2022年05月

まなさじの地獄

見田宗介
『まなざしの地獄 尽きなく生きることの社会学』
河出書房新社
2017年5月10日(電子版)
20220507 久々に普通の読書をしたような気がします。本書で扱っている内容を一言で表現している言い得て妙なタイトルです。また、非常に巧妙な文章で、唸らせられました。永山則夫という連続殺人犯を媒介にして日本社会を浮き彫りにしていく様は、社会学ってすごいなと思わされるものでした。まなざしの地獄に対比されている「透明な存在」としての少年Aについての解説も興味深かったです。平均値と極限値の間の相互媒介的な関係という分析の視点で、例外においてこそ、かえって一般性が見出しうるというのは勉強になりました。金の卵と呼ばれ、集団就職で東京に降り立った地方青少年たちのことをあまりネガティブに捉えたことがなかったのですが、本書を読むと現実はなかなかに厳しいものだと認識させられました。最近は軽い読み物しかしなくなったので(本書も分量が少ないために選択した)、重厚感のある(精神的に)読書をして世界に対する認識を深めたいですね。

会計と経営の七〇〇年史

田中靖浩
『会計と経営の七〇〇年史――五つの発明による興奮と狂乱』
筑摩書房
2022年4月15日
20220501 会計の世界史は500年史でしたが、+200年されている最新刊です。イタリアの記録大好き文化から発展した複式簿記、カトリックから独立を果たしたプロテスタント国オランダで生まれた株式会社と証券取引所、情報公開やパブリックの意識が芽生えたフランス、イギリスでの蒸気機関の発明そして巨額初期投資と配当から生まれた減価償却、利益計算、経営分析、アメリカでの原価計算の発達と管理会計、投資家保護のためのディスクロージャーといった内容を講談調まじりで読みやすくまとめられた本です。会計が苦手な方は、こういう話から入るのも悪くないです。本書に会計は美術と同じで、実技から入るから挫折する(簿記のことです)とありました。見る方から入るのは確かにいいと思います。実際、会計教育は簿記から入るより財務諸表を見る方から入るほうがベターだと考えています。歴史から学ぶというのは現在の制度を理解するには無味乾燥な教科書の解説を読むより、面白くかつ説得力があるのでオススメですね。
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