大本営参謀の情報戦記

堀栄三
『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』
文春文庫
2015年8月20日(電子版)
20181124 時間のない中でも読めた1冊。30歳で大本営参謀になった堀さんの手記です。読み応えがありました。日本の敗戦を情報戦の視点で書かれています。軍事の問題に限らず、政治、教育、企業活動にも通じる内容だと思います。指導者の戦略の失敗は、戦術や戦闘で取り戻すことは不可能であると述べられています。枝葉と根幹(特殊性と普遍性)を見極めることの大切さ、真の情報を顧みずに一握りの専断で行われる組織の危うさを痛感しました。トップの責任というのは、非常に重いものです。日本では優秀な人材が中心になって動いて、組織はしばしば建前になる例が多いというのは、精神論に傾く日本の組織文化があるように思います。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

山口周
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
光文社新書
2017年7月20日(電子版)
20181113 過去最多のブックマークなのではないかという1冊。示唆に富んでいました。結構衝撃的だったのが、アカウンタビリティに対する批判です。過度に「合理的な説明可能性(アカウンタビリティ)」を求めすぎると、意思決定のプロセスにおけるリーダーの直感や美意識はほとんど発動されず、結果的に意思決定の品質を毀損する、アカウンタビリティは「無責任の無限連鎖」になるという言説です。アカウンタビリティ信奉者の私には、難しい問題だなという印象でした。さて、本書の概要は、サイエンス重視(論理と理性)に偏った経営は、必ず他者と同じ結論に至り、レッドオーシャンでの戦いになり、延長線上にストレッチした数値目標を設定し、現場のお尻を叩いてひたすら馬車馬のように働かせるというスタイルに至り、行き先が見えないままにただひたすらに死の行軍を求められている状況に陥るということでした。また、経営に関わる人たちの美意識がほとんど問われず、計測可能な指標だけをひたすら伸ばしていく一種のゲームのような状態は、今日の続発するコンプライアンス違反の元凶となっているということでした。結果的に、過去の優れた意思決定の多くは、「感性」や「直感」に基づいてなされていて、美意識(真・善・美)が大事だというオチなのですが、詳しくは読んでみてください。

フィードバック入門

中原淳
『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』
PHP研究所
2017年3月3日
20180827 紙の本は超久々な感。新幹線の移動にて。中原先生の本は、前々から読みたいものが多いのですが、さらっと読めそうな新書をば。マネジメントの定義やフィードバックとは何ぞやといったところから、どのようにフィードバックを実施するとよいかを整理されています。日頃考えていることが整理されているので、示唆に富んでいて有用でした。研究にも言えることですが、トライアンギュレーションは大事ですね。果てさて、つくづくマネジメントには向いていないと実感する日々ですが、人材育成ほど大事なものはないわけで、日々精進です。フィードバックは「場数」とのことです。

エッセンシャル思考

グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳
『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』
かんき出版
2014年12月12日(電子版)
20180528 時間が足りない生活に突入して久しいので、再考する材料として読んでみました。大量のブックマークが残るほどに、示唆に富んだ内容でした。要は、本質を見失わないこと、シンプル イズ ベストということだと思います。余裕を持って事に当たることも大事。あと、そうだよねと思った部分としては、「古典は読む者の視野を広げ、時の試練に耐えた本質的な思想に立戻らせてくれる。」「失敗を認めるということは、自分が以前よりも賢くなったことを意味する。」「ほとんどあらゆるものは、徹底的に無価値である。」がありました。

やりなおし高校日本史

野澤道生
『やりなおし高校日本史』
筑摩書房
2018年2月23日(電子版)
20180505 歴史の本質を見失っているような受験日本史に嫌気がさして、勉強を放棄したという若気の至りから、早20数年。日本史は大好きなんです。本書を読んで、改めて歴史から学ぶことは多いと感じました。日本史とは別の話になりますが、本書で国語の読解力とは、相手が伝えたいことを正確に理解できているかどうかを問うものであって、きちんと読んで、正しく理解しなければならない、というのは、なるほどなぁと思いました。若いときに、学ぶことの本質をしっかり理解するって大事ですよね。最後にいいなぁと思った言葉を一つ。「政治は国民道徳の最高水準たるべし」by浜口雄幸

未来の年表

河合雅司
『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』
講談社
2017年7月1日(電子版)
20180325 人口減少(出生数の減少、高齢者の増加、勤労世代の減少)で二進も三進もいかない日本の話です。

日本人の9割が知らない遺伝の真実

安藤寿康
『日本人の9割が知らない遺伝の真実』
SBクリエイティブ
2017年1月1日(電子版)
20171116 結局、環境ではなく遺伝という話です。

大学大倒産時代

木村誠
『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』
朝日新聞出版
2017年8月31日(電子版)
0914 業界人ですから。

光抱く友よ

蘯のぶ子
『光抱く友よ』
新潮社
2008年4月1日(電子版)
20170823 小説を読んでみようと、高校のOGでもある蘯のぶ子さんの芥川賞作品をダウンロード。「光抱く友よ」「揺れる髪」「春まだ浅く」の3本が集録されています。舞台が地元なだけあって、描写される風景が実際にどこなのかがはっきりとわかる内容でした。方言も懐かしい。「マイマイ〜」も自叙伝的な小説ですけど、この3本いずれも舞台は、ご本人が高校〜短大時代に生活された場所となっています。小説は普段読まないですし、地元贔屓が確実にあるので、評価に苦しむのですが、主人公たちの心の動きを読み進めるのは、なかなか面白かったです。地元シリーズで次は伊集院静『受け月』でも読んでみようかと思案中。

一九八四年

ジョージ・オーウェル、高橋和久 訳
『一九八四年』
早川書房
2012年7月25日(電子版)
20170720 本に餓えていただけかもしれませんが、おもしろかったです。社会が変わりつつある今に、是非読んで欲しい1冊ですね。人間の社会・心理を小説として、よく表現されているように思いました。究極的には、この小説の世界で行われていることが、ゆる〜く行われているのが実社会なのでしょう。そうだよねぇという部分が多くて、マイノート(kindleの)が増えました。この小説、1949年に1984年の未来を描いた作品というのだから、びっくりです。書きたいことは色々あるのですが、当たり障りのないところでは「比較の基準を持たない限り、事実に気付き得ない」ということです。人の思考を操るというのは、罪だと思いますね。私はいつ何時も自由でありたい。「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」こわー

貞観政要

湯浅邦弘
『ビギナーズ・クラシック 中国の古典 貞観政要』
KADOKAWA
2017年1月25日(電子版)
20170208 マネジメント・リーダーシップは帝王学にあり?と思って、手に取ってみました。大変良かったです。中国の古典は、実に素晴らしい。『論語』もいいですけど、個人的には『菜根譚』『孫子』『中庸』が心に残っている古典。『貞観政要』はこれに加えたいと思いますね。内容は十思九徳、これに尽きるのではないかと。君主となる者には、十思が大事だと思いますが、私は九徳を重んじたいですね。「寛容であってしかも厳しい。柔和であってしかもしまりがある。慎ましやかでしかも物事の処理がてきぱきしている。物事に明敏でしかも敬いの心がある。従順でしかも果断。正直でしかも温和。おおまかでしかも清廉。剛毅でしかも思慮深い。実行力に富みしかも正義にはずれない。」それはそれで讒言には気を付けなければなりません。

ビジネスエリートの新論語

司馬遼太郎
『ビジネスエリートの新論語』
文春新書
2016年12月20日(電子版)
20170206 社会人になって早12年、うちサラリーマン生活も10年と立派にサラリーマンになったような気がします。本書は、昭和30年に司馬遼太郎が福田定一(本名)で刊行した『名言随筆サラリーマン ユーモア新論語』という本が元となった復刊本です。60年以上前の内容ですが、今でも読めます。大江広元から始まり、義務感から精一杯の努力を生涯続けようとするサラリーマンの姿勢を「義務を果たすことに楽しみを見出すという形」と述べています。風刺も効いたなかなか含蓄のあるサラリーマン道となっています。最後の方は、司馬遼太郎の話がメインになっています。サラリーマンの息抜き、暇つぶしにはいいかもしれません。

統計学が最強の学問である

西内啓
『統計学が最強の学問である』
ダイヤモンド社
2013年1月28日(電子版)
20170122 数年前に流行った本ですよね。Kindleに落として、ずーっと放置していました。最近は、統計も触るようになったので、出張の移動時間に読んでみました。データマイニング、機械学習、人工知能、自然言語処理、ビジネスインテリジェンス、競合分析、統計解析といった統計学を使用した分野は、今かなりアツいです。身につけておいた方がよい知識であることは確かです。難解なものではなく、端的に言ってしまえば、「十分なデータ」をもとに「適切な比較」をするだけで、経験と勘を超える真実を掴むことができる手法です。本書では、前半の方にその有用性、後半は実際の分析の基礎について説明されています。少し統計を囓ってから読むと読みやすいと思います。なお、一番驚いたのは、著者が自分より若い方だったこと。

変身

フランツ・カフカ
『変身』
新潮社
2014年10月31日(電子版)
kafka この間、本を読める状態になかったため、気晴らしにすぐ読める本として「カフカでも読んでみたら。変身とか」という一言で手に取りました。帰省の移動の際に読みました。初カフカです。カフカについて知識がなかったので、全くイメージつかなかったのですが、確かに変身していました。前に、星新一を勧められて読みましたが、それと同じ感じだったというのが素直な感想。また機会があれば、読んでみようと思います。

なぜあなたは論文が書けないのか?

佐藤雅昭
『なぜあなたは論文が書けないのか?』
メディカルレビュー社
2016年7月15日
Z 姉妹書の『なぜあなたは研究が進まないのか?』と同時に読み始めたのですが、この間手に取ることもなく…。現在、〆切が近付いている論文が2本(まいった)。これから書き上げるに際して、今読んでおいた方がいいかと思い、移動の際に完読。基本的な視点を押さえておくには良書かと思います。医学系論文かつ英語論文が前提とはなっているものの、基本構成は同じなので、大変ためになりました。何のために書いているのかという根本的なところから、技術的な内容まで、コンパクトに読める分量ですし、お勧めです。さあ、限られた時間とはいえ、ベストを尽くそう。

違和感の正体

先崎彰容
『違和感の正体』
新潮社
2016年6月17日(電子版)
59 世の中に違和感を感じませんでしょうか。私は感じます。ということで、ダウンロードしたのが本書。ものさし不在の世の中で、ルサンチマンが渦巻く今日この頃。人の数だけ正義があるのはわかるけど、自分自身を絶対正義と捉え、反する意見は悪だと言うのは如何なものか。そういう言動は、手段が目的となっていることもしばしばです。他人同士が折り合いをつけながら、新しい秩序を作り上げることは大事です。さて、何が善で何が悪か、世間で行われている言論を論理的に捉えるとどうなるのか、これらをしっかり見つめ直している内容なんだと思います(筆者の視点で)。結論として、「違和感の正体」を社会全体からの「微笑」が奪われつつあることだと締められています。今の社会は、窮屈だということでしょうか。

なぜあなたの研究は進まないのか?

佐藤雅昭
『なぜあなたの研究は進まないのか?』
メディカルレビュー社
2016年7月15日
IMG_6748 振り返って考えておきたいと思い、姉妹書の『なぜあなたは論文が書けないのか?』とともに購入。同時進行で読み進めていたものの、こちらの方が面白くて先に完読。読んでいるとモチベーションが上がってくるので、読みながら研究していました。視点もしっかりしてくるし、なかなかよかったです。印象的だったのは、「小さな疑問に対する研究をいちいちしていたのでは、とても時間が足りない。もっと本質に迫る研究をすべきである(by利根川博士)」「研究のための研究をしていないか」「研究に対する「立ち位置」を明確にする」「未来はマイノリティが創り、過去と現在はマジョリティが維持する」といった部分でした。何はともあれ、睡眠(健康(心身ともに))の重要性、周りへの感謝の気持ちを忘れないことが肝要です。

情報参謀

小口日出彦
『情報参謀』
講談社
2016年8月1日(電子版)
20160830 かなり面白かったです。確かなデータと確かな分析、これに勝るものはありません。ビックデータの時代とはよく言われますが、世の中の膨大な情報を的確に処理して、課題に取り組むことは必要なスキルだと思います。前例踏襲であるとか、勘で物事にあたるのは、あまり望ましいことではないでしょう。大学にも宣伝のうまい大学があります。まさに情報参謀による情勢分析や話題の作り方が、データに基づいた緻密な戦略に基づいている背景があるのでしょう。これから圧倒的な情報処理で、AIをはじめ、世の中のあり方が変化していくことになります。変える方の立場で、変化を楽しみたいものです。

走れメロス

太宰治
『走れメロス』
新潮社
1967年7月10日
IMG_6355 また太宰に手を出してしまった。そんな感想です。大学が夏休みに入って、本屋に行ける時間が取れたことで、手に取ってしまいました。今回は、初期1編、中期8編ということで、これまでの後期作とはまた違った感じでした。「駆け込み訴え」は特によかったです。「女生徒」は女性が主人公だったせいもあるのか、『斜陽』のかず子を思い出しました。全体として相変わらず、自身の自叙伝的な背景と内容ですね。そして、個人的な印象として中二要素が強いというのも相変わらずでした。余裕のある時に、また読みます。

ミライの授業

瀧本哲史
『ミライの授業』
講談社
2016年6月30日20160815 瀧本氏の本は4年ぶり。twitter(@ttakimoto)での宣伝に負けて購入。14歳向けの「未来をつくる5つの法則」というタイトルでの講義を書籍化したものです。5つのルールのうち、個人的に特に重要だと思うのは「世界を変える旅は違和感からはじまる」「一行のルールが世界を変える」の2つ、その次に「ミライは逆風の向こうにある」、そして「すべての冒険には影の主役がいる」といったところでしょうか。より抽象的なものの方が、本質を突いていると思います。内容は、19名の偉人の話がメインです。私が若い人たちに対して伝えるならば、思い込みや常識を疑う、行動規範よりも基本原則を守る、そして世代交代だけが世の中を変える、という点になります。「未来をつくる」、なんとワクワクする言葉なのでしょう。

ノックの音が

星新一
『ノックの音が』
新潮社
1985年9月25日
IMG_6103 「たまには星新一とか読んでみたらどう」という勧めで手に取りました。ショートショートというジャンルでとても読みやすくて、ものの一瞬で完読。気分転換にはいいなと思いました。小説を読まない私も最近は朝夕刊の連載小説を読むようになりましたが、そんな気楽さがあります。「ノックの音がした。」から始まる15編の短編で構成されています。サスペンスなんて全く読んだことがないのですが、おそらく本書のようなものをいうのでしょう。一種、ホラーみたいでしたが。云々かんぬんで、最後に「キャー」みたいな。星新一はSF作家らしいので機会があれば、そっちも読んでみようと思います。SFも読んだことがない。

イライラしない本

齋藤孝
『イライラしない本』
幻冬舎
2016年1月(電子版)
20160728 副題は『ネガティブ感情の整理方法』。ストレスフルな日々を過ごす方々には、よい指南書なのではないでしょうか。インターネットやSNSによる感情の揺れやザワつき、心の不安定さは、現代人なら皆が持っているネガティブ感情だと思います。不満や羨み、後ろめたさは、ストレスを生みます。本書を通して、「来るものは拒まず、去るものは追わず」を勧められていますが、「君子の交わりは淡きこと水のごとし」が大事ですね。あと、未来への不安と過去への後悔を断ち切って、今この瞬間、「今やるべきこと」に集中することです。その他、カタルシスとして、愚痴る、歌う、芸術に触れることを勧められていました。そして個人的には大の苦手な「ムダ話」、雑談力には心の中のちょっとしたガス抜きができる、「意味のないおしゃべり」には大きな意味があるとのことでした(耳が痛い)。

自由のジレンマを解く

松尾匠
『自由のジレンマを解く』
PHP研究所
2016年3月10日(電子版)
20160625 「グローバル時代に守るべき価値観とは何か」という副題の本を、英国がEU離脱の国民投票を決めた昨日に読み終えました。読み応えがあって、なかなか面白かったです。前半は、固定的人間関係におけるシステムと流動的人間関係におけるシステムとの比較で、考え方や必要となるもの、振る舞い等が全く異なるという話で、後半からは、リベラル派とコミュニタリアンの矛盾を題材にした話を皮切りに「自由」について考える内容(特にマルクスを引き合いに出されています)になっています。自分自身の思想・信念の再確認という意味で、大変意味のある読書でした。ブックマークも多く、書きたいことは多くあるのですが多過ぎるので省略するとして、この時代に生きる我々にとって示唆に富む内容だと思います。話は少し変わりますが、不寛容社会と言われている昨今、多数派の思想や感情による抑圧がいかに恐ろしいかというのは、時代に学ぶべきでしょうね。

なぜ疑似科学が社会を動かすのか

石川幹人
『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』
PHP研究所
2016年3月3日(電子版)
20160520 同じ流れでiBooksからの1冊。世の中、実しやかに囁かれていることが全く真実とかけ離れているということが多過ぎます。本書に「根も葉もないことはふつう誰も信じない」の前提の方が間違っていて、根も葉もなくとも信じたいことがよくあるというのは言い得て妙です。論理的な説明よりも、感情に訴える物語のほうが人々を操作しやすいのは、まさにその通り。科学は反証可能性がないと成り立たないのは言うまでもないのですが、なぜ疑似科学がここまで世の中に影響を与えているのでしょう。論理的思考が鍛えられていると、疑似科学の類に騙されずに済むかもしれないのですが、なかなか人間というのはそこが苦手なようです。本書では、疑似科学の例を交えて、科学とは何か、疑似科学を信じてしまうのはなぜかについて書かれてあります。「それも神の思し召し」と万能理論様々では、騙されてしまいます。

自分を責めずにはいられない人

片田珠美
『自分を責めずにはいられない人』
PHP研究所
2015年11月25日(電子版)
20160422 電子書籍でオススメから選択しているため、同じ著者が続く傾向にあるようです。さて、人間生きていれば、落ち込むこともありますが、日々「自分はダメだ」と思っていては人生楽しめません。また、そんな罪悪感を掻き立てることで人を支配しようとする人も多くいます。そんな罪悪感は、抑え込もうとしてもどこかで表面化するので、受け入れることが大事で、無視したり排除したりするのではなく、さらに罪悪感に限らず、すべての感情を自身についての重要な情報を与えてくれるものとして捉えて、対応しようというのが本書の内容だったように思います。こうでなければならないといった気持ちのある人は、要注意です。割り切りは大事です。

インド歴史紀行

アジア旅行研究所
『インド歴史紀行』
目白書房
2012年4月1日(iOSアプリ)
20160309 インドに行くことにしたので、この間、時間を見つけてはYouTube、GooglePlay、huluなどで映画、神話系の動画、世界遺産、旅猿とインドに関するものを観まくってきたものの一つです。KindleでもiBooksでもない「インド歴史紀行」という名のiOSアプリで、アプリの中身は電子書籍でした。全17章、コンパクトにインドの歴史が書かれてあります。高校時代に世界史でやりましたが、ほとんど覚えていないです。ただ、最初に書いた通り、ここのところ、いろいろと観たので、ヒンドゥー教や世界遺産には詳しくなりました。その部分的な知識をもとに読んだので、知識の整理には役に立ちました(インダス文明→アーリア人によるインド文化(バラモン・ヒンドゥー&仏教)→イスラム→ヨーロッパ支配といった流れを理解する上では)。

みずうみ

川端康成
『みずうみ』
新潮社
1960年12月25日
IMG_1337 『文豪はみんな、うつ』を読んで、川端康成が気になって購入。iBooksで購入後も改めて文庫本を購入(やっぱり本は紙が好き)。大昔に読んだ『伊豆の踊子』の記憶は全くないものの、川端文学の理解者たちが、困惑し嫌悪したのも大変頷けるものでした。この偏愛傾向は、本人の体験なくしては表現できないものだと思います。それはさて置き、「意識の流れ」を表現した作品として、とても興味深い内容です。まるで夢の中のように、次から次へと唐突かつ無作為に流れていく主人公の意識の変化がおもしろく、まとまりのない断片の塊が、自然と全体を構成していく感じがなんとも言えません。

男尊女卑という病

片田珠美
『男尊女卑という病』
幻冬舎
2015年8月(電子版)
48 iBooksでの幻冬舎新書が続きます。本書の最後に「男性に女心がわからないのはなぜか。それは男性に生まれたからにほかならない。逆もまたしかり。」とあるのですが、この性差のある男女が同じ存在になりえないという基本認識を持った上でのバランス感覚が肝要だと思います。心理学的に見て、男女の精神構造を分析している部分は面白かったです。日本社会は、家制度の名残で今でも男性優位の風習が非常に強く残っていますが、少しずつ社会は変わり始めているという感覚を日々覚えます(男女問題に限らずですが)。おそらく世代が変われば文化は変わるでしょう。あとは、過度なバッシングや男女に限らず「自慢賞賛型」「特権意識型」「操作支配型」みたいに性格を拗らせてしまうといったことをどう克服するかですね。「過去と他人は変えられない」とは言い得て妙です。

文豪はみんな、うつ

岩波明
『文豪はみんな、うつ』
幻冬舎
2015年2月(電子版)
11 読み始めて気付いたのですが、『他人を非難してばかりいる人たち』と同じ著者のようです。夏目漱石、有島武郎、芥川龍之介、島田清次郎、宮沢賢治、中原中也、島崎藤村、太宰治、谷崎潤一郎、川端康成といった文豪たちを精神疾患という視点で批評されています。誰しもが性格的にどこかが歪んでいるものですが、並外れた能力を発揮する人物というのは、大抵この歪み具合が激しいと思っています。ここで紹介されている文豪たちも何かしらの執着性格が起因で精神疾患に罹患していたということになるでしょうか。また、その本人の精神状態やその経験が、作品に強く投影されているのも頷けました。感受性が豊かなことは、なかなか生きづらいものだと感じさせられます。立派な鈍感力を持った私には、縁遠い話なのかもしれません。あと、不倫や心中といった、世間的なタブーがこれほど自由に繰り広げられる文壇というか、時代に結構驚かされます。

人生を面白くする 本物の教養

出口治明
『人生を面白くする 本物の教養』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
20160123 ↓と同時に購入。共感するところが多かったので、電子書籍でなかったらドックイヤーだらけになっていたかもしれません。出口さんの合理主義、実質主義は、基本的に私の思考回路と重なります。自分が腑に落ちている「数字、ファクト、ロジック」と照らし合わせながら考えて判断しますし、相手がどういう数字を用い、どういうファクトを重視し、どういうロジックを積み上げているかを重視します。まさに「文は人なり」で「てにをは」ができていない人は、筋の通った思考ができていないので、信用しません。話は変わりますが、「あっ、そうか!」という原体験って大事ですよね。

他人を非難してばかりいる人たち

岩波明
『他人を非難してばかりいる人たち』
幻冬舎
2015年10月(電子版)
01 久々にiBooksを開いて購入。日々、SNSやTVでは不寛容な非難(バッシング)が繰り返されています。世知辛いものです。なぜ、このように排他的で不寛容なのか、日本独自の空気があるように思います。あと、日々感じるのは、妬みです。「人の不幸は蜜の味」とは言ったもので、人間とはつくづく厄介なものです。本書では、いくつかの事例をもとに、その構造を解説しています。個人的に関心が高かったのは、「規範」のない日本社会の独特な文化構造です。良くも悪くも、右へ倣えな風土は国民性なのでしょうか。

ほめると子どもはダメになる

榎本博明
『ほめると子どもはダメになる』
新潮社
2015年12月20日
IMG_0795 帰省の際、移動用に購入。結論から言えば、文化の文脈で「褒めること」を考えないとうまくいかないという話でした。最近の傾向で一番ダメなのは、ネガティブなことを無理やり人為的にポジティブに変換することでしょう。挫折を繰り返し、叱られることで鍛えられるというは、成長過程において外せない事柄であって、避けることはできません。あと、心理学の研究結果として、ポジティブ思考を吹き込むより、ネガティブ思考を吹き込んだ方が成績は上がるとか、能力よりも努力を褒めるといいらしいです。クレームに萎縮し、サービス産業化してしまっている大学をはじめとする教育業界についても苦言を呈していました。褒めすぎるのもダメだし、叱責し過ぎるのもひねくれてしまう。バランスをとるのは至難の技です。

「書斎の会計学」は通用するか

田中弘
『「書斎の会計学」は通用するか』
税務経理協会
2015年10月1日
IMG_0401 2年半ぶりの田中先生の本です。例によって、『税経通信』の連載を書籍化したものです。そして、言わずと知れたIFRS&時価会計批判が綴られています。これまで出版されたすべてに目を通していますが、やはり読みやすくて面白い、田中先生の本はこれに尽きます。今回は、あわせて研究会で田中先生ご本人から、本書の話を聞けたのでさらによかったです。IFRSの出自から、その背景にある国際政治経済社会の動向、従来の会計観とは全く異なる論理を理解するには良書だと思います。ただ、批判精神旺盛なので、自分なりに客観性を持って読むことも大事です。制度会計に対して、疑問をお持ちの際は、是非手に取ることをお勧めします。

なぜ日本は若者に冷酷なのか

山田昌弘
『なぜ日本は若者に冷酷なのか』
東洋経済新報社
2014年1月1日(電子版)
07 山田先生の本は久しぶりです。10年くらい前に「パラサイト・シングル」や「格差社会」という言葉が流行った頃によく読んでいました。当時の状況から2015年の現在は、さらに将来的な展望が厳しい時代になっていると言えます。本書は、雇用や社会保障において、中高年に手厚く、若者が冷遇されている現状への警笛が詰め込まれていると言えるでしょう。変える必要はわかっているけれど、一向に変わらない制度や風土が、今後どんどん我々やその下の世代に大きな重しとなって顕在化していくことは明らかです。流行り廃りはこれほど猛スピードで変化しているのに、昔ながらの正社員像や新卒一括採用、家族観といったいわゆる日本的価値観は、なかなか変わらないものですね。

斜陽

太宰治
『斜陽』
新潮社
1950年11月20日
IMG_9755 『斜陽』にしました。薄かったので。女性が主人公ということで↓の2作と趣が違うように感じました。相変わらずの厨二感もよかったです。「かず子べったり」や「かず子がっかり」といった戯けたやりとりもよかったです。「ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ」は一度家でやってみようと思います。明るさにのなかにある暗さ、暗さののなかにある明るさ、世間という社会に仮面を被りながら生きる人間の屈折した様や生まれに付き纏うアイデンティティーといった内面に迫る内容は、太宰作品の魅力ですね。また機会があれば読みます。

人間失格

太宰治
『人間失格』
新潮社
1952年10月30日
IMG_9610 少々かぶれているようです。『人間失格』を購入。↓をさらに晒け出した人間の内面に迫る自叙伝的内容は、文学青年を陶酔させ、熱狂させるのも頷けます。解説にもあるように「自分ひとりに話しかけられているような心の秘密を打ち明けられているような気持になり、太宰に特別の親近感をおぼえる。そして太宰治は自分と同じだ、自分だけが太宰の真の理解者だという同志感を持つ。」ちょっと厨二入っているようにも感じ、若くして自死した太宰への当時の熱狂ぶりは、尾崎豊を連想させるようでもありました。とは言え、この純粋さゆえに転落してく様は趣深いもので、大変魅力ある作品でした。次は何を読もう。

ヴィヨンの妻

太宰治
『ヴィヨンの妻』
新潮社
1950年12月20日
IMG_9545 暗鬱な心を扱う文学といえば太宰かな、ということで購入。短編小説8本で薄かったので本書をチョイス。『放哉と山頭火』の廃人っぷりに続く素晴らしきダメ夫の数々で大変面白かったです。ダメな知識人というのに、どうも魅力を感じてしまいます。現実的には全く関わりたくありませんが。個人的には、それぞれの小説の最後の下りが気に入っています。太宰治、気に入りました。かぶれない程度に読んでいこう。

放哉と山頭火

渡辺利夫
『放哉と山頭火 死を生きる』
筑摩書房
2015年8月25日
IMG_9155 ふと新聞の書評で見かけて購入。思いのほか面白く読みました。俳人ならぬ廃人と言われる自由律俳句の巨星である放哉と山頭火の酒浸りのダメダメ度と昇華された自由律俳句が人間の深い業を儚くも美しく表現していることに心を揺さぶられずにはいられない、といった感じでした。こういった人間に住まう暗鬱な心を扱う文学に少し興味を持った次第です。こんな破滅的な人生はまっぴらだとは思いながらも、どこか羨ましく感じるところがまた魅力なのでしょう。辞世の句がとてもいいです。「春の山のうしろから烟が出だした(放哉)」「もりもりもりあがる雲へ歩む(山頭火)」

だから日本はズレている

古市憲寿
『だから日本はズレている』
新潮社
2014年10月17日(電子版)
IMG_9062 古市君の本を手に取るのは初めてだと思います(たぶん)。本というよりブログを読む感覚(内容も含め)でした。雑誌記事の寄せ集めのようなので、そんなもんなのでしょう。豊かで平和な日本では、結局はみんなそこそこ幸せに生きていることが、先送りというこの国を蝕む根底にあるのでしょう“おじさん”も“若者”も総じて他人任せです。監視社会の有用性については、個人的な嫌悪感さえ克服すれば、それなりに世の中がスマートになるのではないかと思います。人間には無理かもしれませんが。イニシエーション・セレモニーなる入社式、“社会人”なる謎の存在に対して、脱サラ・フリーター・フリーランスという自由な生き方は、自由に生活したいというみんなの憧れによる普遍的なものなのでしょう。コンサマトリーな生き方が進んでいくかはわかりませんが、静かな革命が世の中を変えていくのだと思います。本を読んでいて、一極集中もありだなと思えてくるところがまた、平和ボケなのかもしれません。最後に、「学問」が人の上に人を造るというのは、福沢諭吉の真意であり、間違っていないと思います。

会計研究入門

鈴木義夫、千葉修身
『会計研究入門 “会計はお化けだ!”』
森山書店
2015年3月
IMG_8769 雑誌『會計』の書評に目が止まり、副題も気になって購入してみました。読みやすく分量も少なかったので、すぐに読了。大変おもしろかったです。著者は、「存在していないモノをあたかもそこにあるかのように見せかける」機能をもって会計をお化けと呼んでいます。そして、現代において「会計は、マネーによるマネーそれ自体の獲得・運用に資する当該情報の産出手段の一つとして重要な役割を演じている」と批判的に論じられています。それは、「現代の資本主義経済が、本来一体となって動くべきモノとマネーとが分離して、マネーが実体的裏付けのない、国家による「信認」だけが頼りの段階に立ち至った」そして「そうしたいわばニセ物が本物であるかのような顔をして跋扈している時代」ということであり、「精神のない専門人、心情のない享楽人(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より)のすること」と喝破しています。50年以上にわたり会計研究に携われてきた方の言葉は非常に明快です。

帳簿の世界史

ジェイコブ・ソール著、村井章子訳
『帳簿の世界史』
文藝春秋
2015年4月10日
IMG_8712 著者に敬意を表したい素晴らしい本でした。3月に読んだ『バランスシートで読みとく世界経済史』に続いて、会計に関する良書が続きますね。本書は、会計責任を果たすことの難しさを700年の財務会計の歴史を紐解きながら明らかにしていきます。一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計である、繁栄する社会では、よい会計慣行や商業文化が根付いていただけでなく、それを支える健全な倫理観や文化の枠組みが存在し、会計を無視したり操作したり怠ったりしがちな人間の性癖をうまく抑えていたということが非常に単純明快に語られています。度重なる金融危機に脅かされる現代は、会計の責任の歴史を振り返るのにふさわしい時期ではないかという著者の問いにも頷けます。会計は職業倫理の基本要素の一つです。「共和国に必要なのは、教育水準が高く、己を律することができ、高い職業倫理を備えた証人である、そうした証人は事業経営においても政府においても役に立つ」というパチョーリの持論に同意するとともに、会計の有用性は、責任を問う手段としての脅威であることも然りです。会計は「すばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」というのも真であり、「金融システムが不透明なのは、けっして偶然ではなく、そもそもそうなるようにできているのではないか」というのも間違いではないでしょう。

学歴分断社会

吉川徹
『学歴分断社会』
筑摩書房
2011年2月25日(電子版)
20150731 多忙を理由に内なる怠け者の誘惑と戦いながら、7月最終日にて読了。本書はタイトル通り、中卒・高卒・大卒といった学歴によって分断されている社会を扱ったものです。年齢、職業、家族構成、趣味、年収といった分類、あとその分類に基づく傾向はいろいろとありますが、社会を真っ二つに分け、傾向がはっきりしているものとして学歴は確かに存在します。本書は、「格差社会」と呼ばれて久しい今日の状況を学歴という切り口で、感情論にならないよう気を配りながら客観的に考察しています(格差は広がっていないという主張です)。昭和の頃のように、差はあれ、みんながポジティブな時代と比べれば、相対的に不平等を認識しやすいようになったという見解でした。話は変わりますが、選挙時の自民・公明支持者の割合とその指示階層の補完性は、なるほどと思いました。学歴差で思考パターンが異なるというのも納得できます。重要なのは、2つの学歴集団の間に大きな格差が生じないようにすることであり、上下関係ではなく、水平関係で考えるということなのだと思います。本書で、首都圏と関西圏を例にしていたのは言い得て妙でした。

聖なる怠け者の冒険

森見登美彦
『聖なる怠け者の冒険』
朝日新聞出版
2013年5月30日
IMG_7617 1年ぶりの小説、1年ぶりのモリミーのようです。内なる怠け者と対峙しながら読み終えました。読んでいる間、八兵衛明神にお参りに行ったり、近くの小汚い居酒屋で呑んだり、古びた喫茶店でまったりしたり、糺ノ森を歩いてみたり、振り返ると物語の舞台を楽しんでいました。そう言えば、宵山に行ったのは何年前のことでしょう。さて、この物語は朝日新聞夕刊で連載されていたものを丸ごと1本書き直したものだそうです。新聞の連載小説なんて、誰が読むんだと昔は思っていましたが、いつの間にか読むようになっていくらか経っています(毎日の儀式のようなもの)。モリミーの連載なら、ONE PIECE並に楽しみにして読むんですが。結局、全く内容に触れませんでしたが、まあ楽しく読みました。四畳半神話体系的な話が好きな方はどうぞ。

天才たちの日課

メイソン・カリー著
『天才たちの日課』
フィルムアート社
2014年12月15日
IMG_7408 タイトル通り、天才と呼ばれた作家、芸術家、音楽家、思想家、学者などが、どんな生活をして仕事をこなしていたのかが書いてある本です。アインシュタイン、ボーヴォワール、モーツァルト、キルケゴール、マルクス、フロイトなど、161名が紹介されています。本書の副題は「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々」でして、天才たちの華やかな業績とは裏腹に、規則だった生活が浮き彫りになっています(なかには破滅的な生活をしている人もいますが、どちらかというと少数)。非常に面白いです。朝は何時に起きて、何を食べるのか、その後どのくらい散歩に行くのか、いつ仕事をしていたのか、頭に思い浮かべながら読みました。食事の内容はかなり楽しめました。私は毎朝、お嫁さんの淹れてくれたコーヒーとチーズをのせたトーストを食べます。

娘と話す 宗教ってなに?

ロジェ=ポル・ドロワ
『娘と話す 宗教ってなに?』
現代企画室
2002年8月
IMG_6382 新年度に入って、なかなか時間がとれないので、娘と話すシリーズを1冊。左翼、国家に続き3冊目です。ユダヤ教があり、キリスト教があり、イスラム教がある。仏教やヒンズー教もある。ということは知っていても、なかなか宗教全体を俯瞰的にみるほどの知識はないという方が多いのではないでしょうか。本書は、例によって13歳の娘に対して「宗教とはなにか」を語る内容です。一つの宗教内にも複雑に宗派があり、対立したりしているわけですが、何はともあれまずは基本を知ることが肝要です。宗教に限らずですが、巷で実しやかに囁かれていることより、しっかりした根拠のある情報(やっぱ本ですかね)をもとに知識を積み重ねることが真理への近道です。近年、何かとイスラム教にスポットがあたっていますが、報道される内容をなぜ?という疑問を常にもって接することが大事ですね。ちなみに私は仏教徒です(たぶん)。

バランスシートで読みとく世界経済史

ジェーン・グリーソン・ホワイト著、川添節子訳
『バランスシートで読みとく世界経済史』
日経BP社
2014年10月20日
IMG_5502 book diary初の研究費による購入本(大学の管理バーコードが付いています)です。紀元前7000年から現代における、簿記・会計の歴史、そしてそれを取り巻く文化・経済を非常にわかりやすく、そして何より面白く書かれた本です。会計の専門家ではない著者と訳者だからこその作品ではないかと思います。複式簿記の素晴らしさやその限界を知るには、大変よくできていると思います。印象に残った箇所は多過ぎて紹介はできませんが、本書の主張はGDPという指標や現在の決算報告書の欠陥(限界)です。現在の物質的な価値に偏った資本主義経済は、新しい会計で進化する必要があると思います。経済に関わる全ての方にお勧めします。

面白くて眠れなくなる社会学

橋爪大三郎
『面白くて眠れなくなる社会学』
PHP研究所
2014年12月4日
IMG_4949 少し本を読む時間が取れたので、社会学について読みやすそうなものを1冊。少し興味があって、専門的に勉強していない方には、とてもいいと思います。社会がどのように成り立っているのか、非常にわかりやすく書いてあります。普段、当たり前のように過ごしていて、いざ説明するとなると言葉に詰まるような事柄ばかりです。言語の性質について、否定、仮定、執行、命令、宣告、約束、告白で説明されている部分で、もう虜になりました。戦争、資本主義、リバタリアニズム(自由市場主義)と現代社会を読み解くうえで、重要な概念についても易しく触れられています。人類の文化の中心である宗教について、死はたまた幸福とは何か、言語化された客観的な解説は、豊かな社会生活に必ず役に立つと思います。自由を重んじ、誰でもない自分の幸せを追求することこそ、良い人生を歩む基礎となるでしょう。

東大合格生のノートはどうして美しいのか?

太田あや
『東大合格生のノートはどうして美しいのか?』
文藝春秋
2009年4月15日
IMG_4897 『東大合格生のノートはかならず美しい』の続編に位置付けられる本です。ノートって、なんでこんなに面白いのかと思わされますね。主として勉強するときにノートテイキングをするわけですが、美しい(ただきれいに書くというのではない)ノートを作るというのは、その背景には“学び”があるのだと思いますし、“勉強を楽しむ”という要素が大きいように感じました。私も昔からノートにまとめるのは好きです。勉強するって、やっぱ楽しいんですよ、きっと。気分の浮き沈みや継続性というのが、ノートを取り続ける上での難しさなのですが、そういう意味で東大生のノートは、やはりスゴイですね。自身の大学受験時代のノートや大学時代の講義ノートも手許にありますが、機械的な部分が多くて、これじゃダメだと思ったりします。今でも講義ノート、研究ノート、日々のメモ帳とノートは必須アイテムで、日々書き込んでいますが、本書でいうテンションの乱れ全開だと思います。あと、研究ノートがある日を境に、プツンと切れたように白紙になっているのが…。

無頼のススメ

伊集院静
『無頼のススメ』
新潮社
2015年2月1日
IMG_3884 同郷の伊集院さんです。私とは柄の異なる方なので、ストレートな物言いに少し嫌悪感があったりするのですが、嫌いにはなれない方です。嫌いにはなれないのは、考えていることは案外同じだったりするからでして、本書もそうでした。自分の正体を見極める、というのはすごく大事なことで、ありのままの自分を知り、それを認めることです。自分がいかにダメな人間であるかを知り認めることで、生き易くなると思います。あと、中庸を求めることもとても大事で、特に昨今の世界情勢をみていると、極端な論調が目立ち、争いの火種となっているように感じます。人の直感を侮るなかれという趣旨の話がけっこうあるのですが、人間に生来備わっている危機管理能力は侮れないと思います。便利なものには毒があり、手間暇かかるものに良薬は隠れていることをしっかり見定めて過ごしていきたいものです。

じぶんの学びの見つけ方

フィルムアート社編集部
『じぶんの学びの見つけ方』
(株)フィルムアート社
2014年7月24日
IMG_3699 めっきり読書量が減ってしまっている今日この頃。ようやくの更新です。本書は、いろんな分野で活躍されている26名の方の自分なりの学び方が紹介されています。本当に多岐にわたる面々で、思うところもいろいろありました。私なりに共感した部分としては、“自分の役割を最大限に引き受けてつとめること”、“「ぶれない」より「ぶれる」人間でありたい”、“失敗するとわかっていても、本当に失敗するまで納得できない”、“コンプレックスは「克服」ではなく「共存」する”、“「真似び」からの「学び」”、“ゆったりとした自然な流れの中で起きる「?」と「!」の双発による学び”といった、学校で授業で学ぶものとはかなり距離感のあるものでした。教えるというより、相手が自ら変わっていくような場を与えること、相手に「面白い」と思ってもらうかが大切であろうと思います。“新宿アルタ前で授業をする覚悟”というフレーズがあったのですが、毎回この気持ちを忘れずに教壇に立ちたいものです。
Archives
記事検索
最新コメント