藤井聡
『なぜ正直者は得をするのか 「損」と「得」のジレンマ』
幻冬舎
2009年7月30日
20090811 本書のテーマは、利己主義者は最終的に損をし、非利己主義者は最終的に得をするというものです。正直者はバカをみないという道徳的なテーマを、心理学、進化論、経済学や倫理学をもとに実証されています。中身は、新古典派(ミクロ経済学)における合理的選択理論の批判であり、規制緩和、民営化に対する批判です。合理的選択理論なんてあり得ない前提であることは、誰にでも明白ですが(昨今の暴利を貪って経済危機を招いた証券マンには当て嵌まりますが)、教科書的にはこれが基本です。後者については、極度な利己主義に陥らないための規制をなくし、利己主義が跋扈した。公に資するための職務である公務員、もしくは公務を利己的な利益を追うシステムに改造し、必要な無駄を排除し、公共の利益を社会から削ぐ結果になった、と。昨今の経済至上主義は、一部の裏切り者(利己主義者)に歩調を合わせた“腐ったリンゴ効果”によって社会が退廃していく様を見ているようでした。でも、やはり正直者が勝つのが自然の摂理です。