2009年02月

学問の下流化

竹内洋
『学問の下流化』
中央公論新社
2008年10月10日
2.26 著者の読書ノートといった感じの本です(コラムとして多くの読書日記も載っています)。明治以降の学問を巡る様々な人間模様が収められています。あと、日本人の平等感を「不幸の等分化」や「犠牲の平等」であるとか、日本を支えてきたのは庶民のリスペクタビリティ(立派であることの誇り)だとか、いろいろな人が語ったいろいろなことが紹介されていて飽きませんでした。面白かったのは、「秀才」とは、「自分のやっている事をいつも意義があることだと考えて、その虚しさなどということは思いも及ばない人間のこと」という解釈や「科学者に代表される専門家」について、「自分の専門以外の広大な領域について、無知者としてふるまうのではなく、知者のようにふるまう。かくて専門家こそ、たちの悪い大衆だ」という指摘。旧制中学校教師数の2倍に膨れ上がってる大学教員数が「高いとおもっているが低いのは、今の大学教授の教養」と言わせているのか。タイトルも含め、耳の痛い内容が多かったです。

「信用偏差値」あなたを格付けする

岩田昭男
『「信用偏差値」あなたを格付けする』
文藝春秋
2008年11月20日
2.18 クレジットレポートには、前々から興味があったので実際どんなもんかと手にとってみました。海の向こうでは、クレジットスコアがローンの金利や就職まで左右するというのには驚きました。カード社会なだけあって、信用情報の使用もかなり進んでいるようです。ただ、そこに生じる信用格差社会には、多くの問題が存在するのも確かで、これから同様の仕組みを構築しようとしている日本においても実際に起きてくる可能性が高いと言えます。ちょっとした油断(滞納)が、後々大きなハンデになることを肝に銘じて管理しないといけませんね。最後に、自分のクレジットレポートの取り寄せ方が書いてあるのですが、ちょっと見てみたい。

14歳からの社会学

宮台信司
『14歳からの社会学』
世界文化社
2008年11月25日
2.12 最近ぐるぐるしてます。哲学の次は、社会学です。宮台さんの本は始めて読みました。今の社会について考えるには、とても読みやすくていい本だと思います。最近、日本の民主主義が衆愚政治になってやいないかと強く感じます。“みんなで決めたことがいいルール”が当てはまらない気がしてなりません。社会を見渡せるエリートはいないものでしょうか。あと、「単純なものを好む君は、何かをかくされてしまう。」という言葉に、ちょっと考えさせられました。

子どものためのカント

ザロモ・フリートレンダー著/長倉誠一訳
『子どものためのカント』
未知谷
2008年4月25日
2.5 タイトル通り、子供向けに書かれた本なのですが、まず読みこなせない気がします。序文と第3章はかなり苦労しました。本書は、カントの哲学が遺憾無く語られているとのこと。とかく、道徳を説き、不道徳への批判が繰り返されています。小さいうちに、本書にあるような道徳をしっかり説かせておけば、確かに世の中も少しは良くなるかもしれません。ただ、その徹底ぶりは強烈です。会津日新館の「ならぬことはならぬものです」を連想しました。あまり、道徳的禁止を徹底すると思考停止に陥るような気も(哲学していれば、そんなことはないですけど)。しかし、道徳的視点から、明らかにおかしなことが当たり前になってしまっている世の中を再考させられました。それにしも哲学は難しいです。

プレゼンの上手な話し方

福田健
『プレゼンの上手な話し方』
ダイヤモンド社
2008年12月11日
2.2 10月に読んだ『プロフェッショナルプレゼン。』では、プレゼンは、「説得ではなく、理解してもらう場」と書いていましたが、本書では、「説得を最終目的とした、プロセス全体を指す」と定義しています。私は、前者に1票。だからと言って、本書の内容を否定しているわけではありません。非常に的確な内容でした。最後に「人の心をその気にさせ、やろうという気持ちにさせるための働きかけこそが、すぐれたプレゼンターの行う試み」という部分には、非常に共感を持ちました。兎にも角にも、プレゼンはコミュニケーション。そして、ライヴです。通り一遍等でジコチュウなプレゼンでは、聴衆の心が離れていくこと請け合いです。
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