PHP新書

何もしないほうが得な日本

太田肇
『何もしないほうが得な日本 社会に広がる「消極的利己主義」の構造』
PHP研究所
2022年11月4日
20230422 移動ばかりしてるくせに読んでない、、スマホ内で積読状態の太田先生の本を読み進めようと思い手に取りました。本書に書いてある日本人の特徴を絵に描いたような自分。私の場合、とにかく「目立ちたくない」というのがあります。あと、よくあるパターンは、空気を支配する力が強い人がいるやつ。こんなこと思う人はいないよね、という前提から入られると、もう何も言えません。あとは、目立たず、淡々とやり過ごすだけ。どんどん状況が悪化しているのを理解しつつ。本書では、全体の利益と個の利益が調和することを暗黙の前提にしていると説明されていました。そして、世の中の改革と呼ばれる類のものの本末転倒感もすごく気になっています。この空気感でみんなが合理的な選択をするので、本来の目的から外れたところに行き着くやつ。入試対策としての「主体的」活動という、主体的活動の対極にあるような活動や、本気でやろうとしている人はごく一部で圧倒的多数の「総論賛成、各論反対」派に足を引っ張られ、骨抜きに終わるパターンが多過ぎます。世界最低水準のワークエンゲージメントと帰属意識が物語ってるし、「何もしないほうが得」という意識は本当に根深いものがあります。本当に、みんな見せかけ過ぎて何を考えているのか、わからないし、大きな欠点がない平凡なものが評価されがちです。「新人のころは輝いていた目が、1年も経つと曇っていく」し、「能ある鷹は爪を隠す」という処世術を身につけるのは仕方がないことです。それが合理的なのですから。とは言え、「するほうが得」な社会にするためには、意識が変わるちょっとした仕掛けでよいはずなので、そんな前向きな社会になる日がくることを祈念して、今回は終了です。

自由と成長の経済学

柿埜真吾
『自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠』
PHP研究所
2021年7月28日
20220619 ここのところ、ちょっとした移動が多かったので読めました。『人新世の「資本論」』の批判本です。『人新世〜』が競争と成長の社会に人類の幸福があるのかという批判とすれば、本書は『一九八四年』のような社会に人類の幸福はあるのかと批判している感じでした。ノスタルジーに浸るのはよいのだけど、明らかに世界は進歩していることを忘れてはならないと思わされました。圧倒的に豊かになり便利になっている暮らしを以前の水準に戻すのは嫌ですね。目的を共有することもなく、お互いに知り合うことさえなく全人類の協力を実現できる方法としての資本主義は、やはりすごいシステムだと感心しました。資本主義を支えている会計システム(複式簿記)も然り。全体主義が苦手な私は、基本的人権が保障された自由な社会で過ごしたいです。多様性こそ社会成長の源泉だと思います。一方的な力による現状変更が許されない社会になりますように。

同調圧力の正体

太田肇
『同調圧力の正体』
PHP研究所
2021年6月29日
20220329 同調圧力の正体とされる「閉鎖性」「同質性」「個人の未分化」は、まさに田舎だな、日本社会だな、いじめの構造に似ているな、と思いました。建前と本音のダブルスタンダードの中で、外面と内面を使い分け、空気を読んで和を乱さないよう周囲に同調する。私自身もそうやって社会生活を過ごしていますし、もっとしっかり自己主張をと言われても、そう簡単なものではありません。ここは日本なのです。コロナ禍で日本社会の特異性が炙り出されたように思います。同質性を崩すためには「異端者」を入れることが有効であり、異端者の力が同調圧力を跳ね返すための「閾値」を超えると空気が一変すると述べられていました。若者を中心に多様性への理解は進んでいるので、多くの集団で同調圧力(違和感)を吹き飛ばせるだけの異端者が増えるといいなぁと思います。ただ、その新しい風でさえ、新たな同調圧力となるのが日本だったりするんですよね。

自由のジレンマを解く

松尾匠
『自由のジレンマを解く』
PHP研究所
2016年3月10日(電子版)
20160625 「グローバル時代に守るべき価値観とは何か」という副題の本を、英国がEU離脱の国民投票を決めた昨日に読み終えました。読み応えがあって、なかなか面白かったです。前半は、固定的人間関係におけるシステムと流動的人間関係におけるシステムとの比較で、考え方や必要となるもの、振る舞い等が全く異なるという話で、後半からは、リベラル派とコミュニタリアンの矛盾を題材にした話を皮切りに「自由」について考える内容(特にマルクスを引き合いに出されています)になっています。自分自身の思想・信念の再確認という意味で、大変意味のある読書でした。ブックマークも多く、書きたいことは多くあるのですが多過ぎるので省略するとして、この時代に生きる我々にとって示唆に富む内容だと思います。話は少し変わりますが、不寛容社会と言われている昨今、多数派の思想や感情による抑圧がいかに恐ろしいかというのは、時代に学ぶべきでしょうね。

なぜ疑似科学が社会を動かすのか

石川幹人
『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』
PHP研究所
2016年3月3日(電子版)
20160520 同じ流れでiBooksからの1冊。世の中、実しやかに囁かれていることが全く真実とかけ離れているということが多過ぎます。本書に「根も葉もないことはふつう誰も信じない」の前提の方が間違っていて、根も葉もなくとも信じたいことがよくあるというのは言い得て妙です。論理的な説明よりも、感情に訴える物語のほうが人々を操作しやすいのは、まさにその通り。科学は反証可能性がないと成り立たないのは言うまでもないのですが、なぜ疑似科学がここまで世の中に影響を与えているのでしょう。論理的思考が鍛えられていると、疑似科学の類に騙されずに済むかもしれないのですが、なかなか人間というのはそこが苦手なようです。本書では、疑似科学の例を交えて、科学とは何か、疑似科学を信じてしまうのはなぜかについて書かれてあります。「それも神の思し召し」と万能理論様々では、騙されてしまいます。

自分を責めずにはいられない人

片田珠美
『自分を責めずにはいられない人』
PHP研究所
2015年11月25日(電子版)
20160422 電子書籍でオススメから選択しているため、同じ著者が続く傾向にあるようです。さて、人間生きていれば、落ち込むこともありますが、日々「自分はダメだ」と思っていては人生楽しめません。また、そんな罪悪感を掻き立てることで人を支配しようとする人も多くいます。そんな罪悪感は、抑え込もうとしてもどこかで表面化するので、受け入れることが大事で、無視したり排除したりするのではなく、さらに罪悪感に限らず、すべての感情を自身についての重要な情報を与えてくれるものとして捉えて、対応しようというのが本書の内容だったように思います。こうでなければならないといった気持ちのある人は、要注意です。割り切りは大事です。

他人を攻撃せずにはいられない人

片田珠美
『他人を攻撃せずにはいられない人』
PHP研究所
2013年12月2日
IMG_9642 久々に本を手に取りました。学会シーズンに入って、移動が多いので売店でふと購入。社会生活を送る以上、必ず他人との関わりは避けられません。攻撃欲・支配欲の強い人は確かにいます。好感を与える仮面の下に破壊衝動を隠して、そっと忍び寄ってくる、うわべは優しくて善良そうなのに相手の弱点を繰り返し指摘して傷つけるような人です。自信がなく、自責の念が強い人は、操られてしまいがちです。SATCの言葉らしいのですが、フレネミー(フレンド+エネミー)というのは言い得て妙ですね。本書のスタンスは、そういう人は、基本的に変わらないので自分が変わるしかない(対策をする)というものです。読んでいて思ったのは、要はヤクザですよね。真の意図は隠しながら、心理的負担を与えながら相手を追い込んでいく。気を付けたいものです。こういうのを読んでいると世の中世知辛いなぁと思ってしまいます。

気にしない技術

香山リカ
『気にしない技術』
PHP研究所
2011年11月1日
IMG_6541 久々に読みましたよ、香山さん。昔から結構読むことは多いんですよね。エンタメ系でさらーっと読めるので。まあ胡散臭いですが。こういう極端な例示で相手を納得させようとする論法は、ツッコミどころ満載ではありますが、やはり読み手としては面白く読めるものです。結局、否定している対象に対してと同じパターンで逆の内容を返しているだけなのですが…。ワードショーを鵜呑みにするような方、思い込みの激しい方なんかは嵌ってしまうのかな。勘違いはしない方がいいです。物事は客観的に判断しましょう。さて、「気にしない」ことは結構大切です。ちょっと前に鈍感力なんてものがありましたが、まさにそれ。ストレスは溜め込まないことです。はい。

人生が開ける禅の言葉

高田明和
『人生が開ける禅の言葉』
PHP研究所
2008年12月29日
DSC05104 本書は、身近な悩みをもとに、その対処を示されていて、とても読みやすい内容でした。苦渋に満ちた世の中で、自分を見失わないためにも悟りを得たいものです。「実力がつかないうちに人を救おうなどとすると、その争いに巻き込まれ、自分も一緒に沈んでしまう」、「体を動かしている最中に悩むことはできない」など、とても頷けました。“自分に一体何ができるか”なんて考えてしまうこともありますが、ものごとを客観的に見て判断したり、感情にとらわれずに善悪を判断できないうちは、人を救うことなどできず、かえってその人を不幸にするだけでなく、自分も不幸になるのは確かにその通りです。また、ちょっと時間があって一人で家にいると、いろいろ考えてぐるぐるしてしまうことはよくありますが、得てしていい方向にはいきません。体を動かすことで、そういう悪い流れを絶つのは良い方法だと思います。

「説明責任」とは何か メディア戦略の観点から考える

井之上喬
『「説明責任」とは何か メディア戦略の観点から考える』
PHP研究所
2009年7月31日
20090723 説明責任(アカウンタビリティ)と言えば、その原点は会計です。ということで、タイトルがアンテナに引っ掛かり、購入してみました。ただ、本書は説明責任をPR(パブリック・リレーション)の観点から論じることを主眼としています。世間に言われる「説明責任」を解剖する部分や実例は、面白く読めたのですが、PRの観点からの部分は、あまりピンときませんでした。共感したのは、自己修正がきかない日本の社会は、本当の意味で責任を取りづらい社会だというところです。責任を追及するとき、相手の首をとることが目的となるのは、メディアも含め反省の余地があります。

読まない力

養老孟司
『読まない力』
PHP研究所
2009年3月2日
20090406 雑誌『Voice』の時評73個を収録した新書です。世間の諸相を養老さんの一歩引いた目で語られると“そうかもな”と思わされます。こういう本を読むと、日頃いかに情報に振り回されているかを省みることができます。でも、あまりに慣れていて、なかなか矯正できないのが残念なところ。勝手読み(自分の都合のいいようにと勝手に決めてしまう)や希望的観測ばかりしてしまう自分には、ホント反省です。最近、地に足が着いていないので、自分をしっかり持たないとなぁとばかり考えています。

1分で大切なことを伝える技術

齋藤孝
『1分で大切なことを伝える技術』
PHP研究所
2009年1月30日
20090402 “簡潔にまとめて話す”のは元来苦手です。話しているうちにわけがわからなくなることもありますし、あがってしまって言おうとしたことがうまく出てこないこと、聞かれたことに端的に答えていないことまである始末です。授業は、気持ちに余裕があるので比較的いいんですけど、ちょっとでも萎縮してしまう環境になるともうダメです。場慣れしてないだけと言えばそうなんですが。本書は、各セクションに「1分で〜」というまとめがついていて、即使用可能な提案が多く載っています。気を引かせるのも大切ですが、自分の話としっかりつなげることが大切ですね。私は唐突に無関係かつオチのない話をし始める嫌いがあります。

ひらめきの導火線

茂木健一郎
『ひらめきの導火線』
PHP研究所
2008年9月2日
9.22 新書が続いてます。やっぱ、新書は読みやすくていいです。日本人には、創造性・個性・独創性がないということろから始まり、そんなことはないよ、でも課題はいっぱいあるね、という本でした。日本のサブカルチャーは世界的にも戦えるようになってきてますが、ハイカルチャーはめっきりという指摘は頷けました。知性の試される総合科学・学問というものが、“専門”という名の下に等閑にされていると思います。あと、人文科学での閉鎖的な雰囲気と日本語という壁は厚いですね。ボクも英語が苦手なのでなんとも言えませんが…。

世界をつくった八大聖人 人類の教師たちのメッセージ

一条真也
『世界をつくった八大聖人 人類の教師たちのメッセージ』
PHP研究所
2008年4月30日
7.12 数千年にわたり語り継がれている古典には、あらゆる物事の本質が実にうまく記されているものです。タイトルを見て、これはなにか得るものがありそうだと思い読んでみました。ちなみに本書の八大聖人とは、ブッダ、孔子、老子、ソクラテス、モーセ、イエス、ムハンマド、聖徳太子の8人で、まさに人類の教師と呼ぶに相応しい人たちです。内容は、この200〜300字のコメントでは言い表せない濃さです。そして、著者が大手冠婚葬祭会社の社長さんということろがなんとも意外。憲法17条で「和を以て貴しと為し〜」と説いた聖徳太子。儒教によって社会制度の調停を図り、仏教によって人心の内的平安を実現するという、心の部分を仏教が、社会の部分を儒教が、自然と人間の循環調停を神道が担う世界に二つとない素晴らしい制度を作ったもんだというのが私なりの本書の要約です。この大いなる和の国(大和の国)に生まれてよかったと思います。

女性の品格

坂東眞理子
『女性の品格』
PHP研究所
2006年10月3日
4.9 「〜の品格」という本が多く出版されています。本書は、“国家の〜”の後ではありますが、話題となった品格本ですよね。女性ではないですけど、人としての心構えというか、今後、品格ある人間として振舞うために喝を入れてもらおうと読んでみました。今、目次を見返しただけで、いかに自分が貧相な品格であるかがわかってしまい反省してしまいます。特に、マナー、言葉遣いについては品格の欠片もありません。正義感、責任感、倫理観、勇気、誠実、友情、忍耐力、持続力、節制心、判断力、決断力、優しさ、思いやり。品格のある人間になるにはまだほど遠いようです。

小さな会社の復活経営学

津田倫男
『小さな会社の復活経営学』
PHP研究所
2004年3月31日
3.31 書名の通り、中小企業の経営に関する本です。なんかすごく読み易かったような気がします。スラスラ〜っと。中小企業に限らず、大企業にもそのまま当てはまる内容だと思います。学ぶ部分は多いと思いますが、これを実際に実践するとなるとかなり大変でしょうね。言うは易しです。でもここで問題になっているような状況に実際なっているとすると、雲行きは怪しいでしょうね。会社に重要なものは、やっぱり基本のヒト・モノ・カネ。これをうまく使えれば何の問題もないですね。

中国・台湾・香港

中嶋嶺雄
『中国・台湾・香港』
PHP研究所
1999年11月4日
3.22 久々に中国関係の新書を読みました。やはり、中国関係の本は東京外大の中国語科卒の人が多いですねぇ。この本は、かなり中国に批判的な内容となっていると思います。5年半前の本なので少し内容は古いですが、執筆時の情勢や将来の観測が実際どのように推移して今日に至っているかという観点で読むと面白いと思います。中国については人それぞれ思うところがあると思いますが、大国だけに一筋縄にはいかない問題ですよね。世界にとってもアジアにとっても日本にとっても重要性は高まるばかりです。

コンプレックスに勝つ人、負ける人

鷲田小彌太
『コンプレックスに勝つ人、負ける人』
PHP研究所
2005年1月5日
2.3 コンプレックスのない人はいないです。でも、コンプレックスを自分でどうやって処理していくかが大切ですよね。卑屈になったり、周囲を恨んでもしょうがないです。プラス思考でいきましょう。先天的なもの(容姿、家柄、IQなど)に対するコンプレックスというのは、自分の考え方を変えるしかないですけど、後天的なものに関しては大抵努力不足なだけだと思います。ちょっと努力すれば克服できるものは結構多いです。私の英語コンプレックスもその一つ。

頭がいい人、悪い人の話し方

樋口裕一
『頭がいい人、悪い人の話し方』
PHP研究所
2004年7月2日
1.9 読みやすい本です。勉強はできなくても頭の悪い人にはなりたくないですよね。読みながら、いるいるこういう人、自分もそうかもしれないなんて思いながら普段の会話を省みてみるとよいのでしょう。少なからず、人間みんな自分勝手なもんですから、よっぽど人間ができているか(生き仏?)、関係が薄いということ以外に不愉快な思いをさせない人はいないでしょう。今、気付きましたがblog形式にして、ほとんど岩波だったんですね。初PHP。
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