2015年09月

放哉と山頭火

渡辺利夫
『放哉と山頭火 死を生きる』
筑摩書房
2015年8月25日
IMG_9155 ふと新聞の書評で見かけて購入。思いのほか面白く読みました。俳人ならぬ廃人と言われる自由律俳句の巨星である放哉と山頭火の酒浸りのダメダメ度と昇華された自由律俳句が人間の深い業を儚くも美しく表現していることに心を揺さぶられずにはいられない、といった感じでした。こういった人間に住まう暗鬱な心を扱う文学に少し興味を持った次第です。こんな破滅的な人生はまっぴらだとは思いながらも、どこか羨ましく感じるところがまた魅力なのでしょう。辞世の句がとてもいいです。「春の山のうしろから烟が出だした(放哉)」「もりもりもりあがる雲へ歩む(山頭火)」

だから日本はズレている

古市憲寿
『だから日本はズレている』
新潮社
2014年10月17日(電子版)
IMG_9062 古市君の本を手に取るのは初めてだと思います(たぶん)。本というよりブログを読む感覚(内容も含め)でした。雑誌記事の寄せ集めのようなので、そんなもんなのでしょう。豊かで平和な日本では、結局はみんなそこそこ幸せに生きていることが、先送りというこの国を蝕む根底にあるのでしょう“おじさん”も“若者”も総じて他人任せです。監視社会の有用性については、個人的な嫌悪感さえ克服すれば、それなりに世の中がスマートになるのではないかと思います。人間には無理かもしれませんが。イニシエーション・セレモニーなる入社式、“社会人”なる謎の存在に対して、脱サラ・フリーター・フリーランスという自由な生き方は、自由に生活したいというみんなの憧れによる普遍的なものなのでしょう。コンサマトリーな生き方が進んでいくかはわかりませんが、静かな革命が世の中を変えていくのだと思います。本を読んでいて、一極集中もありだなと思えてくるところがまた、平和ボケなのかもしれません。最後に、「学問」が人の上に人を造るというのは、福沢諭吉の真意であり、間違っていないと思います。
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