唐沢昌敬
『複雑性の科学の原理 企業や社会を劇的に変える方法論』
慶應義塾大学出版会
2009年6月30日
20090827 とても示唆に富んだ内容でした。アノミーな感がある現代を、複雑性の観点から説得力のある説明がされている気がします。カオスから好ましい秩序を構築していくには、東洋が蓄積してきた人知を超えた気や理という上位の法則を意識した考え方に利があると思います。そして、西洋的な科学万能の合理主義の限界も示唆しているのかと。実験に基づく法則の発見、モデルを組んで将来を予測するような統計的分析は、物事の一部分を見ているに過ぎないわけで、自然科学においては有用なこの技法も、社会なり自然全体を対象とすると自ずと限界があるのは直感として誰もが思うでしょう。原理とメカニズムの解明を、上位の法則の存在を意識して進めていくことは重要と言えます。実態からかけ離れた金融経済の膨張は、上位の法則に反する典型的な行動と指摘されています。仏教・神道・道教・儒教を基礎とした基本的価値の体系の存在が、日本の優位性であると思います。