基礎について説明されています。少し統計を囓ってから読むと読みやすいと思います。なお、一番驚いたのは、著者が自分より若い方だったこと。

変身

フランツ・カフカ
『変身』
新潮社
2014年10月31日(電子版)
kafka この間、本を読める状態になかったため、気晴らしにすぐ読める本として「カフカでも読んでみたら。変身とか」という一言で手に取りました。帰省の移動の際に読みました。初カフカです。カフカについて知識がなかったので、全くイメージつかなかったのですが、確かに変身していました。前に、星新一を勧められて読みましたが、それと同じ感じだったというのが素直な感想。また機会があれば、読んでみようと思います。

なぜあなたは論文が書けないのか?

佐藤雅昭
『なぜあなたは論文が書けないのか?』
メディカルレビュー社
2016年7月15日
Z 姉妹書の『なぜあなたは研究が進まないのか?』と同時に読み始めたのですが、この間手に取ることもなく…。現在、〆切が近付いている論文が2本(まいった)。これから書き上げるに際して、今読んでおいた方がいいかと思い、移動の際に完読。基本的な視点を押さえておくには良書かと思います。医学系論文かつ英語論文が前提とはなっているものの、基本構成は同じなので、大変ためになりました。何のために書いているのかという根本的なところから、技術的な内容まで、コンパクトに読める分量ですし、お勧めです。さあ、限られた時間とはいえ、ベストを尽くそう。

違和感の正体

先崎彰容
『違和感の正体』
新潮社
2016年6月17日(電子版)
59 世の中に違和感を感じませんでしょうか。私は感じます。ということで、ダウンロードしたのが本書。ものさし不在の世の中で、ルサンチマンが渦巻く今日この頃。人の数だけ正義があるのはわかるけど、自分自身を絶対正義と捉え、反する意見は悪だと言うのは如何なものか。そういう言動は、手段が目的となっていることもしばしばです。他人同士が折り合いをつけながら、新しい秩序を作り上げることは大事です。さて、何が善で何が悪か、世間で行われている言論を論理的に捉えるとどうなるのか、これらをしっかり見つめ直している内容なんだと思います(筆者の視点で)。結論として、「違和感の正体」を社会全体からの「微笑」が奪われつつあることだと締められています。今の社会は、窮屈だということでしょうか。

なぜあなたの研究は進まないのか?

佐藤雅昭
『なぜあなたの研究は進まないのか?』
メディカルレビュー社
2016年7月15日
IMG_6748 振り返って考えておきたいと思い、姉妹書の『なぜあなたは論文が書けないのか?』とともに購入。同時進行で読み進めていたものの、こちらの方が面白くて先に完読。読んでいるとモチベーションが上がってくるので、読みながら研究していました。視点もしっかりしてくるし、なかなかよかったです。印象的だったのは、「小さな疑問に対する研究をいちいちしていたのでは、とても時間が足りない。もっと本質に迫る研究をすべきである(by利根川博士)」「研究のための研究をしていないか」「研究に対する「立ち位置」を明確にする」「未来はマイノリティが創り、過去と現在はマジョリティが維持する」といった部分でした。何はともあれ、睡眠(健康(心身ともに))の重要性、周りへの感謝の気持ちを忘れないことが肝要です。

情報参謀

小口日出彦
『情報参謀』
講談社
2016年8月1日(電子版)
20160830 かなり面白かったです。確かなデータと確かな分析、これに勝るものはありません。ビックデータの時代とはよく言われますが、世の中の膨大な情報を的確に処理して、課題に取り組むことは必要なスキルだと思います。前例踏襲であるとか、勘で物事にあたるのは、あまり望ましいことではないでしょう。大学にも宣伝のうまい大学があります。まさに情報参謀による情勢分析や話題の作り方が、データに基づいた緻密な戦略に基づいている背景があるのでしょう。これから圧倒的な情報処理で、AIをはじめ、世の中のあり方が変化していくことになります。変える方の立場で、変化を楽しみたいものです。

走れメロス

太宰治
『走れメロス』
新潮社
1967年7月10日
IMG_6355 また太宰に手を出してしまった。そんな感想です。大学が夏休みに入って、本屋に行ける時間が取れたことで、手に取ってしまいました。今回は、初期1編、中期8編ということで、これまでの後期作とはまた違った感じでした。「駆け込み訴え」は特によかったです。「女生徒」は女性が主人公だったせいもあるのか、『斜陽』のかず子を思い出しました。全体として相変わらず、自身の自叙伝的な背景と内容ですね。そして、個人的な印象として中二要素が強いというのも相変わらずでした。余裕のある時に、また読みます。

ミライの授業

瀧本哲史
『ミライの授業』
講談社
2016年6月30日20160815 瀧本氏の本は4年ぶり。twitter(@ttakimoto)での宣伝に負けて購入。14歳向けの「未来をつくる5つの法則」というタイトルでの講義を書籍化したものです。5つのルールのうち、個人的に特に重要だと思うのは「世界を変える旅は違和感からはじまる」「一行のルールが世界を変える」の2つ、その次に「ミライは逆風の向こうにある」、そして「すべての冒険には影の主役がいる」といったところでしょうか。より抽象的なものの方が、本質を突いていると思います。内容は、19名の偉人の話がメインです。私が若い人たちに対して伝えるならば、思い込みや常識を疑う、行動規範よりも基本原則を守る、そして世代交代だけが世の中を変える、という点になります。「未来をつくる」、なんとワクワクする言葉なのでしょう。

ノックの音が

星新一
『ノックの音が』
新潮社
1985年9月25日
IMG_6103 「たまには星新一とか読んでみたらどう」という勧めで手に取りました。ショートショートというジャンルでとても読みやすくて、ものの一瞬で完読。気分転換にはいいなと思いました。小説を読まない私も最近は朝夕刊の連載小説を読むようになりましたが、そんな気楽さがあります。「ノックの音がした。」から始まる15編の短編で構成されています。サスペンスなんて全く読んだことがないのですが、おそらく本書のようなものをいうのでしょう。一種、ホラーみたいでしたが。云々かんぬんで、最後に「キャー」みたいな。星新一はSF作家らしいので機会があれば、そっちも読んでみようと思います。SFも読んだことがない。

イライラしない本

齋藤孝
『イライラしない本』
幻冬舎
2016年1月(電子版)
20160728 副題は『ネガティブ感情の整理方法』。ストレスフルな日々を過ごす方々には、よい指南書なのではないでしょうか。インターネットやSNSによる感情の揺れやザワつき、心の不安定さは、現代人なら皆が持っているネガティブ感情だと思います。不満や羨み、後ろめたさは、ストレスを生みます。本書を通して、「来るものは拒まず、去るものは追わず」を勧められていますが、「君子の交わりは淡きこと水のごとし」が大事ですね。あと、未来への不安と過去への後悔を断ち切って、今この瞬間、「今やるべきこと」に集中することです。その他、カタルシスとして、愚痴る、歌う、芸術に触れることを勧められていました。そして個人的には大の苦手な「ムダ話」、雑談力には心の中のちょっとしたガス抜きができる、「意味のないおしゃべり」には大きな意味があるとのことでした(耳が痛い)。

自由のジレンマを解く

松尾匠
『自由のジレンマを解く』
PHP研究所
2016年3月10日(電子版)
20160625 「グローバル時代に守るべき価値観とは何か」という副題の本を、英国がEU離脱の国民投票を決めた昨日に読み終えました。読み応えがあって、なかなか面白かったです。前半は、固定的人間関係におけるシステムと流動的人間関係におけるシステムとの比較で、考え方や必要となるもの、振る舞い等が全く異なるという話で、後半からは、リベラル派とコミュニタリアンの矛盾を題材にした話を皮切りに「自由」について考える内容(特にマルクスを引き合いに出されています)になっています。自分自身の思想・信念の再確認という意味で、大変意味のある読書でした。ブックマークも多く、書きたいことは多くあるのですが多過ぎるので省略するとして、この時代に生きる我々にとって示唆に富む内容だと思います。話は少し変わりますが、不寛容社会と言われている昨今、多数派の思想や感情による抑圧がいかに恐ろしいかというのは、時代に学ぶべきでしょうね。

なぜ疑似科学が社会を動かすのか

石川幹人
『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』
PHP研究所
2016年3月3日(電子版)
20160520 同じ流れでiBooksからの1冊。世の中、実しやかに囁かれていることが全く真実とかけ離れているということが多過ぎます。本書に「根も葉もないことはふつう誰も信じない」の前提の方が間違っていて、根も葉もなくとも信じたいことがよくあるというのは言い得て妙です。論理的な説明よりも、感情に訴える物語のほうが人々を操作しやすいのは、まさにその通り。科学は反証可能性がないと成り立たないのは言うまでもないのですが、なぜ疑似科学がここまで世の中に影響を与えているのでしょう。論理的思考が鍛えられていると、疑似科学の類に騙されずに済むかもしれないのですが、なかなか人間というのはそこが苦手なようです。本書では、疑似科学の例を交えて、科学とは何か、疑似科学を信じてしまうのはなぜかについて書かれてあります。「それも神の思し召し」と万能理論様々では、騙されてしまいます。

自分を責めずにはいられない人

片田珠美
『自分を責めずにはいられない人』
PHP研究所
2015年11月25日(電子版)
20160422 電子書籍でオススメから選択しているため、同じ著者が続く傾向にあるようです。さて、人間生きていれば、落ち込むこともありますが、日々「自分はダメだ」と思っていては人生楽しめません。また、そんな罪悪感を掻き立てることで人を支配しようとする人も多くいます。そんな罪悪感は、抑え込もうとしてもどこかで表面化するので、受け入れることが大事で、無視したり排除したりするのではなく、さらに罪悪感に限らず、すべての感情を自身についての重要な情報を与えてくれるものとして捉えて、対応しようというのが本書の内容だったように思います。こうでなければならないといった気持ちのある人は、要注意です。割り切りは大事です。

インド歴史紀行

アジア旅行研究所
『インド歴史紀行』
目白書房
2012年4月1日(iOSアプリ)
20160309 インドに行くことにしたので、この間、時間を見つけてはYouTube、GooglePlay、huluなどで映画、神話系の動画、世界遺産、旅猿とインドに関するものを観まくってきたものの一つです。KindleでもiBooksでもない「インド歴史紀行」という名のiOSアプリで、アプリの中身は電子書籍でした。全17章、コンパクトにインドの歴史が書かれてあります。高校時代に世界史でやりましたが、ほとんど覚えていないです。ただ、最初に書いた通り、ここのところ、いろいろと観たので、ヒンドゥー教や世界遺産には詳しくなりました。その部分的な知識をもとに読んだので、知識の整理には役に立ちました(インダス文明→アーリア人によるインド文化(バラモン・ヒンドゥー&仏教)→イスラム→ヨーロッパ支配といった流れを理解する上では)。

みずうみ

川端康成
『みずうみ』
新潮社
1960年12月25日
IMG_1337 『文豪はみんな、うつ』を読んで、川端康成が気になって購入。iBooksで購入後も改めて文庫本を購入(やっぱり本は紙が好き)。大昔に読んだ『伊豆の踊子』の記憶は全くないものの、川端文学の理解者たちが、困惑し嫌悪したのも大変頷けるものでした。この偏愛傾向は、本人の体験なくしては表現できないものだと思います。それはさて置き、「意識の流れ」を表現した作品として、とても興味深い内容です。まるで夢の中のように、次から次へと唐突かつ無作為に流れていく主人公の意識の変化がおもしろく、まとまりのない断片の塊が、自然と全体を構成していく感じがなんとも言えません。

男尊女卑という病

片田珠美
『男尊女卑という病』
幻冬舎
2015年8月(電子版)
48 iBooksでの幻冬舎新書が続きます。本書の最後に「男性に女心がわからないのはなぜか。それは男性に生まれたからにほかならない。逆もまたしかり。」とあるのですが、この性差のある男女が同じ存在になりえないという基本認識を持った上でのバランス感覚が肝要だと思います。心理学的に見て、男女の精神構造を分析している部分は面白かったです。日本社会は、家制度の名残で今でも男性優位の風習が非常に強く残っていますが、少しずつ社会は変わり始めているという感覚を日々覚えます(男女問題に限らずですが)。おそらく世代が変われば文化は変わるでしょう。あとは、過度なバッシングや男女に限らず「自慢賞賛型」「特権意識型」「操作支配型」みたいに性格を拗らせてしまうといったことをどう克服するかですね。「過去と他人は変えられない」とは言い得て妙です。

文豪はみんな、うつ

岩波明
『文豪はみんな、うつ』
幻冬舎
2015年2月(電子版)
11 読み始めて気付いたのですが、『他人を非難してばかりいる人たち』と同じ著者のようです。夏目漱石、有島武郎、芥川龍之介、島田清次郎、宮沢賢治、中原中也、島崎藤村、太宰治、谷崎潤一郎、川端康成といった文豪たちを精神疾患という視点で批評されています。誰しもが性格的にどこかが歪んでいるものですが、並外れた能力を発揮する人物というのは、大抵この歪み具合が激しいと思っています。ここで紹介されている文豪たちも何かしらの執着性格が起因で精神疾患に罹患していたということになるでしょうか。また、その本人の精神状態やその経験が、作品に強く投影されているのも頷けました。感受性が豊かなことは、なかなか生きづらいものだと感じさせられます。立派な鈍感力を持った私には、縁遠い話なのかもしれません。あと、不倫や心中といった、世間的なタブーがこれほど自由に繰り広げられる文壇というか、時代に結構驚かされます。

人生を面白くする 本物の教養

出口治明
『人生を面白くする 本物の教養』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
20160123 ↓と同時に購入。共感するところが多かったので、電子書籍でなかったらドックイヤーだらけになっていたかもしれません。出口さんの合理主義、実質主義は、基本的に私の思考回路と重なります。自分が腑に落ちている「数字、ファクト、ロジック」と照らし合わせながら考えて判断しますし、相手がどういう数字を用い、どういうファクトを重視し、どういうロジックを積み上げているかを重視します。まさに「文は人なり」で「てにをは」ができていない人は、筋の通った思考ができていないので、信用しません。話は変わりますが、「あっ、そうか!」という原体験って大事ですよね。

他人を非難してばかりいる人たち

岩波明
『他人を非難してばかりいる人たち』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
01 久々にiBooksを開いて購入。日々、SNSやTVでは不寛容な非難(バッシング)が繰り返されています。世知辛いものです。なぜ、このように排他的で不寛容なのか、日本独自の空気があるように思います。あと、日々感じるのは、妬みです。「人の不幸は蜜の味」とは言ったもので、人間とはつくづく厄介なものです。本書では、いくつかの事例をもとに、その構造を解説しています。個人的に関心が高かったのは、「規範」のない日本社会の独特な文化構造です。良くも悪くも、右へ倣えな風土は国民性なのでしょうか。

ほめると子どもはダメになる

榎本博明
『ほめると子どもはダメになる』
新潮社
2015年12月20日
IMG_0795 帰省の際、移動用に購入。結論から言えば、文化の文脈で「褒めること」を考えないとうまくいかないという話でした。最近の傾向で一番ダメなのは、ネガティブなことを無理やり人為的にポジティブに変換することでしょう。挫折を繰り返し、叱られることで鍛えられるというは、成長過程において外せない事柄であって、避けることはできません。あと、心理学の研究結果として、ポジティブ思考を吹き込むより、ネガティブ思考を吹き込んだ方が成績は上がるとか、能力よりも努力を褒めるといいらしいです。クレームに萎縮し、サービス産業化してしまっている大学をはじめとする教育業界についても苦言を呈していました。褒めすぎるのもダメだし、叱責し過ぎるのもひねくれてしまう。バランスをとるのは至難の技です。

「書斎の会計学」は通用するか

田中弘
『「書斎の会計学」は通用するか』
税務経理協会
2015年10月1日
IMG_0401 2年半ぶりの田中先生の本です。例によって、『税経通信』の連載を書籍化したものです。そして、言わずと知れたIFRS&時価会計批判が綴られています。これまで出版されたすべてに目を通していますが、やはり読みやすくて面白い、田中先生の本はこれに尽きます。今回は、あわせて研究会で田中先生ご本人から、本書の話を聞けたのでさらによかったです。IFRSの出自から、その背景にある国際政治経済社会の動向、従来の会計観とは全く異なる論理を理解するには良書だと思います。ただ、批判精神旺盛なので、自分なりに客観性を持って読むことも大事です。制度会計に対して、疑問をお持ちの際は、是非手に取ることをお勧めします。

なぜ日本は若者に冷酷なのか

山田昌弘
『なぜ日本は若者に冷酷なのか』
東洋経済新報社
2014年1月1日(電子版)
07 山田先生の本は久しぶりです。10年くらい前に「パラサイト・シングル」や「格差社会」という言葉が流行った頃によく読んでいました。当時の状況から2015年の現在は、さらに将来的な展望が厳しい時代になっていると言えます。本書は、雇用や社会保障において、中高年に手厚く、若者が冷遇されている現状への警笛が詰め込まれていると言えるでしょう。変える必要はわかっているけれど、一向に変わらない制度や風土が、今後どんどん我々やその下の世代に大きな重しとなって顕在化していくことは明らかです。流行り廃りはこれほど猛スピードで変化しているのに、昔ながらの正社員像や新卒一括採用、家族観といったいわゆる日本的価値観は、なかなか変わらないものですね。

斜陽

太宰治
『斜陽』
新潮社
1950年11月20日
IMG_9755 『斜陽』にしました。薄かったので。女性が主人公ということで↓の2作と趣が違うように感じました。相変わらずの厨二感もよかったです。「かず子べったり」や「かず子がっかり」といった戯けたやりとりもよかったです。「ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ」は一度家でやってみようと思います。明るさにのなかにある暗さ、暗さののなかにある明るさ、世間という社会に仮面を被りながら生きる人間の屈折した様や生まれに付き纏うアイデンティティーといった内面に迫る内容は、太宰作品の魅力ですね。また機会があれば読みます。

人間失格

太宰治
『人間失格』
新潮社
1952年10月30日
IMG_9610 少々かぶれているようです。『人間失格』を購入。↓をさらに晒け出した人間の内面に迫る自叙伝的内容は、文学青年を陶酔させ、熱狂させるのも頷けます。解説にもあるように「自分ひとりに話しかけられているような心の秘密を打ち明けられているような気持になり、太宰に特別の親近感をおぼえる。そして太宰治は自分と同じだ、自分だけが太宰の真の理解者だという同志感を持つ。」ちょっと厨二入っているようにも感じ、若くして自死した太宰への当時の熱狂ぶりは、尾崎豊を連想させるようでもありました。とは言え、この純粋さゆえに転落してく様は趣深いもので、大変魅力ある作品でした。次は何を読もう。

ヴィヨンの妻

太宰治
『ヴィヨンの妻』
新潮社
1950年12月20日
IMG_9545 暗鬱な心を扱う文学といえば太宰かな、ということで購入。短編小説8本で薄かったので本書をチョイス。『放哉と山頭火』の廃人っぷりに続く素晴らしきダメ夫の数々で大変面白かったです。ダメな知識人というのに、どうも魅力を感じてしまいます。現実的には全く関わりたくありませんが。個人的には、それぞれの小説の最後の下りが気に入っています。太宰治、気に入りました。かぶれない程度に読んでいこう。

放哉と山頭火

渡辺利夫
『放哉と山頭火 死を生きる』
筑摩書房
2015年8月25日
IMG_9155 ふと新聞の書評で見かけて購入。思いのほか面白く読みました。俳人ならぬ廃人と言われる自由律俳句の巨星である放哉と山頭火の酒浸りのダメダメ度と昇華された自由律俳句が人間の深い業を儚くも美しく表現していることに心を揺さぶられずにはいられない、といった感じでした。こういった人間に住まう暗鬱な心を扱う文学に少し興味を持った次第です。こんな破滅的な人生はまっぴらだとは思いながらも、どこか羨ましく感じるところがまた魅力なのでしょう。辞世の句がとてもいいです。「春の山のうしろから烟が出だした(放哉)」「もりもりもりあがる雲へ歩む(山頭火)」

だから日本はズレている

古市憲寿
『だから日本はズレている』
新潮社
2014年10月17日(電子版)
IMG_9062 古市君の本を手に取るのは初めてだと思います(たぶん)。本というよりブログを読む感覚(内容も含め)でした。雑誌記事の寄せ集めのようなので、そんなもんなのでしょう。豊かで平和な日本では、結局はみんなそこそこ幸せに生きていることが、先送りというこの国を蝕む根底にあるのでしょう“おじさん”も“若者”も総じて他人任せです。監視社会の有用性については、個人的な嫌悪感さえ克服すれば、それなりに世の中がスマートになるのではないかと思います。人間には無理かもしれませんが。イニシエーション・セレモニーなる入社式、“社会人”なる謎の存在に対して、脱サラ・フリーター・フリーランスという自由な生き方は、自由に生活したいというみんなの憧れによる普遍的なものなのでしょう。コンサマトリーな生き方が進んでいくかはわかりませんが、静かな革命が世の中を変えていくのだと思います。本を読んでいて、一極集中もありだなと思えてくるところがまた、平和ボケなのかもしれません。最後に、「学問」が人の上に人を造るというのは、福沢諭吉の真意であり、間違っていないと思います。

会計研究入門

鈴木義夫、千葉修身
『会計研究入門 “会計はお化けだ!”』
森山書店
2015年3月
IMG_8769 雑誌『會計』の書評に目が止まり、副題も気になって購入してみました。読みやすく分量も少なかったので、すぐに読了。大変おもしろかったです。著者は、「存在していないモノをあたかもそこにあるかのように見せかける」機能をもって会計をお化けと呼んでいます。そして、現代において「会計は、マネーによるマネーそれ自体の獲得・運用に資する当該情報の産出手段の一つとして重要な役割を演じている」と批判的に論じられています。それは、「現代の資本主義経済が、本来一体となって動くべきモノとマネーとが分離して、マネーが実体的裏付けのない、国家による「信認」だけが頼りの段階に立ち至った」そして「そうしたいわばニセ物が本物であるかのような顔をして跋扈している時代」ということであり、「精神のない専門人、心情のない享楽人(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より)のすること」と喝破しています。50年以上にわたり会計研究に携われてきた方の言葉は非常に明快です。

帳簿の世界史

ジェイコブ・ソール著、村井章子訳
『帳簿の世界史』
文藝春秋
2015年4月10日
IMG_8712 著者に敬意を表したい素晴らしい本でした。3月に読んだ『バランスシートで読みとく世界経済史』に続いて、会計に関する良書が続きますね。本書は、会計責任を果たすことの難しさを700年の財務会計の歴史を紐解きながら明らかにしていきます。一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計である、繁栄する社会では、よい会計慣行や商業文化が根付いていただけでなく、それを支える健全な倫理観や文化の枠組みが存在し、会計を無視したり操作したり怠ったりしがちな人間の性癖をうまく抑えていたということが非常に単純明快に語られています。度重なる金融危機に脅かされる現代は、会計の責任の歴史を振り返るのにふさわしい時期ではないかという著者の問いにも頷けます。会計は職業倫理の基本要素の一つです。「共和国に必要なのは、教育水準が高く、己を律することができ、高い職業倫理を備えた証人である、そうした証人は事業経営においても政府においても役に立つ」というパチョーリの持論に同意するとともに、会計の有用性は、責任を問う手段としての脅威であることも然りです。会計は「すばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」というのも真であり、「金融システムが不透明なのは、けっして偶然ではなく、そもそもそうなるようにできているのではないか」というのも間違いではないでしょう。

学歴分断社会

吉川徹
『学歴分断社会』
筑摩書房
2011年2月25日(電子版)
20150731 多忙を理由に内なる怠け者の誘惑と戦いながら、7月最終日にて読了。本書はタイトル通り、中卒・高卒・大卒といった学歴によって分断されている社会を扱ったものです。年齢、職業、家族構成、趣味、年収といった分類、あとその分類に基づく傾向はいろいろとありますが、社会を真っ二つに分け、傾向がはっきりしているものとして学歴は確かに存在します。本書は、「格差社会」と呼ばれて久しい今日の状況を学歴という切り口で、感情論にならないよう気を配りながら客観的に考察しています(格差は広がっていないという主張です)。昭和の頃のように、差はあれ、みんながポジティブな時代と比べれば、相対的に不平等を認識しやすいようになったという見解でした。話は変わりますが、選挙時の自民・公明支持者の割合とその指示階層の補完性は、なるほどと思いました。学歴差で思考パターンが異なるというのも納得できます。重要なのは、2つの学歴集団の間に大きな格差が生じないようにすることであり、上下関係ではなく、水平関係で考えるということなのだと思います。本書で、首都圏と関西圏を例にしていたのは言い得て妙でした。

聖なる怠け者の冒険

森見登美彦
『聖なる怠け者の冒険』
朝日新聞出版
2013年5月30日
IMG_7617 1年ぶりの小説、1年ぶりのモリミーのようです。内なる怠け者と対峙しながら読み終えました。読んでいる間、八兵衛明神にお参りに行ったり、近くの小汚い居酒屋で呑んだり、古びた喫茶店でまったりしたり、糺ノ森を歩いてみたり、振り返ると物語の舞台を楽しんでいました。そう言えば、宵山に行ったのは何年前のことでしょう。さて、この物語は朝日新聞夕刊で連載されていたものを丸ごと1本書き直したものだそうです。新聞の連載小説なんて、誰が読むんだと昔は思っていましたが、いつの間にか読むようになっていくらか経っています(毎日の儀式のようなもの)。モリミーの連載なら、ONE PIECE並に楽しみにして読むんですが。結局、全く内容に触れませんでしたが、まあ楽しく読みました。四畳半神話体系的な話が好きな方はどうぞ。

天才たちの日課

メイソン・カリー著
『天才たちの日課』
フィルムアート社
2014年12月15日
IMG_7408 タイトル通り、天才と呼ばれた作家、芸術家、音楽家、思想家、学者などが、どんな生活をして仕事をこなしていたのかが書いてある本です。アインシュタイン、ボーヴォワール、モーツァルト、キルケゴール、マルクス、フロイトなど、161名が紹介されています。本書の副題は「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々」でして、天才たちの華やかな業績とは裏腹に、規則だった生活が浮き彫りになっています(なかには破滅的な生活をしている人もいますが、どちらかというと少数)。非常に面白いです。朝は何時に起きて、何を食べるのか、その後どのくらい散歩に行くのか、いつ仕事をしていたのか、頭に思い浮かべながら読みました。食事の内容はかなり楽しめました。私は毎朝、お嫁さんの淹れてくれたコーヒーとチーズをのせたトーストを食べます。

娘と話す 宗教ってなに?

ロジェ=ポル・ドロワ
『娘と話す 宗教ってなに?』
現代企画室
2002年8月
IMG_6382 新年度に入って、なかなか時間がとれないので、娘と話すシリーズを1冊。左翼、国家に続き3冊目です。ユダヤ教があり、キリスト教があり、イスラム教がある。仏教やヒンズー教もある。ということは知っていても、なかなか宗教全体を俯瞰的にみるほどの知識はないという方が多いのではないでしょうか。本書は、例によって13歳の娘に対して「宗教とはなにか」を語る内容です。一つの宗教内にも複雑に宗派があり、対立したりしているわけですが、何はともあれまずは基本を知ることが肝要です。宗教に限らずですが、巷で実しやかに囁かれていることより、しっかりした根拠のある情報(やっぱ本ですかね)をもとに知識を積み重ねることが真理への近道です。近年、何かとイスラム教にスポットがあたっていますが、報道される内容をなぜ?という疑問を常にもって接することが大事ですね。ちなみに私は仏教徒です(たぶん)。

バランスシートで読みとく世界経済史

ジェーン・グリーソン・ホワイト著、川添節子訳
『バランスシートで読みとく世界経済史』
日経BP社
2014年10月20日
IMG_5502 book diary初の研究費による購入本(大学の管理バーコードが付いています)です。紀元前7000年から現代における、簿記・会計の歴史、そしてそれを取り巻く文化・経済を非常にわかりやすく、そして何より面白く書かれた本です。会計の専門家ではない著者と訳者だからこその作品ではないかと思います。複式簿記の素晴らしさやその限界を知るには、大変よくできていると思います。印象に残った箇所は多過ぎて紹介はできませんが、本書の主張はGDPという指標や現在の決算報告書の欠陥(限界)です。現在の物質的な価値に偏った資本主義経済は、新しい会計で進化する必要があると思います。経済に関わる全ての方にお勧めします。

面白くて眠れなくなる社会学

橋爪大三郎
『面白くて眠れなくなる社会学』
PHP研究所
2014年12月4日
IMG_4949 少し本を読む時間が取れたので、社会学について読みやすそうなものを1冊。少し興味があって、専門的に勉強していない方には、とてもいいと思います。社会がどのように成り立っているのか、非常にわかりやすく書いてあります。普段、当たり前のように過ごしていて、いざ説明するとなると言葉に詰まるような事柄ばかりです。言語の性質について、否定、仮定、執行、命令、宣告、約束、告白で説明されている部分で、もう虜になりました。戦争、資本主義、リバタリアニズム(自由市場主義)と現代社会を読み解くうえで、重要な概念についても易しく触れられています。人類の文化の中心である宗教について、死はたまた幸福とは何か、言語化された客観的な解説は、豊かな社会生活に必ず役に立つと思います。自由を重んじ、誰でもない自分の幸せを追求することこそ、良い人生を歩む基礎となるでしょう。

東大合格生のノートはどうして美しいのか?

太田あや
『東大合格生のノートはどうして美しいのか?』
文藝春秋
2009年4月15日
IMG_4897 『東大合格生のノートはかならず美しい』の続編に位置付けられる本です。ノートって、なんでこんなに面白いのかと思わされますね。主として勉強するときにノートテイキングをするわけですが、美しい(ただきれいに書くというのではない)ノートを作るというのは、その背景には“学び”があるのだと思いますし、“勉強を楽しむ”という要素が大きいように感じました。私も昔からノートにまとめるのは好きです。勉強するって、やっぱ楽しいんですよ、きっと。気分の浮き沈みや継続性というのが、ノートを取り続ける上での難しさなのですが、そういう意味で東大生のノートは、やはりスゴイですね。自身の大学受験時代のノートや大学時代の講義ノートも手許にありますが、機械的な部分が多くて、これじゃダメだと思ったりします。今でも講義ノート、研究ノート、日々のメモ帳とノートは必須アイテムで、日々書き込んでいますが、本書でいうテンションの乱れ全開だと思います。あと、研究ノートがある日を境に、プツンと切れたように白紙になっているのが…。

無頼のススメ

伊集院静
『無頼のススメ』
新潮社
2015年2月1日
IMG_3884 同郷の伊集院さんです。私とは柄の異なる方なので、ストレートな物言いに少し嫌悪感があったりするのですが、嫌いにはなれない方です。嫌いにはなれないのは、考えていることは案外同じだったりするからでして、本書もそうでした。自分の正体を見極める、というのはすごく大事なことで、ありのままの自分を知り、それを認めることです。自分がいかにダメな人間であるかを知り認めることで、生き易くなると思います。あと、中庸を求めることもとても大事で、特に昨今の世界情勢をみていると、極端な論調が目立ち、争いの火種となっているように感じます。人の直感を侮るなかれという趣旨の話がけっこうあるのですが、人間に生来備わっている危機管理能力は侮れないと思います。便利なものには毒があり、手間暇かかるものに良薬は隠れていることをしっかり見定めて過ごしていきたいものです。

じぶんの学びの見つけ方

フィルムアート社編集部
『じぶんの学びの見つけ方』
(株)フィルムアート社
2014年7月24日
IMG_3699 めっきり読書量が減ってしまっている今日この頃。ようやくの更新です。本書は、いろんな分野で活躍されている26名の方の自分なりの学び方が紹介されています。本当に多岐にわたる面々で、思うところもいろいろありました。私なりに共感した部分としては、“自分の役割を最大限に引き受けてつとめること”、“「ぶれない」より「ぶれる」人間でありたい”、“失敗するとわかっていても、本当に失敗するまで納得できない”、“コンプレックスは「克服」ではなく「共存」する”、“「真似び」からの「学び」”、“ゆったりとした自然な流れの中で起きる「?」と「!」の双発による学び”といった、学校で授業で学ぶものとはかなり距離感のあるものでした。教えるというより、相手が自ら変わっていくような場を与えること、相手に「面白い」と思ってもらうかが大切であろうと思います。“新宿アルタ前で授業をする覚悟”というフレーズがあったのですが、毎回この気持ちを忘れずに教壇に立ちたいものです。

「もう疲れたよ…」にきく8つの習慣 働く人のためのアドラー心理学

岩井俊憲
『「もう疲れたよ…」にきく8つの習慣 働く人のためのアドラー心理学』
朝日新聞出版社
2014年7月30日
IMG_1826 夏にABC本店によったときに購入した本です。そんなに疲れ果てているわけではありません。副題にあるアドラー心理学についての本で、要はものごとは捉え方次第だという話です。「人間の行動には、【原因】があるのではなく、未来の【目的】がある」という考え方は、その通りで結局は皆、自分で思っているようにしか行動していないものです。あと、主観というのは本当にコワイもので、人間関係が拗れる場合、大抵は事実に対して歪んだ捉え方をすることが多いものです。なんだかうまくいかないときには、まわりとズレていることが多く、極端な場合なんかはまわりと合せていったほうがよいとするアドラー心理学には共感しました。何はともあれ、楽観的で建設的な心の持ちようで、すべてはうまくいくと思います。

今、ここを真剣に生きていますか?

長谷部葉子
『今、ここを真剣に生きていますか? −やりたいことを見つけたいあなたへ』
講談社
2012年12月10日
IMG_1216 SBSでふと目に留まった本です。特にやりたいことを見つけたいとか思っているわけではありません。帯に「慶應大学SFCビッグママの人生が変わる授業」とあったので、どんな授業なのか興味が湧いて読んでみました。私には到底できない芸当ですが、語られていることは本質をついていると思いました。特に「社会貢献」や「ボランティア」という言葉の危うさについて、ボランティアの押し売りや美化し過ぎて本質を失っている様子を指摘されているのは、実践されているだけあって説得力があります。「交流筋」を鍛える、という部分があるのですが、コミュニケーションをとり慣れている人から始めるのは、定石ですね。相手との距離感がとれずに負荷をかけてくる方や反応しない方だと、鍛えられるどころか萎えてしまいます。私のようなコミュニケーション下手には、あと数が必要でしょう。生活のリズムの大切さは、事を成す人の共通項だと思います。規則正しい生活こそ、力を発揮する基礎です。

考え方のコツ

松浦弥太郎
『考え方のコツ』
朝日新聞出版
2012年9月30日
IMG_1127 去年『日々の100』を読んでから、たまに読むようになった松浦さんの本です。SBSで見かけて購入しました。こないだ読んだ『100の基本』で十分だったな、というのが率直な感想です。よくある自己啓発系ハウツー本とあまりかわらない印象です。「「なりたい自分」を想像し、きちんと計画してコツコツやっていくより、今、目の前にあることをしっかりと務めて、流れに身を任せたほうがうまくいくと僕は思っています。」というのは、私もそう思っています。その人の経験なのでしょうが。あと、はっきり注意するのは大事だと言われるけど、性格に起因しているものであれば難しいというのも同感です。人間どれだけ失敗して、どれだけ気付きを得るかですね。

中国化する日本 増補版 日中「文明衝突」一千年史

與那覇潤
『中国化する日本 増補版 日中「文明衝突」一千年史』
2014年4月10日
文藝春秋
IMG_1072 ↓で読んだ『国家』に通ずるものがあるように感じました。人間の思考とは単純なものです。TVでたまに見かける與那覇さん、発言はいかにも東大卒な雰囲気で、本書もそうなのですが、内容はとても面白かったです。内心違和感のあった部分を、わかりやすく解明されているように感じました。抽象化こそ学者の仕事ですね。最後の宇野さんとの対談にあるのですが「平家・海軍・外務省、都市・リベラル・インテリが負け組になる理由」というのが、本書の内容だと思います。形状記憶合金が入っている「江戸時代化」の日本人気質は、そうは変わりそうにありません。言いようによっては、社会全体でうまくバランスをとっているようにも見えます。ただ、弱肉強食の時代をこのままでどこまで生きていけるのか、なかなか答えは見えてきません。

娘と話す 国家のしくみってなに?

レジス・ドブレ
『娘と話す 国家のしくみってなに?』
現代企画室
2002年7月10日
IMG_1016 去年の6月に姉妹本の『娘たちと話す 左翼ってなに?』を読みました。SBSで目にしたので購入。前述の本と同様、フランスが前提です。原書のタイトルは『娘に語る共和国』だそうで、共和制国家とは、という内容になっています。日本人は、国家とは何かということをあまり意識していないと思います。無理やりイメージするとしても天皇万歳的な国粋主義者を浮かべるのがやっとな気がします。あくまで私のイメージですが。社会の仕組みを理解して、責任ある大人(市民)として生活を送るには必須の教養と言えるでしょうね。

会計学のススメ −一度は読んでおきたい会計学の名著−

山下壽文
『会計学のススメ −一度は読んでおきたい会計学の名著−』
創成社
2013年10月20日
IMG_0852 読もう読もうと思って約1年眠っていた本です。会計学を本格的に学ぼうとする方には、打って付けの本ではないでしょうか。洋書も含め、古典から現代に至るまで主要文献が紹介されています。多くが前書きの紹介になっていますが、おおよその内容を把握するには十分だと思います。私の研究室にある本も多く、その多くが院生時代のものなので懐かしく感じました。手元の専門書は、多くが積読になってしまっているので、なんとか時間を作って、こなしていきたいものです。手元にないものは早速amazonで注文してしまいました(すごい広告効果)。あと、誤字脱字が多かったです。以下、今後の研究に向けて。会計基準の設定については、Concept(理論)+利害関係者間のCompromise(妥協)とConsensus(合意)+会社や社会一般に対するConsequence(影響・結果)の4C説を考慮して考えていく必要があります。また、会計基準は、時空を超えた普遍性があるわけではなく、体系的な秩序とその変化の経路を分析し、将来の方向を展望することが研究の課題という斎藤先生の言もまた然りで、その難しさを感じました。

困っている人のためのアイデアとプレゼンの本

福里真一
『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』
日本実業出版社
2014年6月20日
IMG_0731 最近、自分が思っていることが文章化された書籍ばかり手に取っています。思考が偏りそうです。さて、本書は、「宇宙人ジョーンズ」や「エネゴリくん」を作成されたCMプランナーの方が著者で、“電信柱の陰から見てるタイプの企画術”というコンセプトで書かれています。生来、リーダーシップ、積極性といったものが苦手なので、共感しまくりな内容でした。物事はSimple is bestで、説明はプロセスをすべて順番通りに話すことでうまく伝わるし、ひと言でいえるような企画は高い確率でいいものです。表現したいかことがある!というクリエイタータイプと受注体質のノンクリエイタータイプという表現が出てくるのですが、私も後者であると思います(経験則)。また、ひとりの人が整合性をもって考えたものよりも、他の人の違う意見を無理矢理取り込んでみるのも、ふくらみや広がりが出てくるというのも同感です。「人は、自分にできることしか、できない」というのは的確な表現だと思います。あと、一番働いているのは白紙の時間ということです。スケジュールの中の空白ほど重要なものはなく、そこで考えたり、作ったりしているわけで、決して空いているわけではないというのは、なぜか世の中では通じない…。なかなか面白かったです。根暗な人にオススメ。

僕がコントや演劇のために考えていること

小林賢太郎
『僕がコントや演劇のために考えていること』
幻冬舎
2014年9月10日
IMG_0177 私は小林賢太郎作品のファンです。舞台は可能な限り観に行っています。さて、ここのところ説教くさい本が続いているのですが、この本もそういった感があるのは否めないところです。ここに書かれてあることは、コントや演劇に関わらず、すべての職業に通じる話だと思います。賢太郎氏の考えていることは、基本的に私のスタンスと一致していると感じました。「うちはうち、よそはよそ」であるとか「「ウケる」と「売れる」と「有名になる」を分けて考える」というのは、絶対そうだと思うし、基本を忘れずにズレた行動を律しながら、自分の道を楽しみながら極めていきたいなぁと思う次第です。こういう話は(とくに芸事に関しては)、『風姿花伝』のような古典にしっかり書かれてあることでしょう。

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

松浦弥太郎
『100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート』
マガジンハウス
2012年9月25日
IMG_9941 松浦さんの日々の100の基本と“COW BOOKS”という本屋での100の基本(チェック項目)が短文解説付きで紹介されている本です。仕事場でのチェック項目は、かなり説教臭く感じると思います。まあ、大人になると誰も指摘してくれないので、よかったのではないかと。「100冊の本を読むよりも、よい本を100回読む。」わかってはいても、本については多読の方針をとってしまうのですが、100人と付き合うより、好きな人に100回会った方が相手と自分の本質がわかってくるというのは、なるほどです。古典をしっかり読めば、道徳については言うことないと常日頃から思います。ただ、「本は読むもの、飾るものではない。読んだら処分」蔵書という感覚はないというのは、相容れません(笑)「面倒くさいを楽しむ」“面倒くさい”という言葉は、本当にネガティブに働きます。日頃から気をつけるに越したことはないです。「健康管理が一番の仕事」病気で休むのが、健康管理という仕事を疎かにしたことの結末と捉えるのはその通りです。仕事を通して社会のために何ができるか、これなしに仕事はできませんよね。
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