ビジネス・経済書

世界は経営でできている

岩尾俊平
『世界は経営でできている』
講談社
2024年1月20日
20240312 岩尾先生の新刊です。本当に一般向けなので、非常に読みやすかったです。平成生まれでいらっしゃいますが、大御所の大先生が定年後に徒然なるままに書いたエッセイを書籍にしたような雰囲気が漂っています。本書で伝えられている内容は、最後の一文の通りです。「人間とは、価値創造によって共同体全体の幸せを実現する、「経営人」なのである。」世の中の役に立ってなんぼ、というのを忘れて、おかしなことをするから、おかしなことになる。「歴史は登場人物の名前以外は似たような出来事の繰り返し」なんですよね。いつも本来の目的に立ち返って、社会生活を営んでいきたいものです。「部分に気を取られて全体を見失う、短期利益を重視して長期利益を逸する、手段にとらわれて目的を忘れる」私たちの生活場面のいたるところに経営はあります。何かうまくいかないことがあれば、それはうまく経営できていないのだと思います。ぜひ読んでみてください。

たかが会計

福井義高
『たかが会計 資本コスト、コーポレートガバナンスの新常識』
中央経済社
2021年6月15日
20240218 圧倒的積読のなかの1冊。『企業会計』の「ひょっとすると役に立つかもしれない会計のはなし」を書籍化したものです。印象論で語られていることを丁寧に根拠を示して否定する、皮肉たっぷりの福井節がとてもおもしろいのですが、いかんせん読み進めるのに集中力がいるので進まない。文章はコンパクトなのですが。誤魔化さずに真実を見つめるために、研究って大事だなって思わされます。個人的には、悪い動機より無知の重要性のところなんかが知的好奇心を揺さぶられました。世間ではモラルがひどく騒がれていますが、角度というか観点が間違っているように思います。何にせよ目的に沿った適切なインセンティブが、自分の描くよりよい世界に繋がると今は考えているし、内的動機が世界を変えていく原動力だと思っています。根源的無知を認識することは大事。最後の実測予測F/Sもよかったです。会計は自由だ!

日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか

岩尾俊平
『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本”式”経営の逆襲』』
光文社
2023年10月30日
20231221 『日本”式”経営の逆襲』を読んでいなかったので、読みました。新書で読みやすかったです。タイトルは、すでに持っている経営技術(強み)を捨てて、弱みを取り入れる笑えない現状を表現されています。個人的には最後の方のイノベーション自体のマネジメントのシミュレーションがおもしろかったです。こういうのやってみたいと思いました。「予言の自己成就」「信念の自己強化」に嵌ると加速度的に価値創出が高まるのは何となくわかります。日本が文脈に深く依存しているのは、良くも悪くも感があります。なんかよくわからないけど、たぶんそういう空気っていう感じで物事が進んでいる。これを抽象化・論理モデル化していくのが私の職業なのでしょう。あと、支配された空気に弱い。そこに事の真偽は関係ないという。。いい意味で、信念が実質をもたらし、その実質がまた信念を強化するという好循環を作りたいです。

コーポレート・ガバナンス

花崎正晴
『コーポレート・ガバナンス』
岩波書店
2014年11月20日
20231126 コーポレート・ガバナンスというと、企業統治に関する規制のイメージがあったのですが、企業経営の非効率を排除して、企業価値を高めるメカニズムということでしっかり学習できたように思います。アメリカ、日本、東アジアのガバナンスの特徴について、データや研究成果をもとに説明されている本ですが、本書で筆者が発信したかったのは、90年代以降の日本における不良債権問題は、ガバナンスが効いていなかったメインバンクシステムによって長期化したという研究結果だと思いました。株主との共謀、実態の隠蔽といった銀行の状態をエントレンチメントと表現されていました。組織には、効果的な外部からの規律付けが必要なことがわかります。ガバナンスの問題に限らず、世の中は確実によくなっているのですが、なかなか皆が幸せに暮らせる仕組みとしてうまく設計ができないものです。むずかしい

物語思考

けんすう(古川健介)
『物語思考 「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』
幻冬者
2023年5月8日
20230926 久々に自己啓発っぽい本です。著者の言っている通り、精神論ではなく「やり方(ハウツー)」を提供している本だと思いました。なりふり構わず頑張れを、きちんと体系化してやることを具体化したものと言えます。そういう具体的な部分は、失敗していいから自分のやりたいようにやりたい気持ちが強い私にとっては刺さりませんでしたが、それ大事!だと思ったのは「自分の設定した夢や目標を変えるのに躊躇がない」「アイデアを温めてはいけない」「学習初期に無駄なルートを大量に試すのが成功に近い」といったところでした。いろいろ書きたいことは山ほどあるのですが、書き始めると止まらなそうなのでやめておきます。誰もわからない将来に対してキャリアプランを立てるより、キャラを作って、その場その場で演じていくのがよいと思います。あと、人生はエイヤっていうのが大事。

13歳からの経営の教科書

岩尾俊兵
『13歳からの経営の教科書 「ビジネス」と「生き抜く力」を学べる青春物語』
KADOKAWA
2022年6月29日
20230107 年末に日記を書いたときに読書量の激減に触れて、せめて飛行機で1冊。と思いスマホに入っていた本書をチョイス。全くの別物としているものの、著者の実体験がベースというのはスゴいです。中学生の頃の私は走ってしかいませんでした。放課後株式会社を設立して、プロモ動画を制作しているくだりで頭によぎったのが“株式会社ガンダム”。「飛べる踊れるエアリアル〜」水星の魔女関係者で本書を読まれた方もいないこともないでしょう。物語(縦書き)もいいのですが、教科書(横書き)部分が経営についてコンパクトにまとまっていてとてもよいです。ただ、解像度が低くて、読みづらかったです(webブラウザ上のebookjapan)。あと、中学生にはやや難しいかな。でも、一人でもビジネスや経営をしたいと思う人が出れば、いいなぁと思いました。

マクロ実証会計研究

中野誠、吉永裕登
『マクロ実証会計研究』
日本経済新聞出版
2020年6月19日
20210328 最近、中野先生の記事や論文を読んでいたので手に取りました。「最先端の研究を一般読者にもわかりやすく」ということですが、会計・ファイナンス・経済の初心者にはさすがに難しいかな、とは思います。結構な数のドッグイヤーになっているので、何を紹介するか迷うところですが、実証研究のいろはや、(くだけた感じの)研究者界隈の話は、この本ならではでおもしろかったです。一般の人からすると、当たり前の話を、難しそうな検証を通して、難しく説明しているように思われかねないですが、私は新しい領域の開拓というのは読んでいてテンションが上がりました。ガチガチの学術書は眠くなるし根気がいるのですが、こういう読みやすい専門書は貴重です。そういう意味では『企業会計』の連載記事はいいですね。Python、ニュートン、数学、5月号からは本書のテーマでの連載も始まりました。いつの間にか、データ解析なしには会計は語れない時代になってしまいました。理屈をこねくり回していた頃が懐かしい。

今日から使える行動経済学

山根承子、黒川博文、佐々木周作、高阪勇毅
『今日から使える行動経済学』
ナツメ社
2019年4月1日
20210411 6,7年前くらいから実証系に移行していかないと、、と思いながら計量を勉強しないとなぁと本を買ったりしてきましたが、手付かずのまま。そうこうしているうちに行動経済学がおもしろそうだと『経済セミナー』なんかをチラ見しているうちに、いつの間にかサラッと読むように手元に置いていた本です。目次よりも索引を見た方が、扱っている内容がわかりやすいです。ざっと読んだ感じでは、プロスペクト理論の価値関数(左右非対称な傾きのS字型の曲線)がキーだと感じました。状況によって差がわかりにくくなる心理、見せ方・言い方で印象が変わることを使用して詐欺師まがいのことをする人たちの手法に通ずるところがありますね。役立つのは、モチベーション管理かな。ナッジに関連づけて、研究テーマ考えるとおもしろくなりそうなんですが、本格的に勉強しないと先に進めませんね。

会計の世界史

田中靖浩
『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』
日本経済新聞出版
2018年9月26日
8B99E619-ED17-4115-ACF4-546D6EF1238F 『会計の世界史』読み終えました。↓の本は簿記・会計、ファイナンスの繋がりを理解する良本でしたが、本書は簿記、財務会計、管理会計、ファイナンスの違いを歴史から学ぶのにもってこいです。どうしても大学等の授業では、別々に学ぶので別物に感じてしまうのですが、同じ対象物を違う観点から捉えているに過ぎません。この間に感じたのは、教科書的な内容+αで、歴史から学ぶと無味乾燥な公式にも少し人間味が出てくるのかな、ということです。ビジネスを学ぶ際に必ず出てくる人や会社も会計の歴史にはもれなく登場してきます。会計=経済の歴史でもあるので。話は変わりますが、改めて歴史から学ぶっていうのは、重要だなぁと感じました(失敗や過ちを繰り返さないために)。JGAAP、USGAAP、IFRSをのび太基準、ジャイアン基準、スネ夫基準と呼んでいるのはおもしろかったです。

会計の地図

近藤哲朗、沖山誠、岩谷誠治(監修)
『会計の地図 「お金の流れ」がたった1つの図法でぜんぶわかる』
ダイヤモンド社
2021年3月16日
20210328 次は『会計の世界史』をと言いながら、本書です。会計初心者用の本です。いい本に出会えたと思います。自分では言語化できなかった(表現できなかった)、ストンと理解できる説明が体現されていて、爽快な気持ちで読めました。単なる財務3表の繋がりだけでなく、社会とのつながりを意識しているのがとてもよかったです。のれんをゴール(キーワード)にして説明するパート2部分は秀逸です。最後のパート3も次に繋がる(繋げる)内容で惹きつけるものがありました。簿記・会計やファイナンスの授業では、繋がりを理解してもらうことを意識しつつも、なかなかコンパクトにうまく説明できなかったのですが、本書の図解を利用しながら、解説をアップデートしていこうと思います。

会計が動かす世界の歴史

ルートポート
『会計が動かす世界の歴史 なぜ「文字」より先に「簿記」が生まれたのか』
KADOKAWA
2019年2月1日
IMG_6121 更新が滞っています。いつ購入したのかは覚えていないのですが、『バランスシートで読みとく世界経済史(2014年)』や『帳簿の世界史(2015年)』に始まる会計史ブームで数冊購入したなかの1冊です。学生時代に会計史はぼちぼち触れていたので、大方知ってはいるのですが、文字より先に簿記(記録)の部分は、+αが多くておもしろかったです。会計学とは違う楽しめ方ができるのでいいですよね(会計を勉強するモチベーションにもなる)。近代会計の話の前置きとなる、なぜ産業革命がイギリスだったのか、その関連の農耕は人を豊かにしなかった(産業革命まで多くが貧しかった)は、とてもよい歴史認識になりました。学者先生が書くものより、厳密さにはかけるのでしょうが、とても読みやすくてよいです。この辺のおもしろさを学生には伝えたいのですが、なかなか興味を持ってもらえないのは伝え方が下手なのだと思います(反省)。『会計の世界史』や渡邉泉先生の本も中途半端になっているので、読んで載せたいと思います。

ニュータイプの時代

山口周
『ニュータイプの時代 -新時代を生き抜く24の思考・行動様式』
ダイヤモンド社
2019年7月3日(電子版)
20200209 『世界のエリートは〜』から嵌ってます。本書は、VUCA化が進む今日、オールドタイプ(「上司からの命令で動くエリート」「大企業の専門家」)がニュータイプ(「内発的動機に駆動されるアマチュア」「アマチュアのアントレプレナー」)に取って代わるよ、という内容です。「一所懸命」という価値観の危うさや、実績や従順さに応じてポジションを与えるということが危険だというのは、とても理解できるところです。カオスな世の中は何がどこでどう転ぶか、わかりません。好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテイクを大事にしていきたいものです。振り返ると人生の重大選択において、直感に従って常識から逸脱してきたことで、自分に合った生き方が今もできていると思っています。何より大事なのは、意味であり、モチベーションです。あと、未来はわからないし、正解に価値はないということ。

「無理」の構造

細谷功
『「無理」の構造』
dZERO
2019年4月1日(電子版)
20190712 無理という単語に反応してDL。世の人の誤った認識を、当然のような法則をもとに客観的に説明している本なのかなぁと思いました。キーワードは、非対称性。あと不可逆性でしょうか。「部分を全体だと思ってしまうこと」(に気づかないこと)は本当に厄介というのは、筆者の気持ちがかなり出ていたように感じました。あと、「扉は内側から、閉じこもっている人からのみ開けることが可能で、外側からはどんなに努力してもこじ開けることはできない」という天岩戸の法則は、納得の説明でした。見えている・見えていないの溝は深いです。

直感と論理をつなぐ思考法

佐宗邦威
『直感と論理をつなぐ思考法 -VISION DRIVEN』
ダイヤモンド社
2019年3月6日(電子版)
20190622 直感を大事にしているので、そこから紐解ける何かがあればとDL。前の本で、非効率と無駄に満ちた偏愛こそが価値なのではといった考えと繋がっているのですが、本書では「妄想」を駆動力にできる人・組織は強いというコンセプトです。「成果を管理するための目標」ではなく、「人のモチベーションや創造性を引き出すための目標」が大事という、結局モチベーションかい、といったところでした。さて、本書の面白いところは、思考法について、「カイゼンの農地」「戦略の荒野」「デザインの平原」「人生芸術の山脈」といった表現で世界の全体像を捉えて、我々の内面を中心に思考過程を展開しているところです。方法論については、個人的には刺さる部分は少なかったです。「個人の内面から湧き出る得体の知れない妄想・直感」からスタートすることが必要とのことでした。私は自律分散型組織が好きです。

モチベーション革命

尾原和啓
『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』
幻冬社
2017年10月(電子版)
20190523 モチベーション大事ですよね。本書は、若者のモチベーション論です。無理とわかりつつも、定義上、自分もぎりぎりミレニアル世代と言っていいんじゃないかと思っています。ただ、団塊の世代の感覚は持ち合わせていないということは言い切れます。モチベーションを達成や快楽に求める旧世代に対し、本書で乾けない世代と表現されている若者は、意味合いや良好な人間関係、没頭に求めているという話です。ちょっと違和感のある部分もありますが「“労力の割に周りが認めてくれること”が、きっとあなたに向いていること」というのは、そうだと思います。人工知能には、理解することはできないであろう非効率と無駄に満ちた偏愛こそが、これからの価値なのかもしれません。また、やりたいことがない人にとっては、これからの時代は生き辛いと述べられています。生きやすいんだか、生きづらいんだか。

残業学

中原淳+パーソナル総合研究所
『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』
光文社
2018年12月20日
IMG_1533_2 紙の本は、超久しぶり。偶然にも同じ中原先生の本です。働き方については、常に悩んでいるわけで手に取った次第。超長時間残業する人は、長時間残業をする人より、若干幸福度が高いという研究結果は、かなり病んでるなぁと思いました。「仕事」「時間」の2つの無限を持っている日本の職場から、青天井の残業が発生してしまうというのは、その通りでしょう。ポイントは、無限に仕事をしてしまうことは、その人の意志や勤勉さからではなく、単なる「慣習」であるということです。残業削減施策でマズいのは、残業のブラックボックス化、組織コンディションの悪化、施策の形骸化ということで、組織への信頼低下、改革ゾンビになるというのは、耐性がついてしまうことも含め、よくよく気をつけなければならないですね。

武器になる哲学

山口周
『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』
KADOKAWA
2018年5月18日(電子版)
20190504 プラチナウィーク唯一の1冊。とても面白い1冊でした。『世界のエリートはなぜ「美意識」〜』を読んでから、ファンになりつつあります。副題にあるように50のキーコンセプト、そして最後に本が紹介されています。哲学・思想、アートは、苦手な部類なので、コンパクトにまとめてもらえるととても助かります。自分なりにそうだなって思ったのは、「説得より納得、納得よりは共感」、「ロゴス、エトス、パトス」が必要、「自由の刑に処されている」、「悪とは、システムを無批判に受け入れることである」、「反論の自由」の大切さ、「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」といったところでした。最近、創造力が落ちているのでいっぱい本を読みたいですね。

フィードバック入門

中原淳
『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』
PHP研究所
2017年3月3日
20180827 紙の本は超久々な感。新幹線の移動にて。中原先生の本は、前々から読みたいものが多いのですが、さらっと読めそうな新書をば。マネジメントの定義やフィードバックとは何ぞやといったところから、どのようにフィードバックを実施するとよいかを整理されています。日頃考えていることが整理されているので、示唆に富んでいて有用でした。研究にも言えることですが、トライアンギュレーションは大事ですね。果てさて、つくづくマネジメントには向いていないと実感する日々ですが、人材育成ほど大事なものはないわけで、日々精進です。フィードバックは「場数」とのことです。

エッセンシャル思考

グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳
『エッセンシャル思考 最小の時間で成果を最大にする』
かんき出版
2014年12月12日(電子版)
20180528 時間が足りない生活に突入して久しいので、再考する材料として読んでみました。大量のブックマークが残るほどに、示唆に富んだ内容でした。要は、本質を見失わないこと、シンプル イズ ベストということだと思います。余裕を持って事に当たることも大事。あと、そうだよねと思った部分としては、「古典は読む者の視野を広げ、時の試練に耐えた本質的な思想に立戻らせてくれる。」「失敗を認めるということは、自分が以前よりも賢くなったことを意味する。」「ほとんどあらゆるものは、徹底的に無価値である。」がありました。

統計学が最強の学問である

西内啓
『統計学が最強の学問である』
ダイヤモンド社
2013年1月28日(電子版)
20170122 数年前に流行った本ですよね。Kindleに落として、ずーっと放置していました。最近は、統計も触るようになったので、出張の移動時間に読んでみました。データマイニング、機械学習、人工知能、自然言語処理、ビジネスインテリジェンス、競合分析、統計解析といった統計学を使用した分野は、今かなりアツいです。身につけておいた方がよい知識であることは確かです。難解なものではなく、端的に言ってしまえば、「十分なデータ」をもとに「適切な比較」をするだけで、経験と勘を超える真実を掴むことができる手法です。本書では、前半の方にその有用性、後半は実際の分析の基礎について説明されています。少し統計を囓ってから読むと読みやすいと思います。なお、一番驚いたのは、著者が自分より若い方だったこと。

情報参謀

小口日出彦
『情報参謀』
講談社
2016年8月1日(電子版)
20160830 かなり面白かったです。確かなデータと確かな分析、これに勝るものはありません。ビックデータの時代とはよく言われますが、世の中の膨大な情報を的確に処理して、課題に取り組むことは必要なスキルだと思います。前例踏襲であるとか、勘で物事にあたるのは、あまり望ましいことではないでしょう。大学にも宣伝のうまい大学があります。まさに情報参謀による情勢分析や話題の作り方が、データに基づいた緻密な戦略に基づいている背景があるのでしょう。これから圧倒的な情報処理で、AIをはじめ、世の中のあり方が変化していくことになります。変える方の立場で、変化を楽しみたいものです。

ミライの授業

瀧本哲史
『ミライの授業』
講談社
2016年6月30日20160815 瀧本氏の本は4年ぶり。twitter(@ttakimoto)での宣伝に負けて購入。14歳向けの「未来をつくる5つの法則」というタイトルでの講義を書籍化したものです。5つのルールのうち、個人的に特に重要だと思うのは「世界を変える旅は違和感からはじまる」「一行のルールが世界を変える」の2つ、その次に「ミライは逆風の向こうにある」、そして「すべての冒険には影の主役がいる」といったところでしょうか。より抽象的なものの方が、本質を突いていると思います。内容は、19名の偉人の話がメインです。私が若い人たちに対して伝えるならば、思い込みや常識を疑う、行動規範よりも基本原則を守る、そして世代交代だけが世の中を変える、という点になります。「未来をつくる」、なんとワクワクする言葉なのでしょう。

「書斎の会計学」は通用するか

田中弘
『「書斎の会計学」は通用するか』
税務経理協会
2015年10月1日
IMG_0401 2年半ぶりの田中先生の本です。例によって、『税経通信』の連載を書籍化したものです。そして、言わずと知れたIFRS&時価会計批判が綴られています。これまで出版されたすべてに目を通していますが、やはり読みやすくて面白い、田中先生の本はこれに尽きます。今回は、あわせて研究会で田中先生ご本人から、本書の話を聞けたのでさらによかったです。IFRSの出自から、その背景にある国際政治経済社会の動向、従来の会計観とは全く異なる論理を理解するには良書だと思います。ただ、批判精神旺盛なので、自分なりに客観性を持って読むことも大事です。制度会計に対して、疑問をお持ちの際は、是非手に取ることをお勧めします。

会計研究入門

鈴木義夫、千葉修身
『会計研究入門 “会計はお化けだ!”』
森山書店
2015年3月
IMG_8769 雑誌『會計』の書評に目が止まり、副題も気になって購入してみました。読みやすく分量も少なかったので、すぐに読了。大変おもしろかったです。著者は、「存在していないモノをあたかもそこにあるかのように見せかける」機能をもって会計をお化けと呼んでいます。そして、現代において「会計は、マネーによるマネーそれ自体の獲得・運用に資する当該情報の産出手段の一つとして重要な役割を演じている」と批判的に論じられています。それは、「現代の資本主義経済が、本来一体となって動くべきモノとマネーとが分離して、マネーが実体的裏付けのない、国家による「信認」だけが頼りの段階に立ち至った」そして「そうしたいわばニセ物が本物であるかのような顔をして跋扈している時代」ということであり、「精神のない専門人、心情のない享楽人(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』より)のすること」と喝破しています。50年以上にわたり会計研究に携われてきた方の言葉は非常に明快です。

帳簿の世界史

ジェイコブ・ソール著、村井章子訳
『帳簿の世界史』
文藝春秋
2015年4月10日
IMG_8712 著者に敬意を表したい素晴らしい本でした。3月に読んだ『バランスシートで読みとく世界経済史』に続いて、会計に関する良書が続きますね。本書は、会計責任を果たすことの難しさを700年の財務会計の歴史を紐解きながら明らかにしていきます。一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計である、繁栄する社会では、よい会計慣行や商業文化が根付いていただけでなく、それを支える健全な倫理観や文化の枠組みが存在し、会計を無視したり操作したり怠ったりしがちな人間の性癖をうまく抑えていたということが非常に単純明快に語られています。度重なる金融危機に脅かされる現代は、会計の責任の歴史を振り返るのにふさわしい時期ではないかという著者の問いにも頷けます。会計は職業倫理の基本要素の一つです。「共和国に必要なのは、教育水準が高く、己を律することができ、高い職業倫理を備えた証人である、そうした証人は事業経営においても政府においても役に立つ」というパチョーリの持論に同意するとともに、会計の有用性は、責任を問う手段としての脅威であることも然りです。会計は「すばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」というのも真であり、「金融システムが不透明なのは、けっして偶然ではなく、そもそもそうなるようにできているのではないか」というのも間違いではないでしょう。

バランスシートで読みとく世界経済史

ジェーン・グリーソン・ホワイト著、川添節子訳
『バランスシートで読みとく世界経済史』
日経BP社
2014年10月20日
IMG_5502 book diary初の研究費による購入本(大学の管理バーコードが付いています)です。紀元前7000年から現代における、簿記・会計の歴史、そしてそれを取り巻く文化・経済を非常にわかりやすく、そして何より面白く書かれた本です。会計の専門家ではない著者と訳者だからこその作品ではないかと思います。複式簿記の素晴らしさやその限界を知るには、大変よくできていると思います。印象に残った箇所は多過ぎて紹介はできませんが、本書の主張はGDPという指標や現在の決算報告書の欠陥(限界)です。現在の物質的な価値に偏った資本主義経済は、新しい会計で進化する必要があると思います。経済に関わる全ての方にお勧めします。

東大合格生のノートはどうして美しいのか?

太田あや
『東大合格生のノートはどうして美しいのか?』
文藝春秋
2009年4月15日
IMG_4897 『東大合格生のノートはかならず美しい』の続編に位置付けられる本です。ノートって、なんでこんなに面白いのかと思わされますね。主として勉強するときにノートテイキングをするわけですが、美しい(ただきれいに書くというのではない)ノートを作るというのは、その背景には“学び”があるのだと思いますし、“勉強を楽しむ”という要素が大きいように感じました。私も昔からノートにまとめるのは好きです。勉強するって、やっぱ楽しいんですよ、きっと。気分の浮き沈みや継続性というのが、ノートを取り続ける上での難しさなのですが、そういう意味で東大生のノートは、やはりスゴイですね。自身の大学受験時代のノートや大学時代の講義ノートも手許にありますが、機械的な部分が多くて、これじゃダメだと思ったりします。今でも講義ノート、研究ノート、日々のメモ帳とノートは必須アイテムで、日々書き込んでいますが、本書でいうテンションの乱れ全開だと思います。あと、研究ノートがある日を境に、プツンと切れたように白紙になっているのが…。

じぶんの学びの見つけ方

フィルムアート社編集部
『じぶんの学びの見つけ方』
(株)フィルムアート社
2014年7月24日
IMG_3699 めっきり読書量が減ってしまっている今日この頃。ようやくの更新です。本書は、いろんな分野で活躍されている26名の方の自分なりの学び方が紹介されています。本当に多岐にわたる面々で、思うところもいろいろありました。私なりに共感した部分としては、“自分の役割を最大限に引き受けてつとめること”、“「ぶれない」より「ぶれる」人間でありたい”、“失敗するとわかっていても、本当に失敗するまで納得できない”、“コンプレックスは「克服」ではなく「共存」する”、“「真似び」からの「学び」”、“ゆったりとした自然な流れの中で起きる「?」と「!」の双発による学び”といった、学校で授業で学ぶものとはかなり距離感のあるものでした。教えるというより、相手が自ら変わっていくような場を与えること、相手に「面白い」と思ってもらうかが大切であろうと思います。“新宿アルタ前で授業をする覚悟”というフレーズがあったのですが、毎回この気持ちを忘れずに教壇に立ちたいものです。

「もう疲れたよ…」にきく8つの習慣 働く人のためのアドラー心理学

岩井俊憲
『「もう疲れたよ…」にきく8つの習慣 働く人のためのアドラー心理学』
朝日新聞出版社
2014年7月30日
IMG_1826 夏にABC本店によったときに購入した本です。そんなに疲れ果てているわけではありません。副題にあるアドラー心理学についての本で、要はものごとは捉え方次第だという話です。「人間の行動には、【原因】があるのではなく、未来の【目的】がある」という考え方は、その通りで結局は皆、自分で思っているようにしか行動していないものです。あと、主観というのは本当にコワイもので、人間関係が拗れる場合、大抵は事実に対して歪んだ捉え方をすることが多いものです。なんだかうまくいかないときには、まわりとズレていることが多く、極端な場合なんかはまわりと合せていったほうがよいとするアドラー心理学には共感しました。何はともあれ、楽観的で建設的な心の持ちようで、すべてはうまくいくと思います。

今、ここを真剣に生きていますか?

長谷部葉子
『今、ここを真剣に生きていますか? −やりたいことを見つけたいあなたへ』
講談社
2012年12月10日
IMG_1216 SBSでふと目に留まった本です。特にやりたいことを見つけたいとか思っているわけではありません。帯に「慶應大学SFCビッグママの人生が変わる授業」とあったので、どんな授業なのか興味が湧いて読んでみました。私には到底できない芸当ですが、語られていることは本質をついていると思いました。特に「社会貢献」や「ボランティア」という言葉の危うさについて、ボランティアの押し売りや美化し過ぎて本質を失っている様子を指摘されているのは、実践されているだけあって説得力があります。「交流筋」を鍛える、という部分があるのですが、コミュニケーションをとり慣れている人から始めるのは、定石ですね。相手との距離感がとれずに負荷をかけてくる方や反応しない方だと、鍛えられるどころか萎えてしまいます。私のようなコミュニケーション下手には、あと数が必要でしょう。生活のリズムの大切さは、事を成す人の共通項だと思います。規則正しい生活こそ、力を発揮する基礎です。

考え方のコツ

松浦弥太郎
『考え方のコツ』
朝日新聞出版
2012年9月30日
IMG_1127 去年『日々の100』を読んでから、たまに読むようになった松浦さんの本です。SBSで見かけて購入しました。こないだ読んだ『100の基本』で十分だったな、というのが率直な感想です。よくある自己啓発系ハウツー本とあまりかわらない印象です。「「なりたい自分」を想像し、きちんと計画してコツコツやっていくより、今、目の前にあることをしっかりと務めて、流れに身を任せたほうがうまくいくと僕は思っています。」というのは、私もそう思っています。その人の経験なのでしょうが。あと、はっきり注意するのは大事だと言われるけど、性格に起因しているものであれば難しいというのも同感です。人間どれだけ失敗して、どれだけ気付きを得るかですね。

会計学のススメ −一度は読んでおきたい会計学の名著−

山下壽文
『会計学のススメ −一度は読んでおきたい会計学の名著−』
創成社
2013年10月20日
IMG_0852 読もう読もうと思って約1年眠っていた本です。会計学を本格的に学ぼうとする方には、打って付けの本ではないでしょうか。洋書も含め、古典から現代に至るまで主要文献が紹介されています。多くが前書きの紹介になっていますが、おおよその内容を把握するには十分だと思います。私の研究室にある本も多く、その多くが院生時代のものなので懐かしく感じました。手元の専門書は、多くが積読になってしまっているので、なんとか時間を作って、こなしていきたいものです。手元にないものは早速amazonで注文してしまいました(すごい広告効果)。あと、誤字脱字が多かったです。以下、今後の研究に向けて。会計基準の設定については、Concept(理論)+利害関係者間のCompromise(妥協)とConsensus(合意)+会社や社会一般に対するConsequence(影響・結果)の4C説を考慮して考えていく必要があります。また、会計基準は、時空を超えた普遍性があるわけではなく、体系的な秩序とその変化の経路を分析し、将来の方向を展望することが研究の課題という斎藤先生の言もまた然りで、その難しさを感じました。

困っている人のためのアイデアとプレゼンの本

福里真一
『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』
日本実業出版社
2014年6月20日
IMG_0731 最近、自分が思っていることが文章化された書籍ばかり手に取っています。思考が偏りそうです。さて、本書は、「宇宙人ジョーンズ」や「エネゴリくん」を作成されたCMプランナーの方が著者で、“電信柱の陰から見てるタイプの企画術”というコンセプトで書かれています。生来、リーダーシップ、積極性といったものが苦手なので、共感しまくりな内容でした。物事はSimple is bestで、説明はプロセスをすべて順番通りに話すことでうまく伝わるし、ひと言でいえるような企画は高い確率でいいものです。表現したいかことがある!というクリエイタータイプと受注体質のノンクリエイタータイプという表現が出てくるのですが、私も後者であると思います(経験則)。また、ひとりの人が整合性をもって考えたものよりも、他の人の違う意見を無理矢理取り込んでみるのも、ふくらみや広がりが出てくるというのも同感です。「人は、自分にできることしか、できない」というのは的確な表現だと思います。あと、一番働いているのは白紙の時間ということです。スケジュールの中の空白ほど重要なものはなく、そこで考えたり、作ったりしているわけで、決して空いているわけではないというのは、なぜか世の中では通じない…。なかなか面白かったです。根暗な人にオススメ。

僕がコントや演劇のために考えていること

小林賢太郎
『僕がコントや演劇のために考えていること』
幻冬舎
2014年9月10日
IMG_0177 私は小林賢太郎作品のファンです。舞台は可能な限り観に行っています。さて、ここのところ説教くさい本が続いているのですが、この本もそういった感があるのは否めないところです。ここに書かれてあることは、コントや演劇に関わらず、すべての職業に通じる話だと思います。賢太郎氏の考えていることは、基本的に私のスタンスと一致していると感じました。「うちはうち、よそはよそ」であるとか「「ウケる」と「売れる」と「有名になる」を分けて考える」というのは、絶対そうだと思うし、基本を忘れずにズレた行動を律しながら、自分の道を楽しみながら極めていきたいなぁと思う次第です。こういう話は(とくに芸事に関しては)、『風姿花伝』のような古典にしっかり書かれてあることでしょう。

100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート

松浦弥太郎
『100の基本 松浦弥太郎のベーシックノート』
マガジンハウス
2012年9月25日
IMG_9941 松浦さんの日々の100の基本と“COW BOOKS”という本屋での100の基本(チェック項目)が短文解説付きで紹介されている本です。仕事場でのチェック項目は、かなり説教臭く感じると思います。まあ、大人になると誰も指摘してくれないので、よかったのではないかと。「100冊の本を読むよりも、よい本を100回読む。」わかってはいても、本については多読の方針をとってしまうのですが、100人と付き合うより、好きな人に100回会った方が相手と自分の本質がわかってくるというのは、なるほどです。古典をしっかり読めば、道徳については言うことないと常日頃から思います。ただ、「本は読むもの、飾るものではない。読んだら処分」蔵書という感覚はないというのは、相容れません(笑)「面倒くさいを楽しむ」“面倒くさい”という言葉は、本当にネガティブに働きます。日頃から気をつけるに越したことはないです。「健康管理が一番の仕事」病気で休むのが、健康管理という仕事を疎かにしたことの結末と捉えるのはその通りです。仕事を通して社会のために何ができるか、これなしに仕事はできませんよね。

センスは知識からはじまる

水野学
『センスは知識からはじまる』
朝日新聞出版
2014年4月30日
IMG_9855 タイトルを見たとき個人的にはセンスをアイディアに変換しました。水野さんの作品はとても好きで、著書もかれこれ6年くらい前ですが『グッドデザインカンパニーの仕事』を読んだことがあります。「センスのよさ」を数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力と定義されています。社内説得の道具となりがちな市場調査の功罪についても触れられていました。人の感覚はとても敏感なもので、理由はわからないけど、高い精度で丁寧につくられたものであることは鋭く感じ取れるものです(言葉を巧みに使って騙すものは除きますよ)。相手を小手先で欺いても通用しない(続かない)のは自明で、相手を欺かないための精度が必要というのは共感せざるを得ないです。

揺れる現代会計 ―ハイブリッド構造とその矛盾

石川純治
『揺れる現代会計 ―ハイブリッド構造とその矛盾』
日本評論社
2014年8月20日
IMG_9643 前期に会計学特別演習で使用していた『経営財務』の記事が書籍になっていたので改めて読みました。『経営財務』にはなかったシャム・サンダー先生と井尻先生との対談は、最高に面白かったです。会計アカデミズムがどう貢献できるかということについて、相対化を軸に話は進んでいきます。対談では、better accounting、better market、better societyと、何が「より良い」のか、どう繋がっているのかという、難しいですが重要な話が多く出てきます。会計基準について、初期のいくつかのパラグラフのものから、今日数千ページの細則ができて改善したのかという問いは鋭いです。教育についても面白いことが書いてありました。容易な「なに」から「なぜ」へ。そして「なぜそうでないのか」という問い。最後の問いは、すごく重要ですね。本文中にもありますが、大抵2度、3度のなぜで自分の知識の限界に行き詰まってしまいます。日本の研究スタイルを華道や茶道や能に例えられているのは、なるほどでした。

他人を攻撃せずにはいられない人

片田珠美
『他人を攻撃せずにはいられない人』
PHP研究所
2013年12月2日
IMG_9642 久々に本を手に取りました。学会シーズンに入って、移動が多いので売店でふと購入。社会生活を送る以上、必ず他人との関わりは避けられません。攻撃欲・支配欲の強い人は確かにいます。好感を与える仮面の下に破壊衝動を隠して、そっと忍び寄ってくる、うわべは優しくて善良そうなのに相手の弱点を繰り返し指摘して傷つけるような人です。自信がなく、自責の念が強い人は、操られてしまいがちです。SATCの言葉らしいのですが、フレネミー(フレンド+エネミー)というのは言い得て妙ですね。本書のスタンスは、そういう人は、基本的に変わらないので自分が変わるしかない(対策をする)というものです。読んでいて思ったのは、要はヤクザですよね。真の意図は隠しながら、心理的負担を与えながら相手を追い込んでいく。気を付けたいものです。こういうのを読んでいると世の中世知辛いなぁと思ってしまいます。

ゼロからの現在価値計算とDCF法(入門編)

ふくしままさゆき
『ゼロからの現在価値計算とDCF法(入門編)』
花嶋生花
2014年2月13日(電子版)
20140818 昨日に引き続き、¥99の電子書籍です。経法大→瓢箪山の15分で読めます。簿記や原価計算の授業をしていて、学生が躓きやすいのが割引現在価値です(おそらく経済学でも同じでしょう)。ゆっくり考えればわかるはずなのですが、慣れないとどうしても頭がこんがらがる代物です。どんな解説なのか興味があったので読んでみました。読んでいて特になるほど!という内容はないのですが、簡潔に説明されているので、根気がなくても読みこなせるというのがいいところでしょうか。敢えて挙げるとすれば、棒グラフは視覚的にわかりやすいし、“年金”の意味(あの年金ではないこと)は、意外と教科書には書いてないかもしれません。思いつきですが、数学が苦手な人のために、数式の解説も含めた説明がある本があるとわかりやすいかもしれませんね。

普通の女性会計士のありえない日常

高柳融香
『普通の女性会計士のありえない日常』
幻冬舎
2013年3月20日
IMG_6119 あっという間に新年度目前です。いつ購入したのかは覚えていないですが、手許にあったので読んでみました。会計士(監査法人)の職場というもののリアル?が垣間見える1冊といったところでしょうか。どこにでもある職場の下世話ネタ(愚痴)ではありますが、面白く読めます(だからこそ?)。気分を害す方もいらっしゃることでしょう。まあ、公認会計士という夢を抱いている方は、ひとつの視点として読んでみてもいいかもしれません。士業というのは、無職でも自営業として、失業給付の対象にならないというのは、結構衝撃でした。

もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?

田中康雄
『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』
すばる舎
2011年2月25日
IMG_4428 今までなかなか表面化しなかった“周りの人からするとできて当たり前だけど、自分にはできなくて当たり前”といったことが少しずつ理解されてきています。現代社会を生きていくなかで、大事な視点だと思う今日この頃。誰にでもある性格上の凸凹(脳の発達のアンバランス)が生活に支障をきたすと障害となるわけですが、本人さえ気付けないことが多いようです。性格の凸凹程度に収まっていると思いますが、コミュニケーションは生来苦手(苦痛といったほうが近いか)ですし、几帳面な事務仕事は得意な方です(だと思っています)。毎日不安でいっぱいだし、思ったことを素直に言ってしまい失敗することもしばしばあります。誰にでも得意・不得意があるものです。最近は、情報技術の発達のお陰で、効率よく多くの情報処理や分析が可能になり、ホワイトカラーの仕事では、特定の仕事のみを行うのではなく、一通り何でもそつなくこなせるオールマイティな能力が求められるようになっています。なんでも普通にこなすというのは、実は普通ではなく、この普通ではない普通を求める傾向が、世の中を窮屈にさせている原因なのかもしれません。

ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>

長沼博之
『ワーク・デザイン これからの<働き方の設計図>』
阪急コミュニケーションズ
2013年10月7日(電子版)
20140129 何か読もうかとiPhone上に積読されているiBookとKindleの中からチョイス。結構おもしろかったです。著者は私よりも若いみたい。これから世の中はドラスティックに変わるでしょう。クラウドファンディングやクラウドソーシングが普及すれば、本当にあっという間に常識が覆りそうです。Google Glassのようなウェアラブルコンピュータがスマホのように普及するのもそう遠くないはずです。「地図を捨ててコンパスを頼りに進め」というのはその通りだと思いますね。価値観においても豊かさの指標や働く目的は、経済的な富ではなく貢献欲求や自己実現欲求を満たすことに重きが置かれるようになっていくと思います。知識や知恵といった外部化できる「知性」ではなく、「倫理の外部化」を解決するような人格を持つ「Good natured person」が求められることになるでしょう。生きる力は、やはり哲学にあります。問題解決や過去分析ではなく、機会発見や柔軟適応といった問題を定義することが重要です。学生さんには昭和的な常識ではなく、これからの社会を見据えた能力を身につけてもらいたいと強く思いますね。

自分のアタマで考えよう―「知識」にだまされない「思考」の技術

ちきりん
『自分のアタマで考えよう―「知識」にだまされない「思考」の技術』
ダイヤモンド社
2012年7月1日(電子版)
20131212 引き続きiBooksで購読。ちきりんさんの本は2冊目。読みやすそうなのでチョイス。思考の整理術が紹介されています。最近、忙しいと思い込んでいるせいか、まったく頭の整理がつかなくて、ヒドく効率の悪い生活を送っています(整理がついていないから忙しいと感じているだけ)。効率よく成果に結びつけるには分析は不可欠。分析する際の要素分解と組合せの検討は、不可避な作業ですよね。ここが甘いとあとでしっぺ返しを食らうことになる。まさに、今の私がそういう状態。検討するほどの心の余裕がないのが失敗の元凶です。自他、時系列の縦横の比較を忘れて、わからないと唸っている自分を省みてしまいます。急がば回れ、きちんと現況把握には努めないと。階段グラフは参考になりました。使いこなしたい願望はあれど、やはり心の余裕度が邪魔しそう…。あと、本書の最初の方にあるのですが、確かに知識は思考の邪魔をします。なまじ知識があることから、思考停止に陥ることは多いです。

採用基準−地頭より論理的思考力より大切なもの

伊賀泰代
『採用基準−地頭より論理的思考力より大切なもの』
ダイヤモンド社
2013年1月28日(電子版)
20131125 相変わらず余裕がない日々が続いています。前回触れたのですが、早速iBooksで購入。基本的にKindleと変わらないですね(起動が遅いとか)。ただ、iBooksだとMBAなどと同期してくれているのでよいかも。読み捨てる本は電子版で十分そうです。さて、仕事にあっぷあっぷな日々を過ごすと同時に、自分の足らなさを痛感する今日この頃、本書はかなりヒントとなり得る内容が多かったように思います。書名こそ『採用基準』ですが、中身はリーダーシップ論で、典型的な日本人思考(極度に衝突を避ける性格)な私には極めて重要な示唆を与えてくれたように思います。日々の生活、仕事などでいつもどこかに感じている違和感は、ここにあるような気がします。「どうすればいいのか、みんなわかっているが、誰も何もやろうとしないために、解決できないまま放置されている問題」。コレです。「それを責務として割り当てられた役目の人の仕事」という思考。ひとつ壁を乗り越える必要がありそうです。

ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた ―そしたら意外に役立った

堀江貴文
『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた ―そしたら意外に役立った』
角川書店
2013年9月30日(電子版)
IMG_2617 余裕がないときには、Kindle。OSがMavericksになってiBooksがMBA上でも読めるようになったので、ちょっと試してみたい今日この頃。さて、時間的余裕がない日々を送っているので、簡単に読めそうな堀江君の本をチョイス。私も収監されたら、ゆっくり本読んで文章でも書いていたいです。という冗談はさておき、ホリエモンは基本的に嫌いな方ではないんですよ、私。まあ、ちょっとと思うところもありますけどね。本書は、タイトルの通り、堀江氏が獄中で読んで、薦めたい本が紹介されている、という本です。内容はさておき、副題の「そしたら意外に役立った」ですが、読書に限らず、大抵の学習は絶対役立つということは言えないけど、やっていると意外と役立つものです。読書なんて(◯◯なんて)何の役に立つのか、と言っている人には一生わからないとは思いますが。秋になりました。本を読みましょう。

伸びる30代は、20代の頃より叱られる

千田琢哉
『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』
きこ書房
2013年8月31日(電子版)
IMG_2297 典型的な自己啓発本です。書籍は2010年9月発行のものらしいです。全7章、伸びる30代と沈む30代の特徴を70ほど取り上げて、端的に書かれてあります。共感するところ、自分の感覚とは少し距離があるところ(解釈によっては)とありますが9割方は全くその通りだと思います。世の中、最終的には能力ではなく性格です。当事者意識と感謝の気持ちをもって、事にあたっていれば必ず道は拓かれています。付け届けをしないと仕事が与えられないなんて、実力がない証拠であり、組織が腐敗している証拠(先はない)。口が堅いというのは信用という意味において最重要事項であり、いつも愚痴っているのは信頼されない人の特徴でもある。ホント、口は災いのもとです。20代までは先天的な能力がモノを言うが、30代からは後天的な努力の差が一気に顕在化するというのは、ああ、そうだなぁと思いました。あと「人格なき有能者は犯罪者である。能力なき人格者は卑怯者である。人格と能力は二つではじめて一つのものなのだ」と。

最新版 大学院留学のすべて 入学後絶対後悔しないための10のステップ

佐藤庸善 著、大学院留学コンサルティング編
『最新版 大学院留学のすべて 入学後絶対後悔しないための10のステップ』
明日香出版社
2011年4月23日
IMG_2156 海外留学というのはいつになっても夢ですよね〜。とは言え、海外留学を考えている学生を対応するにも全く知識もないので、ちょっと知識をつけておこうと夢見がちな気持ちで読んでみました。本書はかなり現実的かつ丁寧に300頁という内容からは、かなり内容の詰まったものだと思います。まず最初に手に取る本としてよいのではないかと思いました。しかし、日本の大学院受験とはかなりシステムが違うのですね。あと、大学院の役割や制度についても知れて、かなり有益でした。恥ずかしながらIELTSやGMAT、GREといったテストを初めて知りました。ちょっと気になったので学部時代の成績を引っ張り出してGPAを計算してみたりしました(3.4でした)。それにしても自分の場合、大学院云々の前に博士号をなぁ…

未来の働き方を考えよう

ちきりん
『未来の働き方を考えよう』
文藝春秋
2013年7月20日(電子版)
IMG_2153 言わずと知れたちきりんさん(@InsideCHIKIRIN)の著書。移動の多い9月にKindleで読もうと落としていました。本質を突いた評論は素直に面白いです(フォローしてないけど)。副題の「人生は二回、生きられる」というのは一生一つの仕事を続ける限界についてなのですが、これから寿命が長くなり、年金受給も遅くなることを考えれば、これまでのワークスタイルでは生き辛いだろうというのは容易に想像できます。過去に築いた人的資産の質と量ではなく、何歳になっても新たな人的関係を構築していく能力が大事というのは、持たない生き方を指向する私にとっては激しく共感するところです。中大の竹内先生(@kentakeuchi2003)の5つのキャリアシナリオは職業選択の際、とても重要だと思いました。これはゼミ生なんかには話してあげたいと思います。市場価値を意識することが肝要ですね。

会計リテラシーが仕事も人生も変える!

久保憂希也
『会計リテラシーが仕事も人生も変える!』
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2012年9月15日
IMG_1438 一般向けの会計本を1冊。個人的には、とてもわかりやすい本だったという印象。タイトルの“会計リテラシー”は、あとがきのところに“会計感覚”とあるのですが、一般にわかりにくいとされる会計を、直観的にわかりやすい例えで解説されており、まさに感覚を掴むことに重点が置かれています。外部での一般向け講演会なんかで、本書のネタを少し借りようかとも考えてしまいます。高校生向けの模擬授業にも使えるかも。“会計”というものを掴みどころがわからない代物だと感じていらっしゃる方にお勧めです。「会計をマスターする方法は何ですか?」という質問は、自転車に乗れる人に「どうやったら自転車に乗れるようになるんですか?」と聞いているのと同じという表現は、なるほどです。

さっさと不況を終わらせろ

ポール・クルーグマン
『さっさと不況を終わらせろ』
早川書房
2012年8月25日(電子版)
IMG_1364 久々のKindle本。クルーグマンの本は実は初めて(HBRの論文を読んだことはありますが)。スティグリッツの本は好んで読むので、感覚的にはその延長線上。内容は単純明快で、ケインズ的な財政出動の推進、金融緩和についての流動性の罠に嵌まっている現状分析、規制緩和批判(あと共和党批判)と、今の経済の仕組みのマズいところを大変わかりやすく説明しています。皮肉っぽい書き方が多いので、田中先生の時価会計(国際会計基準)批判を読んでいるようです。読みやすさとその言い回しも似ています。結局、行き着く先は“政治”なんですよね。どこぞのパワーバランスで政策(制度)というのは決まっているということ。富めるものがますます富んでいくという構造、欲望の歯止めが利かない仕組みに誰がどういう意図でしてしまったのか…。経済学を勉強したのは、12年以上前で、今では記憶から消えてしまっているのですが、経済学の面白さが伝わりますね。経済学部生には、読んでもらいたい1冊です。
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