若者が《社会的弱者》に転落する

宮本みち子
『若者が《社会的弱者》に転落する』
洋泉社
2002年11月21日
5.7 手許にある新書yはこれで最後。今回は若者論。前回までの内容よりは、ちゃんとデータも提示されていて客観的な内容です。労働市場の悪化、必要とされる教育水準の上昇、家族の不安定化という3つの要素を中心としてフリーター・ニート問題、晩婚・未婚問題を説き、若者が如何に追い込まれているか(追い込まれていくか)ということが述べられています。自分の周り(自身も)や各種の統計を見ても将来の不安は募るばかりですねぇ。もっと明るい本読も。

SEの処世術

岩脇一喜
『SEの処世術』
洋泉社
2004年5月22日
5.5 予定通り読んでみました。SEはサラリーマンであり、職人であり、芸術家であるというのが著者の主張です。重要度は、第一にサラリーマン、第二に職人、そして第三に芸術家だそうです。SEの処世術とは、人の嫌がる仕事をし、進んで宴会部長をせよといった具合。24時間仕事を忘れるな、三日三晩の徹夜だろうがサービス残業だろうが耐え抜いてこそ本物だみたいなことが筆者の英雄伝とともに書かれてあります。まあ、そりゃそうだろうけど。この主観に満ちた独り善がりな内容が新書yっぽい。でも、安易になろうとする人にはいい本かもしれませんね。

勝ち組SE・負け組SE

岩脇一喜
『勝ち組SE・負け組SE』
洋泉社
2001年12月21日
4.30 洋泉社の新書yは、個人的にはあまりいい印象のないシリーズですが、久々に買ってみました。さて、世の中にごまんといるSE。大量解雇の時代がやってくると言われて久しいですが、今後生き残っていくSE像を筆者なりに綴ってあります。2001年に書かれた本なので内容は少し古いかもしれませんが、基本的にはごもっともな内容です。その通りではあるけど精神論に偏っているような気もします。同様の著者で2004年に書かれた『SEの処世術』を次に読む予定。

ありえない日本語

秋月高太郎
『ありえない日本語』
筑摩書房
2005年3月10日
4.26 察しが付くと思いますが最近の若者の言葉についてです。ここに出てくるほど酷くもないですけど、私の言葉もかなり有り得ないものが多いです。コラムの言葉遣いも結構ラフです。最近、マナー研修をいっぱい受けたので言葉遣いに関しては考えるところが多いです。本の内容は、ありえない日本語がどのように作られたのかの説明や言葉が気になるかとかのアンケート結果とかです。あとがきに書いてある著者の先生のオタク談は結構引きましたね。どうりで少女漫画の例が多いわけだ。

ビジネスマンのための心理学入門

和田秀樹
『ビジネスマンのための心理学入門』
角川書店
2004年9月10日
4,21 久々の角川oneテーマ。前半がビジネスシーンにおける心理学の話で、後半はほぼ心理学を学ぶといいよというような話(いや、全体的にそんな感じ)。意外に複雑な精神というか心理を持つ私には気を付けるべき点もいくらかありました。10数個ある図説は非常にわかりやすいです。簡単な心理学の入門書の紹介など心理学の取っ掛かりにはいい本だと思います。和田先生の設立された心理学シンクタンク「ヒデキ・ワダ・インスティテュート」はどう展開していくのでしょう。

上司は思いつきでものを言う

橋本治
『上司は思いつきでものを言う』
集英社
2004年4月21日
4.14 電車には乗ってますが、ペースが落ちてます。さて、いかにもサラリーマン向けの本です。内容はイマイチ説得力不足といった感じです。確かになくはないんでしょうけど、こんな感じの会社だったらすでに潰れてそうです。今の世の中。しかも、社会人経験のない作家さんだそうですし。上に立つ人によって会社の将来は大きく左右されることは確かですね。人に物申すときは、プロセスが問題です。どう伝えるかがその成否を握っています。

若者はなぜ怒らなくなったのか

荷宮和子
『若者はなぜ怒らなくなったのか』
中央公論新社
2003年7月10日
4.6 “若者はなぜ怒らなくなったか”というよりは、団塊の世代と団塊ジュニアに挟まれたくびれ世代と称する著者の世代がいかに辛酸を舐めているかを書き連ねたといった感じの本です。副題の「団塊と団塊ジュニアの溝」のほうが、本のタイトルとしては適切かも。読んでいると独断と偏見がとても多い(強い)ような気がしました。世代間に限らず、男女に関するものや特定のヒトに関するものなど。本人の主張はよく伝わりましたが、あまりいい本とは言えないですね。

小さな会社の復活経営学

津田倫男
『小さな会社の復活経営学』
PHP研究所
2004年3月31日
3.31 書名の通り、中小企業の経営に関する本です。なんかすごく読み易かったような気がします。スラスラ〜っと。中小企業に限らず、大企業にもそのまま当てはまる内容だと思います。学ぶ部分は多いと思いますが、これを実際に実践するとなるとかなり大変でしょうね。言うは易しです。でもここで問題になっているような状況に実際なっているとすると、雲行きは怪しいでしょうね。会社に重要なものは、やっぱり基本のヒト・モノ・カネ。これをうまく使えれば何の問題もないですね。

切腹

山本博文
『切腹』
光文社
2003年5月20日
3.29 じゃぱにーずHARAKIRIについての本です。計431人の切腹者について、その経緯が書かれてあります。副題は“日本人の責任の取り方”。どんな精神力を持って自分の腹を切るのでしょうか。全く持って有り得ない風習です。しかし、その武士道精神たるや実に天晴れなものです。どんな理不尽な理由であろうとも受け入れるその精神状態というか教育制度は少し恐ろしいものがあります。まさに神風特攻隊が生まれる所以です。集団のために自分を犠牲にするという構造は、日本の企業社会にもありますよね。

私の知る会計学者群像

新井益太郎
『私の知る会計学者群像』
中央経済社
2005年3月15日
3.27 この手の本は意外に多く刊行されています。しかも、この本は9年前の『企業会計』に連載されていた「昭和の会計学者群像」がかなりもとになっているようで読むのは2回目といったところでしょうか。会計学を勉強されている学生さんは、こういうのを読んでみて自分の勉強している学問がどのような人たちによって作られて、また自分の所属している学校や師事している先生にどんな系譜があるのかを知るのも面白いのではないでしょうか。同文舘から出ている『日本における会計学研究の発展』は値段も頁数も桁外れです。

失敗を恐れない人生術

古郡廷治
『失敗を恐れない人生術』
筑摩書房
2005年1月10日
3.24 実に211の名言が載せてあります。これほどの名言がありながら、人間は少しも進歩してないですよね。名言によって言い表されたことをもって、人間とはこんなもんだとも言えます。このような言葉は、よりよく生きていくためにはとても大事です。といっても、こんなことを一々言うヤツは確実に嫌われると思いますが。しかし、男女の恋愛というのは絶対に思うようにはいかないものです(本の最初は“恋愛”についてです)。男と女は違う生き物ですからねぇ。

中国・台湾・香港

中嶋嶺雄
『中国・台湾・香港』
PHP研究所
1999年11月4日
3.22 久々に中国関係の新書を読みました。やはり、中国関係の本は東京外大の中国語科卒の人が多いですねぇ。この本は、かなり中国に批判的な内容となっていると思います。5年半前の本なので少し内容は古いですが、執筆時の情勢や将来の観測が実際どのように推移して今日に至っているかという観点で読むと面白いと思います。中国については人それぞれ思うところがあると思いますが、大国だけに一筋縄にはいかない問題ですよね。世界にとってもアジアにとっても日本にとっても重要性は高まるばかりです。

経営の大局をつかむ会計

山根節
『経営の大局をつかむ会計』
光文社
2005年3月20日
3.18 光文社新書から『さおだけ屋は〜』に続き、また会計の本が出ました。ビジネスプランやリストラクチャリングを会計からきっちり押さえるための基礎がわかりやすく説明されています。ビジネス・モデルをみるにも会計がいかに有用かがわかっていただけると思います。いや、経営にとって会計がいかに必要不可欠なものかがわかるでしょう(当たり前ですけど)。著者は慶應の山根先生。苗字が一緒です。ちなみに、陽一という名の先生も会計には多くいらっしゃいます。

先生はえらい

内田樹
『先生はえらい』
筑摩書房
2005年1月25日
3.17 筑摩からの新しい新書だそうです。ちくまプリマー新書。この本は、中高生を対象にしているようですが、面白そうなので買ってみました。内容は、書名の通りのことを言わんとしているわけですが、そのアプローチはなかなか面白いです。要は、恩師なんてのは勝手な思い込みであって、別にその先生がスゴイわけではないということです。弟子は師が自分の知らないことを知っているはずだと勝手に思いこむことによって、勝手に何かを学んで師は偉大だと勘違いすると。コミュニケーションにしろ誤解する余地を残すことが大切だとおっしゃっています。まあ、確かにそうとも言えるかな。

複雑系組織論

ロバート・アクセルロッド、マイケルD.コーエン/高木晴夫 監訳、寺野隆雄 訳
『複雑系組織論』
ダイヤモンド社
2003年6月5日
3.16 久々の更新になります。書名と分量(少ない)に惹かれて読んでみました。事例を入れながらわかりやすく説明されているとは思うのですが、私には少々読み辛く感じました。電車のなかではなくて、もっと集中できる環境で読んだほうがいいような気がします。最後に複雑系を踏まえた行動のフレームワークが簡潔にまとめられています。これはいい行動指針になるものだと思います。でも、やっぱなんかわかり辛いんですよね。私の脳みそが足りないせいなのかもしれませんが。

経済ってそういうことだったのか会議

佐藤雅彦、竹中平蔵
『経済ってそういうことだったのか会議』
日本経済新聞社
2002年9月1日
3.5 こういう基本的なことが書いてある本って、いつ読んでも「そうだったのか」なんて思ってしまいます(私が思っては問題なんですけど)。それだけ日常生活において本質的なことを忘れて流されてるということなんでしょうね。そして、それが政治離れや誰かがどうかしてくれるといった人任せな態度を引き起こしているのでしょう。この本は、対談形式でわかりやすく話が進められています。これは日経ビジネス人文庫ですが、わかりにくい、つまらないの代名詞は日経文庫ですね。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

山田真哉
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
光文社
2005年2月20日
2.26 ほんと、すっかり売れっ子ですね。書名や副題の「身近な疑問からはじめる会計学」のとおり、日頃から不思議に思ってる身近な話題満載です。いい切り口だと思います。わかり易いですし。山田先生に限らず、文学部出身の方は物事の本質をキッチリ捉えて、しかもそれをわかりやすく表現できる能力があるように感じます。文才っていうんですかね、こういうの。そこら辺の会計本って、本当に面白くないんですよね。あの読み辛さは、初心者に対する嫌がらせに近いと思います。

自由という服従

数土直紀
『自由という服従』
光文社
2005年1月20日
2.25 暇潰しにbook diary(blog以前のも含めて)の本を数えてみたら、313冊でした。目標はとりあえず1,000冊ですね。さて、この本は「自由だからこそ、みんな権力にとらわれていく」ということを各事例に沿ってよく言い当てていると思います。なんか男と女の話が多かったけど。でも、権力にとらわれようともこの辺のとこをうまく渡っていくのは必要ですよね。著者の『社会を〈モデル〉でみる数理社会学への招待』(編著ですけど)は、前々から読みたい本の一つです。

希望格差社会

山田昌弘
『希望格差社会』
筑摩書房
2004年11月10日
2.23 意外にも山本先生の本は3冊目。社会の二極化に関する本は結構読んでますね。昔みたいに、学歴や大企業、結婚といった生活の保障がなくなった今の世の中は、非常にリスクの高い社会です。果たしてどこまでメリトクラシーを認めてよいのやら。でも、その一方では親の格差がそのまま子に受け継がれ易くなっているのが現状です(二世なんちゃら然り)。一部の強者と大多数の弱者で構成される社会がいい社会なのでしょうかね。とりあえず、弱者にならないように時代を見極めながら努力するのみか。

稼ぐが勝ち

堀江貴文
『稼ぐが勝ち』
光文社
2004年8月10日
2.18 ホリエモンこと堀江貴文ライブドア社長です。この人どんな人なのかと思いまして、読んでみました。シンプル・イズ・ザ・ベストや基本に忠実ということは、まさに成功の法則だと思います。実際、これがものすごく難しいんですけど。まあ、ガチガチの官僚や政治家よりは、この人の方がよっぽど好きです。とりあえず、こんなことができるのは今のところ彼しかいないので必要な存在でしょうね。しかし、ビジネスマンの常ですが、いつもビジネスを女の口説き方を例に説明するんですよね。

メディア・コントロール

ノーム・チョムスキー/鈴木主税訳
『メディア・コントロール』
集英社
2003年4月22日
2.17 チョムスキーの本もいくらか読んできましたが、なかなか宜しいです。でも、本職である言語学の本は読んだことないですけど。かなり批判的に書かれてあるので、全てを鵜呑みにするわけにはいかないですけど、かなり真意を突いています。普段からメディアを無批判に受け入れがちな多くの日本人には、是非読んでもらいたいと思います。ものごとはまず疑ってみることです(世知辛いなぁ)。騙されないためには。客観性を出すために火星人のジャーナリストを登場させたのはいい方法でした。

文明の衝突と21世紀の日本

サミュエル・ハンチントン/鈴木主税訳
『文明の衝突と21世紀の日本』
集英社
2000年1月23日
2.14 『文明の衝突』は、読んでないですが新書コーナーで目に留まったので買いました。思いのほか面白かったです。ここでは文明と呼ばれますが、文化の違いというのはどこまでも深いものがあると思います。いろいろな観点から国際関係を見ることが出来ると思いますが、やはり文化を抜きには語れませんよね。アメリカと中国という大国の間で今後日本はどのような関係を築き上げ、世界はどうなっていくのか見物です。あと、日本が独自の文明として捉えられていることに今更ながら驚きました。

貧困の克服

アマルティア・セン/大石りら訳
『貧困の克服』
集英社
2002年1月22日
2.9 集英社新書には、結構いい訳本があるようです。3冊ほど買ってみました。さて、センはスティグリッツとともに私が好んで読む経済学者です。貧困や不平等といったものを対象に哲学や倫理、人権等を組み合わせた幅広くも一貫性のある研究は素晴らしいの一言です。スティグリッツと同様に世の中で何が間違っているのかをわかりやすく論理的に指摘してあると思います。日本では、インドに対する見識は一般的には低いと思いますが、歴史も思想も中国に匹敵するスゴイ国です。それを知るにもいい本かもしれません。

スティグリッツ早稲田大学講義録

藪下史郎、荒木一法編著
『スティグリッツ早稲田大学講義録』
光文社
2004年10月20日
2.6 スティグリッツが早稲田で特別講義をしていたとは知りませんでした。早稲田のCOEは、WIN-CLSの方は結構行くんですけどね。GLOPEは知りませんでした。知ってたら行ったのに。現実の経済問題をわかりやすく率直に指摘し、批判するスティグリッツの姿勢は学者としてあるべき姿だと思います。早稲田での講義は、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』に書かれてあるようなIMF批判が中心です。本の後半は、講義の解説と簡単な経済学の説明といった感じでした。

コンプレックスに勝つ人、負ける人

鷲田小彌太
『コンプレックスに勝つ人、負ける人』
PHP研究所
2005年1月5日
2.3 コンプレックスのない人はいないです。でも、コンプレックスを自分でどうやって処理していくかが大切ですよね。卑屈になったり、周囲を恨んでもしょうがないです。プラス思考でいきましょう。先天的なもの(容姿、家柄、IQなど)に対するコンプレックスというのは、自分の考え方を変えるしかないですけど、後天的なものに関しては大抵努力不足なだけだと思います。ちょっと努力すれば克服できるものは結構多いです。私の英語コンプレックスもその一つ。

けいざい心理学!

日本経済新聞社編
『けいざい心理学!』
日本経済新聞社
2004年11月8日
1.30 最近は、電車の中で小難しい本は読みたくない気分なので読み易いものばかり読んでいます。この本もページ数も文章も少なく、挿絵ばかりでサクッと読める本です。世の中思ったようにはいかないよ的な内容ですね。副題の“「気分」と「直感」で経済は動く”がそれをよく表しています。直感の鋭い人っていうのは、羨ましいです。それなりの経験と知識があっての直感ですけどね。あと、用語解説の乾いた説明が個人的には嫌いじゃなかったです。

自分で決められない人たち

矢幡洋
『自分で決められない人たち』
中央公論新社
2004年9月10日
1.27 主として依存性に関する内容です。決め付けないようにとかなり念を押されていますが、かなり誤解を与える内容が多いように感じました。依存に関して偏見を含んでいるように感じますね。あと、勝手に解釈して一人歩きしている感もあります(社会のすべてをこの観点で捉えるのは無理があります)。依存と自立、それぞれに長所と短所があるわけで、依存自体が悪いわけではないです。人間の性格は十人十色だからこそ面白いわけですから。まあ、どんな形であっても度が過ぎていては困りますが。

パラサイト社会のゆくえ

山田昌弘
『パラサイト社会のゆくえ』
筑摩書房
2004年10月10日
1.25 4,5年前に『パラサイト・シングルの時代』を読んで面白かったので、その続編的な本みたいなので読んでみました。今の社会状況というのをとてもよく捉えている内容だと思います。全くもってそういう時代なんですよね。しかし、それをどう打開していくかというところが欠けていたのが残念です。社会学者さんの言うことは、とても説得力があって「いいこと言った!」「その通り!」というものが多いのですが、いくらか深読みし過ぎているものも少なくないようにも感じます。「それは考え過ぎだよ」みたいな。

座右の諭吉

齋藤孝
『座右の諭吉』
光文社
2004年11月20日
1.19 『座右のゲーテ』に引き続き読んでみました。ちょっと小難しい原書を読まなくても内容を掻い摘んでわかりやすく紹介してあるのでこういう本はなかなかよいと思います。もちろん原書をきっちり読んだほうがいいんですけど。齋藤さんではありませんが、福沢の考え方はかなり私なりに似通った部分があるなぁと感じました。人との関わり方なんて特に。しかし、福沢諭吉というのは大した人ではありますが、もう少し欠点というか弱いところも見せて欲しいと感じますね。なんかこれじゃ完璧じゃん。

市場(スーク)の中の女の子

松井彰彦
『市場(スーク)の中の女の子』
PHP研究所
2004年11月5日
1.17 薦められて読んだんですけど、想いのほか好かったです。経済について、世の中について、これほどわかりやすく切実に語られている本はなかなかないと思います。文化や個々の相違に焦点を当てて研究することの大切さを常々感じている私にとって共感を覚える内容でした。考えている人は考えているものです。この本は、本当に誰にでも読める本です。経済系の学生さんに限らず是非読んでもらって経済や市場について考えてもらいたいですね。著者の『慣習と規範の経済学』もいい本です(これは学術書)。

崖っぷち弱小大学物語

杉山幸丸
『崖っぷち弱小大学物語』
中央公論新社
2004年10月10日
1.15 今日明日とセンター試験のようです。全入時代を前に大学間の競争(いろんな意味で)が激化しているとニュースでも新聞でも連日報道されています。世の中には、定員割れの大学、入学難易度をつけることが不可能なFランク大学というのも多く出現してきました。今後は潰れていく大学もどんどん出てくるのでしょう。この本は、そんな弱小私立大学の現状やどのようにしていかなければならないかということが書かれてあります。日本の大学は多過ぎますよね。研究とリベラルアーツの大学に分けた方がいいよ。

座右のゲーテ

齋藤孝
『座右のゲーテ』
光文社
2004年5月20日
1.12 いいですよね、ゲーテ。秋に複式簿記をどんなふうに賛美しているのかを知りたくて読み始めましたが、そんなことはどうでもよくなり、その内容にとても惹かれました。結局、ヴィルヘルムとウェルテル全部読みました。ちょうど壁に突き当たっていたので(この本の副題は、“壁に突き当たったとき開く本”)とても励みになったものです。この本に紹介されているものもとてもゲーテらしい内容です。いい復習になりました。『ゲーテとの対話』読まなくては!

頭がいい人、悪い人の話し方

樋口裕一
『頭がいい人、悪い人の話し方』
PHP研究所
2004年7月2日
1.9 読みやすい本です。勉強はできなくても頭の悪い人にはなりたくないですよね。読みながら、いるいるこういう人、自分もそうかもしれないなんて思いながら普段の会話を省みてみるとよいのでしょう。少なからず、人間みんな自分勝手なもんですから、よっぽど人間ができているか(生き仏?)、関係が薄いということ以外に不愉快な思いをさせない人はいないでしょう。今、気付きましたがblog形式にして、ほとんど岩波だったんですね。初PHP。

金融工学とは何か

刈屋武昭
『金融工学とは何か』
岩波書店
2000年5月19日
1.8 金融工学というと、難しい数学が駆使されていて文系の私には理解できそうにないですが家にあったので読んでみました。リスクのあるところに金融が必要となってくるというコンセプトで書かれている本です。不確実性の高まる経済社会で、リスクはあらゆるところに潜んでいますよね。最近では、相次ぐ災害が起きていますが、保険も金融。不確実性の高まる経済社会で金融の知識は必要ですよね。この本が書かれたのが2000年、今年はもう2005年、経済環境も金融もかなり進化していると思います。金融工学も難しくなってるんだろうなぁ。

変革期の監査風土

変革期の監査風土
柴田英樹
『変革期の監査風土』
プログレス
2002年12月15日
1.7 久々に会計関連の本を読みました。まあ、本自体も久々だったりするんですけど。監査風土に焦点を当てながら監査制度の問題点を指摘していくという非常に面白い本でした。常々、物事の本質には文化というのが深く関わっていると考えているので、こういう研究は非常に意味深いものだと思います。また、各国の文化や会計制度についても触れられているので、国際会計を勉強する方には読んで損はないと思います。これから会計士を目指すという人にも会計事務所の話も盛り沢山なのでお勧めです。

映像とは何だろうか

吉田直哉
『映像とは何だろうか』
岩波書店
2003年6月20日
12.13 映像にしろ何にしろ何かを制作するときにどれだけ意味(意識)を持って行うかということが重要だということを感じました。そういう意味で、NHKでディレクターをされていた著者は番組作成に高い意識を持って臨んでいらっしゃったと言えます。このくらいの意識を持って番組を作成してもらいたいものですね。この本に出てくる1962年放送の『日本の模様』は、少し前にアーカイブスで見たことがあります。日本の家紋のデザイン性とこの番組の発想は素晴らしかったです。

裁判官はなぜ誤るのか

秋山賢三
『裁判官はなぜ誤るのか』
岩波書店
2002年10月18日
12.8 全く関係のない本を読むときが一番安らぐ時間と言えます。さて、この本は冤罪がなぜ起こるか、起こさないようにするためにはどうすればよいかということが元裁判官の著者によって書かれてあります。「疑わしきは被告人の利益に」という言葉に表される基本的な思考が裁判官において希薄であることが問題であると指摘しています。しかし、刑事裁判における有罪率が99.9%というのは確かに異常です。裁判官がいる意味があるのかないのか。これじゃ検察官が有罪か無罪かを決めているみたいですよね。

宇宙人としての生き方

松井孝典
『宇宙人としての生き方』
岩波書店
2003年5月20日
12.2 ものごとを考えるうえで、一番大きな視点といえるのが宇宙の話でしょう。宇宙の話を進めるにしても対照や視点を明らかにしないと話は進みませんが。この本は、そういうところが非常にきちんとしていて論理一貫性があり、分かりやすいと言えます。章のはじめに知求ダイヤグラムとして8個の図が示されています。これ何かに使えるかも。この本のように、非常に論理的に宇宙をみていくのもいいですが、宇宙のロマンに浸るのもまた一興。

市民科学者として生きる

高木仁三郎
『市民科学者として生きる』
岩波書店
1999年9月20日
11.25 かなりクセのある方だということがひしひしと伝わってくる本でした。でも、その気持ちや考え方には共感します。しかし、自分に誠実であり続けることはそう簡単にできることではないです。高木さんのような市民科学者として生きるのはかなり難しいと思いますが、私自身かなり考えさせられるところがありました。研究が研究を呼ぶ世界にはまりこみ、何のための科学なのかということや人々に求められているものからどんどん離れていってしまうということが多々あると思います。まあ、そこから生まれてくるものもあるとは思いますが。う〜ん、難しい。

科学の目 科学のこころ

長谷川眞理子
『科学の目 科学のこころ』
岩波書店
1999年7月19日
11.24 この本を読んだのは先週なんですけど、更新できなかったんで。でも、確実に最近読む量が減ってますね。まあ、それはいいとして、著者が行動生態学の学者さんということで主に生物関係の話が多いです。あと、科学における過去の偉人の話ですね。振り返ってみると兎角いろいろな話があったように思います。感覚的な常識にとらわれないことの大切さ、つまりは科学の目によって見ることによって真実が見えてくるということですね(何かクドイ言い方)。人文・社会科学も自然科学も関係なく。

社会責任投資の基礎知識

秋山をね・菱山隆二
『社会責任投資の基礎知識』
岩波書店
2004年4月6日
11.13 貰い物の本のなかに、アクティブ新書が一冊紛れ込んでいました。内容は、書名のとおりです。最近、企業の不祥事のニュースが多いですが(いつでもあるとも言えますが)、このような不祥事などを起こす企業はSRIには入らないようになっているのでしょうね。SRIの基本は、企業の倫理、法令順守であり、その企業がいかに誠実に経営をしているかです。しかし、これは企業に限らず人として守るべきことでしょう。でも人間、欲に駆られて悪いことしがちですよね。

私の脳科学講義

利根川進
『私の脳科学講義』
岩波書店
2001年10月19日
11.11 ノーベル賞受賞者の利根川先生です。先生の歩まれた道や脳科学に関する内容もかなり面白かったですが、最後に収録されているインタビューがよかったです。科学者に必要なことは、楽観的であること。つまり、いろいろ難しいことがあっても滅入らない、諦めない人であって、そしてプライオリティがしっかりしている人だそうです。感銘。あと、頑張って研究し続ければ、いつか大きな発見ができると思い込んで、自分の心理をコントロールできることが大切だとも。人間プラス思考が大切ですね。まあ、勘違いや見当違いなプラス思考はダメだけど。

日本人のための英語術

ピーター・フランクル
『日本人のための英語術』
岩波書店
2001年11月20日
11.9 本棚をよく見たら英語に関する新書がまだありました。ということで早速読んでみました。この本は易しい内容だったのでとてもよかったです(私の英語レベルでは)。数学者かつ大道芸人といったあのピーターさんがこんな本を書いているとは。日本人の完璧主義や寡黙なところが英語を話すのにかなりマイナスだというのは的を射ていますね。内容は、日記の勧めや英単語のゲームなど。英語が苦手な人にお薦めです。

若きウェルテルの悩み

ゲーテ作/竹山道雄訳
『若きウェルテルの悩み』
岩波書店
1951年4月25日
11.6 よかったです。『修業時代』や『遍歴時代』と比べて精神的なレベルとしては低い内容ですが、青年のもつ複雑な心がよく表されていると思います。最後に解説がついていますが、こっちのほうが意外に面白かったような気もします。どうも私は途中に出てくる挿話が苦手です。私の脳みそはそんなに柔らかくないんで。ゲーテがこれを書いたのが25歳。納得です。歳とってこんな話を書いていたら、未練がましいし、ちょっとどうかとも思います。本人が読み返したくないのもよく分かる。『修業時代』や『遍歴時代』は、青年が見る世界なんかより桁外れに広く、内容も深いです。

きょうのできごと

柴崎友香
『きょうのできごと』
河出書房新社
2004年3月20日
11.3 映画を観たので原作を読んでみました。日テレ系列のニュースではありません。映画を観て原作を読むこと自体が初めてでした。こういう本を読むのも。別にこの映画が凄くいいということでもないですけど。何が起きるわけでもない平凡な映画です。個人的にはこういうの好きなんですけど。ハリウッドみたいなドッカンドッカンやるのよりは。原作も映画と基本的には変わらないというかほぼ同じでした。台詞まで。壁に挟まれた男と鯨の座礁がないだけで。最近観た映画で面白かったのは、“恋の門”かな。“茶の味”もよかった。あと、“笑の大学”が観たい。

武士道

新渡戸稲造著/矢内原忠雄訳
『武士道』
岩波書店
1974年11月18日
11.1 今日から新札が流通し始めて、新渡戸稲造の5千円札は消えていく運命ですが、『武士道』は日本人が忘れてはならない素晴らしい精神が詰まって消えることのない名著でしょう。昨今の世知辛い世の中では、武士道精神を育むこと自体が困難ともいえますが、だからこそこういう人間として生きていきたいですね(切腹はなしですけど)。斯くも今の日本は、精神的に崩壊してますから。メディアを中心に誠意のないものが多過ぎます。結果やお金も大事ですけど、もっと大切なものがあるはずなんです。

ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代(下)

ゲーテ作/山崎章甫訳
『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代(下)』
岩波書店
2002年4月16日
10.28 これでとりあえず、全巻制覇しました。でも、なんだこの終わり方は。っていうか、これで終わりなのだろうか。ん〜、どうなんだろう。この下巻も例のよって最後の70ページ弱が182つの文章がずらずらと載せてあります。全体を通して感じたことは、ゲーテはいろいろとよく考えていた人だということです。これだけの内容を含ませながら小説をまとめることは凡人にできるものではないですね。全巻制覇といいましたが、『若きウェルテルの悩み』は『修業時代』や『遍歴時代』と繋がりがあるのかな(そうだったら、まだですね)。次は、これを読んでみるか。

女子大生会計士の事件簿4

山田真哉
『女子大生会計士の事件簿4』
英知出版
2004年10月8日
10.23 はい、萌ちゃんです。続いてますね〜。もう4巻ですか。コミックにもなってますしね〜(読んだことないけど)。しかし、読み易いのはいいんですけど、さすがに時間がもたないです。この分量で¥997は、レンタルビデオの方が確実に時間単価が安い。ひとつの話ごとに挿絵が入っているんですが、電車で読んでいるのが少し恥ずかしかったです。TACの広報に連載されているのでTACに通っている人なんかは書籍が出版される前にはもう読んでるんでしょうね(私は大原でした)。登場人物は、みんな日本史から引っ張ってきてますね。ちょっと共感。山田先生は、これ以外にも結構本出されてますよね。読んだことないけど。

ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代(中)

ゲーテ作/山崎章甫訳
『ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代(中)』
岩波書店
2002年3月15日
10.22 意外に近くの本屋にありました。“遍歴時代”は、手紙が多いです。あと、この巻においては、ひとつの話(章)が非常に短い(特に最後にかけて)。それはそれで読み易いですが、短過ぎるとさすがに内容が乏しい。あと、この本の231〜295ページは、「遍歴者たちの精神による考察」と題して、とても意義深い文章たちが177つ載せてあります。こんな便利なものがついてくるとは。しかし、この部分を読んでいるとこの本の内容の濃さが分かりますね。

大学生の学力を診断する

戸瀬信行、西村和雄
『大学生の学力を診断する』
岩波書店
2001年11月20日
10.17 一時期かなり議論された学力低下論争の火付け役ともなった『分数のできない大学生』『少数ができない大学生』など本をまとめたものですね(たぶん)。新学習指導要領への反対にかなり説得力のある本です。当時、これらの本を見たときの衝撃は大きかったです。でも、「そんなもんだよな」とも思いました。何せ、私自身が学力低下の申し子と言える存在です。高校数学はかなり怪しい。何が悪い?科目数が極端に少ない受験制度か?その受験勉強一本槍の教育か?ともかく、私は学生のうちに高校教育を自分なりにやり直さなくてはならないです。
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