2015年08月19日

ジェイコブ・ソール著、村井章子訳
『帳簿の世界史』
文藝春秋
2015年4月10日
IMG_8712 著者に敬意を表したい素晴らしい本でした。3月に読んだ『バランスシートで読みとく世界経済史』に続いて、会計に関する良書が続きますね。本書は、会計責任を果たすことの難しさを700年の財務会計の歴史を紐解きながら明らかにしていきます。一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計である、繁栄する社会では、よい会計慣行や商業文化が根付いていただけでなく、それを支える健全な倫理観や文化の枠組みが存在し、会計を無視したり操作したり怠ったりしがちな人間の性癖をうまく抑えていたということが非常に単純明快に語られています。度重なる金融危機に脅かされる現代は、会計の責任の歴史を振り返るのにふさわしい時期ではないかという著者の問いにも頷けます。会計は職業倫理の基本要素の一つです。「共和国に必要なのは、教育水準が高く、己を律することができ、高い職業倫理を備えた証人である、そうした証人は事業経営においても政府においても役に立つ」というパチョーリの持論に同意するとともに、会計の有用性は、責任を問う手段としての脅威であることも然りです。会計は「すばらしく輝かしく、途方もなく大変で、圧倒的な力を持ち、しかし実行不能」というのも真であり、「金融システムが不透明なのは、けっして偶然ではなく、そもそもそうなるようにできているのではないか」というのも間違いではないでしょう。

(16:14)

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